1月1日に改正育児介護休業法が施行されたと聞きました。育児や介護を抱える社員が増えており、対応に苦慮しています。今回の改正のポイントを教えてください。(調剤薬局)

 育児介護休業法には、育児や介護が必要になったときの休業や休暇、残業や深夜の労働などについて、「子育てや介護」と「仕事」を両立できるようサポートするためのルールが定められています。長期の休業に対する職場の理解が得られず、離職を余儀なくされる労働者も多いことから、育児や介護を理由にした離職を防ぎ、「子育てや介護」と「仕事」をより両立しやすい職場環境を整備するため今般、改正が行われました。

改正育児休業法

 まず改正育児休業法の4つのポイントを説明します。ひとつめは、有期契約労働者の休業取得要件の緩和です。育児休業とは、子を養育するため取得する休業です。対象となる労働者は、原則として1歳に満たない子を養育する労働者で、男性も、また有期契約労働者も対象となります。有期契約労働者については、改正前、申し出の時点において、①過去1年以上継続して雇用されていること②子が1歳になった後も雇用される見込みがあること③子が2歳になるまでの間に雇用契約が更新されないことが明らかである者を除くとされていました。

 改正後①に変更はありませんが、②③が、子が1歳6カ月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこととされました。雇用見込みの期間が6カ月短縮され、有期契約労働者も利用しやすくなりました。

 2つめは、子の看護休暇の取得単位についてです。子の看護休暇とは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、事業主に申し出ることによって1年度において5日(子が2人以上の場合は10日)を限度として、けがや病気にかかった子の世話をしたり、予防接種や健康診断を受けさせたりするために取得することができる休暇です。

 改正前は、1日単位での取得となっていたため、「午前中だけ休みたい」といった1日未満での取得を認める必要はありませんでした。改正後は、半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能となります。なお、所定労働時間が4時間以下の労働者については、半日単位での取得はできません。

 3つめは、対象となる子の範囲の拡大です。改正前は、法律上の親子関係がある実子・養子とされていましたが、改正後は、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子なども新たに対象となりました。

 4つめは、マタハラ・パタハラなどの防止措置の新設です。マタハラ(マタニティー・ハラスメント)とは、職場において女性労働者に対して行われる、上司・同僚からの、妊娠や出産、育児休業制度などの利用に関するいやがらせを指します。具体的には妊娠や出産を理由に退職を求めたり、時間外労働をしないことや育児休業の取得を理由に降格や減給することなどが該当します。また、パタハラ(パタニティー・ハラスメント)とは、職場において男性労働者に対して行われる、上司・同僚からの、育児休業制度や子の養育に関する制度の利用に関するいやがらせを指します。例えば男性労働者による育児休業の取得を拒んだり、育児休業の取得を理由に降格させることなどが当てはまります。

 改正前は、「事業主」による妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする解雇その他不利益な取り扱いが禁止されていました。改正後は、従来の取り扱いに加え、「上司・同僚」からの、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とするいやがらせなどを防止する措置を講じることが新たに事業主へ義務づけられました。

改正介護休業法

 改正介護休業法も4つのポイントがあります。ひとつめは、介護休業の分割取得が可能になりました。介護休業とは、労働者が、要介護状態(けがや病気または身体上もしくは精神上の障害によって2週間以上の期間にわたって常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するための休業で、対象家族1人につき93日まで休業することができます。対象家族の範囲は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹および孫です。同居・扶養要件が見直され、同居・扶養していない祖父母、兄弟姉妹、孫も対象となりました。なお、有期契約労働者であっても休業の申し出をすることができます。

 取得要件は、申し出の時点において、①過去1年以上継続雇用されていること②介護休業を取得する予定日から9カ月(93日+6カ月)経過する日までの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこととされました。改正前の介護休業は、対象家族1人について、要介護状態に至るごとに1回、通算93日までの間で取得が可能でした。改正後は、93日という日数に変更はありませんが、対象家族1人につき通算93日を最大3回まで分割して取得することができるため、93日の休業を1回で取得したり、31日の休業を3回に分けて取得するなど、状況に応じた休業が可能となりました。

 2つめは、介護休暇の取得単位についてです。介護休暇とは、要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者が、事業主に申し出ることによって1年度において5日(対象家族が2人以上の場合は10日)を限度として、介護その他の世話を行うために取得することができる休暇です。看護休暇と同様、改正前は1日単位での取得となっていましたが、改正後は半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能となりました。

 3つめは、介護のための所定労働時間の短縮措置等についてです。事業主は、要介護状態にある対象家族の介護をする労働者に関して、対象家族1人につき①所定労働時間の短縮措置②フレックスタイム制度③始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ④労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度のいずれかの措置を選択して講じなければなりません。改正前は、介護のための所定労働時間の短縮措置等について、介護休業と通算して93日の範囲内で取得が可能でした。改正後は、この期間が変わり、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上利用することが可能となりました。

 4つめは、介護のための所定外労働の制限です。対象家族1人につき、介護の必要がなくなるまで、残業の免除が受けられる制度が新設されました。1回につき、1カ月以上1年以内の期間で、介護期間中何度でも請求することができます。

 今回の改正では、主に介護離職を防ぐための整備が進められました。今後は、育児中の女性の離職を防ぐため、育児休業期間を最長2年に延長する方針も固まり、2018年春までの実施を目指しているところです。今回の改正にともない、就業規則や労使協定、育児介護休業に関する規定や社内における届け出書類など、さまざまな見直しが必要となります。社会保険労務士などの身近な専門家に早めに相談するようにしましょう。

掲載:『戦略経営者』2017年2月号