廃棄物処理法の改正で電子マニフェストが一部義務化されたと聞きました。マニフェスト制度の概要と改正の中身について教えてください。(製造業)
マニフェストは正式名称を「産業廃棄物管理票」といい、7枚つづりの複写伝票を使用することで、委託した産業廃棄物の処理が適切に行われたことを把握するための伝票です。排出事業者から運搬業者に廃棄物を引き渡す際に、廃棄物の種類や、運搬業者、処理業者等の情報を記載して発行します。運搬・中間処理・最終処分それぞれの終了報告として伝票が返送されてくるため、排出事業者は自社控えと照会した後に、5年間保存します。また、1年分の発行実績を、管轄する都道府県(または政令市)に報告しなければなりません。
マニフェストは紙の複写伝票であるため、基本的に毎回手書きで作成します。返送されるマニフェストの内容を確認した後に、通し番号ごとにまとめてファイリングする必要もあります。こうした工程は煩雑でミスも起こりやすい業務ですが、ささいな記入漏れや間違いでも廃棄物処理法では記載義務違反や虚偽記載となり、罰則が定められています。この罰則は、電子マニフェスト一部義務化の改正と同時に6か月以下の懲役または50万円以下の罰金から、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に引き上げられています。
一方、国の管轄する情報処理センター(JWNET)に加入することで、インターネット上で一連の工程を電子化するシステムが利用できます。これが電子マニフェストで、排出事業者、運搬会社、中間処理会社それぞれが対応している場合に利用できます。
この電子マニフェストの利用が一部の事業者に義務化されるという改正法が交付されています。現時点で義務化対象は「特定の産業廃棄物を多量に排出する事業者」とされており、具体的な法整備はこれからですが、特別管理産業廃棄物(有害物質含有等の基準を超える産業廃棄物)を年間50トン以上排出する事業者を想定している地方自治体もあります。
電子化にはいくつかメリットがありますが、メインは業務効率化です。マニフェストの発行はあらかじめ設定しておいたひな型(パターン)を選び、日付や数量等を入力すれば、数クリックで完了します。素早く発行できるだけでなく、規定のひな型があることで入力ミスの防止効果もあります。終了報告の確認は一覧表を照会するだけで簡単にでき、さらには年1回の行政報告対象から除外される優遇措置もあります。
大きなメリットのある電子マニフェストですが、電子化というと、なんとなく難しそうというイメージが先行してしまっているのが実情ではないかと思います。しかし、実際の操作は紙マニフェストの情報をそのまま電子化するだけです。初期設定には多少の手間がかかりますが、一般的なITスキルがあれば十分です。実際に導入した企業で、電子から紙に戻ったという事例は、ほとんど見られません。苦手意識を取り払ってまずは始めてみることで、十分にメリットを感じられるシステムだと言えます。電子マニフェストの義務化対象は、今後段階的に拡大されることが予想されます。自社が義務化対象となっていなくても、早めに導入しておくことをお勧めします。