平成28年度の第2次補正予算で100億円の予算がつけられた「サービス等生産性向上IT導入支援事業(通称・IT導入補助金)」とは、どんな制度でしょうか。詳しく教えてください。(小売店)
2015年9月、安倍内閣は14年度に491兆円だった名目国内総生産(GDP)を「2020年ごろに600兆円を達成する」という政策目標を打ち出しました。この目標を達成するためには年平均3.5%ほどの経済成長が必要で、それにはGDPの64%を占めるサービス産業の生産性向上がカギを握っています。
そうした背景のもと、平成28年度の第2次補正予算として措置されたのが「サービス等生産性向上IT導入支援事業」です。これは要するに、生産性の向上のためにITツール(ソフトウエア、サービス等)を導入しようとする中小企業などに対して、その導入費用の一部を補助する制度です(サービス産業以外も利用可能。ただし大企業の子会社等は対象外)。
導入費用の2/3を補助
「IT導入補助金」とも呼ばれるこの制度の補助率は、システム導入費用の3分の2以内(上限額100万円、下限額20万円)となっています。つまり1/3の費用で会計システムなどの新規導入が可能になるわけです。
補助対象となるのは、同事業の承認を受けたITツールの導入費用で、主に次の2つがあります。
①初期導入費用(ソフトウエア料金、立ち上げ支援料等)
②1年分のクラウドサービス等の利用料
パソコンの購入代金など、ハードウエアの導入にかかる費用は対象外となります。また、交付前に導入したソフトウエア等の費用についても補助の対象外です。
ちなみに、導入後1年以内に解約する場合は、補助金を返還する必要があるので注意が必要です。
ソフトウエア・サービスの要件
補助対象となるITツール(ソフトウエア・サービス)は、「フロント業務」「ミドル業務」「バックオフィス業務」の業務区分のうち、2つ以上をカバーしておくことが要件となります。
フロント業務とは「顧客と対面し、売り上げを作り出す業務」のこと。例えば、予約管理システムやホームページ、カード決済システムなどがこれに該当します。
つぎにミドル業務とは「原価・納期・在庫などを管理し、フロント業務を支える業務」のことで、顧客管理システム、勤怠管理システム、在庫管理システムなどがこれに当たります。そしてバックオフィス業務とは「会計や給与等を把握し、下支えとなる業務」のこと。会計システムや給与システムが当てはまります。
IT導入補助金の制度が目指しているのは、複数の機能をパッケージ化したサービスの導入支援を行うことにより、生産性の向上効果を最大限に引き出すことにあります。単体機能でのITツールの導入支援ではないという点に注意してください。
なお補助金の申請は、1社につき1回のみ。事務局から認定を受けた「IT導入支援事業者」から、ITツールの導入支援を受ける必要があります。TKC会計事務所の多くがIT導入支援事業者として名乗りを上げているので、TKCシステムで生産性を向上したいと考えている中小企業は一度相談してみてはどうでしょうか。