地域団体商標の認証マークが発表されましたが、そもそも地域団体商標とはどのような制度なのでしょうか。(製茶業)

 地域団体商標制度は、地域の特産品等の商標を商標権で守る制度です。この制度により、「地域名+普通名称」の商標であっても有名である場合には、当該地域の一定の団体が、特許庁に商標登録出願すれば商標権が得られます。これまでに地域団体商標として登録された例として「草津温泉」、「松坂牛」、「博多人形」等があります。

「地域名+普通名称」の文字だけで構成される商標は本来、特許庁の審査をパスできません。「東京」、「名古屋」、「京都」等の地域名と「菓子」、「散髪」、「レンタカー」等の普通名称の文字の組み合わせは、誰もが自由に使える表現です。仮に地域名と普通名称の組み合わせに商標権が発生すると、他の事業者がこうした表示を使うことができなくなり、社会的な混乱が生じてしまいます。

 こうした混乱を防ぐため、地域名と普通名称を組み合わせた商標は、原則として審査に合格できないことになっています(商標法第3条)。一方で、誰もが使える商標であるがゆえに、有名地域と無関係の事業者が粗悪品に対して「地域名+普通名称」を使うこともできてしまいます。無関係の事業者の活動を放任すると、地域の特産品の信用が失われかねません。この弊害を解消するため、地域がまとまって申請すると商標権を付与する制度が2006年に創設されました。

地域おこしの効果も

 地域団体商標の権利者は、組合やNPO等の団体に限定されています。これらの団体が商標権を取得し、団体の構成員に使用を許可する仕組みです。また、地域の特産品に関連して個々人が互いに権利を主張しだすと地域内で収拾がつかなくなり、地域の特産品の拡販が困難になります。

 地域でまとまっていない場合や、地域特産品とは関係のない地域の団体が権利申請しても、認められません。地域が一致団結して初めて権利が得られる仕組みのため、地域の結束を図ったり、地域おこしによる経済活性化を促すうえでも、活用が期待されています。

 地域団体商標が示す特産品について、一般需要者に対して有名になっていることも権利取得の条件です。一般にノーブランドの商品は低価格で取引されるのに対し、有名な商標が付された商品は高価格で取引されるケースがよくあります。一般的な商標であっても、広く知られた後であれば、有名な商標はそれ自体に財産的価値が生じると解釈して、例外的に法律上保護されます。

 逆に有名でない場合、例えば商標の使用実績がなく需要者に広く知られていない段階では、特許庁に権利申請しても審査で不合格になります。特許庁で登録されて商標権が発生すると、地域団体商標であることを示す地域団体商標マークを用いることができます。このマークにより正式な地域団体商標であることがひと目でわかります。

掲載:『戦略経営者』2018年5月号