要介護状態の家族を抱えた従業員が活用できる公的制度があると聞きました。詳しく教えてください。(金属加工業)
高齢者の割合が増えるなか、家族の介護のために離職を余儀なくされる社員が増えています。でも経営者としては、優秀な社員にはできるだけ会社に残ってほしいことでしょう。そうした社員の離職を防ぐうえで、ぜひ活用してもらいたいのが「介護休業給付」の制度です。
介護休業給付とは、要介護状態の家族1人に対して介護休業を最大93日間(3カ月間)取得できる制度です。その休業期間、休業開始前の賃金の4割相当額が支払われます。
ちなみに介護休業給付は、雇用保険から支給されます。雇用保険は一般に「失業保険」といわれ、失業した際の保険給付としてのイメージが強いかもしれませんが、じつは家族の介護による離職を予防する「予防給付」としての位置付けもあるのです。
介護休業給付の制度を利用できる要介護者の対象は「配偶者、父母、子、配偶者の父母(配偶者の場合の事実婚、養子、養父母を含む)、被保険者が同居しかつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫」で、なおかつ負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とされる者とされています。
また、介護休業給付の受給要件としては以下のようなものがあります。
- 家族介護のため休業を取得した65歳未満の雇用保険の一般被保険者であること
- 介護休業期間中の1カ月の賃金が80%に満たないこと
- 介護休業開始前の2年間のうち、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12カ月以上あること
- 各支給単位期間(介護休業開始した日から1カ月ごとに区切った期間)で実際休業した日が20日以上あること
- 期間の定めのある雇用契約の場合、同一事業主の下で1年以上雇用が継続しており、介護休業開始予定日から起算して93日を超えて引き続き雇用される見込みがあること(93日超えた契約期間が93日経過日から1年未満で満了する場合は対象外)
「介護休暇制度」の利用も
そして、雇用保険の介護休業制度のほかにも、要介護状態の対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日の介護休暇が取得できる「介護休暇制度」もあります。
これまで介護休業は対象家族1人につき原則1回最大93日でしたが、厚生労働省は「分割取得」ができるように育児・介護休業法を2016年に改正、2017年施行を目指しています。うまくいけば、1回の介護休業や介護休暇制度では対応しきれずに有給休暇でやりくりしている現状から、最大93日を2~3回に分割して取得できるようになります。
これまでは要介護状態の家族を抱えた従業員は、精神的・体力的・経済的にも追い込まれ離職していくことが多かったといえます。しかし今回の法改正がなされれば、従業員が介護に対応できる環境整備がまた一歩前進することになります。
今後、急速な少子高齢化の進展にともない労働力人口が減少していくなかで、労働力確保の観点、つまりワークライフバランスの面からも、介護休業給付や介護休暇制度などをうまく活用しながら従業員を支援していくことが必要となるでしょう。