ナカノヤは「修理のできるリフォーム店」を掲げ、地元密着で住宅設備、リフォーム工事を請け負う。きめ細かいサービス、フォロー体制から訪問する職人を指名する顧客もいるという。「顧客を喜ばせるのが好き」と語る小林孝裕社長に税理士法人未来会計の鈴木茂光顧問税理士、佐藤恵介税理士を交え、営業戦略、財務戦略の一端を聞いた。
創意工夫で顧客を獲得し元請けへの転換果たす
──創業104年と聞いています。
小林孝裕社長
小林 もともとうちは大正2年に荒物屋として創業したんですよ。荒物屋というのは生活雑貨を販売するお店で、たわし、茶葉、炭、まき、練炭などを扱っていました。やがて燃料や燃料器具も販売するようになり、設置工事、水道工事に進出。今では一般家庭のリフォームや、地元小中学校、病院などに関わる事業もおこなっています。
当社のウェブサイトをご覧になるとリフォーム会社だと思われるかもしれませんが、リフォーム事業の売上高は全体の4~5割ぐらい。1時間程度で訪問できるエリアを対象に、お住まいの修理や工事も請け負っています。
──時代の流れにあわせて業態を変化させてきたと。
小林 社長に就任して以来目指してきたのは下請けから脱却して、より多くの利益を見込める「元請け」に転換を図ること。そのためには会社の名前を広め、対外的な信用を高めなければなりません。
15年ほど前、リフォーム事業を始めたころは展示会を開催しても来場されるお客さまは少なく、例えば洗面化粧台の見積書をお渡ししても受け取ってもらえなかった。そのとき、突き返されない見積書をつくりたいと思い、お客さまの大事にされている人や物の写真を表紙に添付するようにしました。お孫さんや飼っている犬の写真などです。どのメーカーの洗面化粧台でも機能はだいたい同じですから、性能をいくら訴えても響きません。最後の決め手は日ごろのコミュニケーションや社員の人間力だと思っています。
──確かにコミュニケーションを密にしないと大事にしていることはつかめません。
顧客にプレゼントしたうちわやハガキ
小林 私自身、いろいろなアイデアを考えてお客さまや社員を喜ばせるのが好きなんです。まずは売り上げを伸ばすより、お客さまからいただくお礼の手紙を増やすことを目標にしました。その一番簡単な方法は、こちらから手紙をお送りすること。リフォーム事業に進出した当時は、1年間で3000通のハガキや手紙を出しました。
お礼のハガキは今でもお送りしています。社員がお客さまのお宅を訪問すると飲み物やタバコなどをいただくことがありますが、そのときは必ず会社に報告させ、感動創造部の社員がパソコンでハガキを作成しています。
──顧客管理はどのように?
本社1階のショールーム
小林 パソコンに顧客管理システムが登録されていて、電話がかかると同時にお客さまのさまざまな情報が自動的に画面に表示されるようになっています。表示されるのは当社から購入されたガスコンロや給湯器の機種やこれまでの対応履歴、お送りしたハガキの種類など。あえて担当制は設けず、誰もが担当であるという意識を持って臨んでいます。会社が信用され、修理で訪問する職人が指名される機会が増えてきたのも、小さな工夫の積み重ねがあってこそ。
ちなみにリフォーム事業の顧客は95%がお客さまからのご紹介。折り込みチラシやポスティングなどは一度も行ったことがありません。路線バスに広告をラッピングしてもらったり、ラジオCMを流したりしているのは集客のためではなく、社員の家族に喜んでもらうためです。こうした取り組みは黒字経営だからできたんでしょうね。
的確な決算予測から将来を見すえて投資
──税理士法人未来会計との関係を教えてください。
小林 先代社長のころ、親類の経営者から紹介されてお付き合いするようになったと聞いています。先代社長によると顧問契約を結んでから業績は上向き、所得も増えたそうです。今は鈴木先生、佐藤先生のきびしい指導のもと、役員報酬をあまり取らないようにしていますが。長年黒字経営を続けていて、私が会社を引き継いだときも圧倒的な黒字額を計上していました。松下幸之助の「ダム式経営」にならい、黒字の範囲内で事業を展開しています。
──20年以上『FX2』を利用されています。
小林 拠点は本社、吉川支店、さいたま支店の3カ所ありますが、伝票入力は本社1カ所で行っています。手形取引はなく現金取引がメインなので、入力作業はそれほど負担になっていないと思います。
──月次監査時、どんなことを話し合いますか。
小林 毎月末に未来会計の鈴木先生と佐藤先生に来社してもらい、緊密にコミュニケーションを取っています。『FX2』では2部門に分けて管理していますが、《変動損益計算書》上の売上高、限界利益などの数字をスプレッドシートに転記して業績を確認しています。
