中国経済の減速など先行不安要因は少なくありませんが、今年も冬季賞与を支給したいと考えています。中小企業の相場を教えてください。(小売業)
冬季賞与は、おおむね年度上期の企業収益を反映したものとなります。そこで2015年度上期の企業業績を日銀短観9月調査からみてみると、4~9月期の経常利益は全規模全産業ベースで前年比+6.4%の増益となる見込みです。
景気は、中国経済減速に伴う不透明感の高まりなどから停滞感を強めたものの、原油安が収益の改善に作用しました。輸入原材料コストの低下に加え、ガソリンや電気代が値下がりしたことが幅広い業種の収益改善に寄与しました。
こうしたなか、今年末の賞与については、引き上げの動きが広がっています。労務行政研究所の調査によると、9月末までに年末賞与の水準を決めた大手企業の平均は、前年比+3.7%と、前年の+4.6%からやや鈍化するものの、2年連続の前年比プラスとなっています。
一方、経団連や連合などの調査で堅調な伸びを示していた本年夏の賞与は、賞与の代表的な統計である厚生労働省の毎月勤労統計では▲2.8%の減少となりました。このため、年末賞与も期待外れに終わる懸念が指摘されています。もっとも、この結果については、弱さを割り引いてみる必要がありそうです。
第1の理由は、サンプル要因です。毎月勤労統計の調査対象は、全国3万3000事業所にのぼり、170社弱にとどまる日本経団連調査などと比べると格段に多くなっています。しかし日本経団連の調査対象は、異同があまりないのに対し、毎月勤労統計では、30人以上の事業所のサンプルを3年ごとに全て入れ替えています。このためサンプル入れ替え後に賃金水準が低くなる傾向があります。今年はこのサンプル入れ替えが実施されるなか、夏季賞与が5~29人の事業所では、+0.8%の増加となる一方、30人以上で▲3.2%の減少となりました。
第2に、中小企業で支給対象者が増えた影響です。6月末の常用労働者数を基に試算すると、5~29人の事業所で賞与支給対象者が前年比+4.5%増えたのに対し、30人以上では同+0.9%の増加にとどまりました。賞与水準が平均を3割下回る5~29人事業所の支給者増加により、平均の賞与水準は、▲1.3%ポイント押し下げられました。
第3に、詳細な数字は不明ですが、支給があった企業でパートタイマーなど支給の無い雇用者が増えたことも、平均押し下げに作用しました。
これらを踏まえると、毎月勤労統計の夏季賞与の前年比マイナスを過度に悲観するべきではないと言えます。
中小企業は1%弱の伸び
さて、中小企業の賞与についてみると、良好な収益環境を背景に増加を維持するとみられます。
もっとも中国経済の先行き不透明感に加え、早晩はじまるとみられる米国の利上げが、新興国経済の資金流出や通貨安を招き、世界経済が混乱する懸念も浮上してきていることから、多くの企業で賞与の伸びは、収益改善ペースに比べ緩やかなものにとどまり、年末賞与は夏季同様、1%弱の伸びとなる見通しです。このため増加とはいえ、賞与水準は27万円弱と、10年前より約1割低い水準にとどまる見込みです。