縁故採用に報奨金を払って優秀な人材確保に成功した取引先があります。興味があるので、メリットや導入する際の注意点などを教えてください。(卸売業)
日本では2025年までに600万人近くの労働力人口の減少が見込まれており、採用環境の厳しさは増していくことが予想されます。多くの経営者が採用の悩みを抱えているこの環境下で、社員からの紹介で採用をすすめる縁故採用にあらためて目を向ける企業が増えています。
実はこの縁故採用、米国では「リファラル(紹介、推薦)採用」と呼ばれ、非常に多くの企業が採用の主軸としています。日本でも、ビズリーチやメルカリ、エウレカ、カヤックなど成長中の有名企業が導入して成功をおさめています。なぜリファラル採用を導入する企業が増えているのでしょうか。それは、3つの大きなメリットがあるからです。
1つ目は、採用コストの大幅な削減です。リファラル採用は、求人サイトや人材紹介会社を通さないため、採用コストを大幅に削減できます。当社の顧客の中には、リファラル採用を主軸に据えた結果、採用コストが1/12になったケースもあります。
2つ目は、自社の文化にマッチした社員の採用ができることです。今までの採用方法と違い、会社のことを誰よりも知っている社員が、人柄まで深く知っている友人・知人を紹介してくれるため、自社の文化にぴったりの人材の採用が期待できます。結果として定着率の改善にもつながります。
3つ目は、自社の魅力の向上です。リファラル採用をきちんと進めていくと、社員が声をかけた友人・知人から「昇給ペースが見えないのが不安」「未経験だから、研修制度などがしっかりしていないと入社するのが怖い」などのリアルな声が集まってきます。もちろん意見は玉石混交ですが、なかには会社の改善につながるような有益な指摘も見つかります。それを一つ一つ改善していくことで、会社の魅力の向上が実現できるというわけです。
一方リファラル採用には、▽不採用による本人と紹介者の関係悪化▽同一職場での仕事による本人と紹介者の関係悪化▽紹介者退職時のモチベーション低下――など、社員の友人・知人を紹介してもらうがゆえの、人間関係に関するデメリットも存在します。リファラル採用を導入する場合、採用プロセスや入社後の配属などを慎重に設計する必要があるでしょう。また社員紹介の報奨金制度を導入する企業もありますが、高額な報奨金を設定すると、報奨金欲しさに会社に合わない友人を紹介してしまう危険性があります。当社の手がけた事例では報奨金の多寡に関わらず成功している会社が多いので、最初はむしろ報奨金がないくらいのほうが、不平等感などを考えなくてよく、やりやすいかもしれません。
では、実際どのようにリファラル採用を導入していけばよいのでしょうか。中小・ベンチャー企業で導入する場合は、まずは会社へのロイヤルティーが高いメンバーを集めてプロジェクトチームを発足させます。いきなり紹介報奨金制度などをつくって全社員に告知しても、実績もツールもないなかで社員はなかなか動けません。まずはプロジェクトチームでリファラル採用の仕組みやツールを整備したうえで、全社に展開していくと成功確率がぐっと高まるでしょう。