徳島県徳島市で賃貸住宅の仲介を手がけるピースリビング。賃貸管理やリフォーム、資産運用コンサルティング、マンション建設などにも事業領域を広げ、12月には機関投資家向け株式市場への上場を予定しているという。『PX2』を利用している同社の堀金建吾社長と、顧問税理士を務める税理士法人徳島の北條伊織氏に話を聞いた。

賃貸住宅仲介軸にプロ向け市場へ上場

ピースリビング:堀金社長(中央)

ピースリビング:堀金社長(中央)

──不動産の仲介を中心に幅広く事業を展開されています。

堀金 賃貸住宅の仲介をはじめとして不動産売買、賃貸管理、リフォーム、大規模型修繕工事、土地を保有している家主さまへの資産運用コンサルティング、宅地開発などを手がけています。今年に入り建設業の許可もとり、マンション建設の請負にも参入しました。売り上げの構成はおおよそ賃貸事業が約3割、建築が5割、不動産売買が2割となっています。

──営業エリアは?

堀金 現在徳島市が中心ですが、今後南の阿南市と西の吉野川市にも店舗を出店する予定です。また本社が手狭になったので、1年以内に市内の中心部に本社を拡張移転する計画です。現在の本社はそのまま営業拠点として残し合計4店舗体制での事業展開を目指し、その後香川県や岡山県への進出も検討しています。

──自社ブランドのデザイナーズ賃貸マンションが目を引きます。

堀金 地元デザイナーを起用し、「ピース・スクウェア」や「ピース・ソレイユ」などといった自社ブランドの賃貸マンションを展開しています。キッチンやトイレ、お風呂などの設備は通常賃貸マンションで使うものと比べかなり高品質な製品を使用しています。またフローリングは無垢材を使用、照明器具もデザイン性の高いブランド品にするなど、「おしゃれな部屋」にこだわっていますね。住設機器や内装が高品質にもかかわらず、相場に比べ賃料はやや安く設定していることからかなりの人気があり、現在は供給が追いつかない状況です。

──高級感があっておしゃれなのに賃料が安いのにびっくりします。

堀金 高品質かつ低価格な賃貸住宅を提供できる理由は、マンション建築にかかるすべての工程をワンストップで当社が請け負い、かつ設計や施工を地元企業が行うことによって初期投資額を抑制しているからです。これまで県内では賃貸マンションの建設は大手メーカーが手がける場合がほとんどでしたが、これでは建設コストがかなり割高になってしまう。私は初期投資額を回収できずに苦しんでいるオーナーをたくさん見てきました。最初から当社にやらせてもらうことによって、いいものをお客さまに安く提供でき、同時に家主も苦しまず、当社も利益を得ることができる──こんなみんながハッピーになれる賃貸住宅の仕組みをどうしてもつくりたかったのです。

北條伊織税理士 すべての人が幸せにという社長の信念がまず素晴らしい。起業当初から上場を目指す姿勢もなかなかできることではありません。各種勉強会やセミナーにも積極的に参加されその情報をお客さまに還元しており、先祖代々の土地を守っていながら固定資産税に悩まされている多くの地主にとって強い味方になっています。

──東京証券取引所への上場を予定されていると聞いています。

堀金建吾社長 東京証券取引所が運営する東京プロマーケット(TPM)への上場を予定しています。TPMは機関投資家などプロの投資家が参加し、ジャスダックやマザーズにあがるまでの予備校的存在といわれている市場。開示基準が緩いので当社のような小規模で内部統制がまだ未整備の会社でも上場できるメリットがあります。投資家が限られていることもあり資金調達の期待はしていませんが、知名度や信用度の向上には大きく貢献すると思います。また経済紙の株価欄にも社名が掲載されることになるので社員のモチベーションアップにもつながるでしょう。県内からは初の上場となる見込みです。

──広告戦略にも力をいれていますね。

堀金 地元テレビのニュース番組の提供に入らせてもらうなど、テレビコマーシャルを数バージョン放映しています。内容は当社のテーマソングを歌うものや、当社キャラクターの「ピースくん」が登場するアニメ版などさまざまですね。また昨年から始まった「とくしま水都祭」では協賛企業として名を連ねているほか、8月に開催される24時間テレビ38「愛は地球を救う」には募金会場として参加することになりました。

料率変更の自動処理が給与事務の迅速化を促進

──業績管理や給与計算でTKCシステムを活用いただいています。

堀金 実は起業した当初、契約を考えた税理士の候補はほかにも数人いました。しかし私が北條先生に決めたのは、「同世代であること」という一番の条件を満たしていたからです。会社設立当時私は28歳。この先長く一緒に頑張っていくには若さがどうしても必要だったのです。私がビジョンや夢を話したときに、いつも具体的な提案を返してくれるのも心強く感じましたね。