鈴木茂光顧問税理士
鈴木 経営計画を策定する『継続MASシステム』が提供される前から、小林社長は独自の方法で決算予測を行われていました。来月どうするかという話ではなく、10~20年先のナカノヤのために資金をいかに使うかという中長期的な視野で話し合うことが多いです。
小林 月次監査の日にちは2カ月先まで決めてあるんです。8月決算ですが、来期の決算数値もだいたい予測できています。
──黒字経営を続けている効果をどう感じていますか。
小林 公共事業を請け負う際の経営事項審査の評点等で、計り知れない効果があったと感じています。売上高と同じぐらいの剰余金を確保しておきたいと考えており、優良申告法人として越谷税務署から5回連続で表彰されています。
昨年の12月ですが、当社が代表企業として5社からなるグループをつくり、越谷市内の小中学校45校の空調設備の設置と、13年間の維持管理を請け負うことになりました。総額50億円のPFI事業です。当社の売り上げ規模の会社が50億円のプロジェクトをまとめるわけですから、一生分の仕事が来たと感じるぐらい大変でした。会社の歴史に金字塔を打ち立てられたのではと思っています。
佐藤恵介税理士
佐藤 地元の人々とのつながりを大切にされ、お客さまからの紹介で顧客を獲得しているのも、小林社長の経営方針が社員に浸透しているからだと思います。それがナカノヤさまの強みです。
──巷間(こうかん)、働き方改革が盛んに言われていますが。
小林 従来は全社員が7時半に会社に集合し、その後職人たちは現場に向かっていましたが、前日までにクラウド上に予定を登録しておけば、現場に直行できるよう改めたんです。直行したときは8時に現地や駅の写真を撮影して、データをメールで本社に送ってもらい出勤簿代わりにしています。
また、8時20分から朝礼をおこなっていて、指名された社員は簡単なスピーチをすることになっています。発表している様子を動画で撮影し本人に見せると「えー」という言葉が多かったり、自分のくせに気づくことができる。工事現場や集合住宅の全体リフォーム時に開かれる理事会などで、きちんと説明する能力を身につけるためのよい訓練になっています。
──女性プランナーが活躍されているそうですね。
小林 リフォームの設計、プランニングはすべて女性プランナーが担当しています。家の中の動線は女性の方が熟知しており、女性同士だとスムーズに打ち合わせができると思ったからです。提案する際は3Dパースや全体の工程表をもとに、きめ細かい説明を心がけています。
(さいたまセンター・神田洋平/本誌・小林淳一)
名称 | 株式会社ナカノヤ |
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創業 | 1913年9月 |
所在地 | 埼玉県越谷市大沢3-28-11 |
売上高 | 22億円 |
社員数 | 30名 |
URL | http://www.nakanoya.co.jp/ |
CONSULTANT´S EYE
税理士法人未来会計 代表税理士 鈴木茂光
埼玉県吉川市吉川1-19-1
TEL:048-983-6111
http://www.miraikaikei.jp/
ナカノヤの小林孝裕社長とは、10年以上にわたるお付き合いをしています。顧問税理士であった三浦庚午税理士から会計事務所を引き継ぎ、小林社長に毎月お会いするようになりました。社長のリーダーシップや顧客、取引先に対する細かい気配りに、毎回感心させられています。未来会計主催の研修会や懇親会、旅行などのイベントにも積極的に参加いただいています。
月次監査時の打ち合わせでは、当期の決算予測だけでなく、中期経営計画の話になることが多く、『継続MASシステム』を用いながら、進むべき方向性について話し合っています。決断力のある小林社長にとって、業績数値をタイムリーに把握できる『FX2』は、時流に乗りつつも大胆な発想や行動を起こす礎になっていると感じています。
小林社長のベースにあるのは、適正な納税をすることが会社を成長させるという考え方です。そのことが、目先の対策ではなく、将来に投資するという思い切った行動を可能にし、好循環を生んでいると捉えています。その結果、内部留保が厚く、自己資本率も高い強固な財務基盤を築かれています。また、越谷税務署からも継続して優良申告法人として表彰されています。
従業員の方々もお客さまの喜び、幸せを常に念頭に置かれており、「感動創造企業」を実現されています。これからもTKCシステムのいっそうの活用を提案し、ナカノヤさまの黒字経営をバックアップしていきたいと考えています。