北條 堀金社長は銀行出身ということもあり財務の重要性は熟知されており、会社設立時から戦略財務情報システム『FX2』をはじめとしたTKCシステムを導入していただきました。

堀金 最初から月次決算は当たり前だと思っていましたが、同業他社の社長と知り合いになるうちに実はそれが珍しいとされていることを初めて知りました(笑)。私からすればどうしてそれで的確な経営判断ができるのか本当に不思議です。不動産業はお金を借りてくるのも重要な仕事のひとつですが、資金調達を円滑に進めるためにも試算表をタイムリーに銀行に提出することが欠かせません。

──戦略給与情報システム『PX2』の使い勝手はいかがですか。

堀金 北條先生に顧問になっていただいた時にTKCのシステムを入れたので他社システムとの比較は分かりませんが、給与計算や賃金台帳の作成などの通常業務はスムーズに行うことができています。勤怠については、当社はタイムカードがないので社員に自己申告してもらったデータを打ち込んで処理しています。

後藤佳代取締役 一番助かっているのは、税制改正や社会保険の料率変更の場合に自動計算で処理してくれるところですね。また源泉所得税を毎月納付する際には、源泉所得税の徴収高計算書データを作成してくれる「TKC電子納税かんたんキット」がとても便利です。また当社では社労士の方と契約しているのですが、社労士の先生から問い合わせのあった資料がすぐに出力できるのもとても助かっています。

──給与水準を同業他社平均と比較できる機能などは利用していますか。

堀金 当社は基本給に歩合給を組み合わせた給与体系で業界平均よりも高いとは思いますが、実はそうしたデータはまだ見たことがありません。上場に向けて内部統制強化を図っているところで今後は1人当たり人件費などもきちんとチェックしていくことも必要になるかもしれませんが、基本的には頑張った分をできるだけ給与として社員に還元したいというのが本音ですね。いずれにせよ『PX2』には使いこなせていない機能がまだまだたくさんあるので、これから少しずつ必要なものを取り入れていきたいと考えています。今話題になっているマイナンバー対応についても、北條先生や監査担当の小西さんに教えてもらいながら対策について勉強したいと考えています。

──今後の展開を教えてください。

堀金 地方は人口流出の問題などがあり賃貸住宅をめぐる事業環境は厳しいのでは、とよくいわれます。しかし賃貸マンションに住む人がいなくなることはありません。いかに付加価値の高い物件を提供し競争に勝ち残っていくかが重要です。デザイン性の高い物件をより開発していくなど差別化を図るとともに、社宅代行サービスなど法人向け営業にも今後は注力していきたいですね。3年後には売上高20億円、ジャスダックへの上場を実現させたいと考えています。

(本誌・植松啓介)

会社概要
名称 株式会社ピースリビング
設立 2007年11月
所在地 徳島県徳島市応神町古川字日ノ上3-4
売上高 7億5,000万円
社員数 19名
URL http://www.peaceliving.net/

コンサルタントの眼
システムの徹底活用で夢の実現を全力でサポート
監査担当 小西美由紀
税理士法人徳島
徳島県徳島市昭和町8-46-20
TEL:088-654-8857
http://www.z-tokushima.com/

 ピースリビング様とは、法人設立直後の2007年12月から関与させていただいております。関与当初に『FX2』と『PX2』の利用をおすすめしたところ、堀金社長は起業当初から月次決算と、そのスピードを重視されており、自計化はとてもスムーズに進みました。また事業拡大とともに、社員数も毎年増え続け、『PX2』の利用により、人事情報の管理や給与計算の正確性と迅速性も確立できています。

 年々ピースリビング様の事業領域は多岐にわたるようになり、それにともなって会計処理も複雑化し、『FX2』では社長の求める財務管理も限界に達してきていたところ、上場を具体的な中期目標に掲げられたことをきっかけに、『FX4クラウド』を提案し、導入していただきました。

 巡回監査では後藤内部統括管理部長の協力のもと、社長が見たいと考えている数字が正確かつタイムリーに出せるよう、より詳細な部門別管理やプロジェクト管理機能の活用によって、さらなる財務管理体制の向上を図っています。社長は財務が経営上の重要な要素と考え、月次決算においてもキャッシュフローを強く意識されていて、金融機関からも高い信頼を得ています。またそれが営業面でのお客さまからの信頼にもつながっています。

 年末には社長のかねてからの目標であった上場への第一歩を踏み出すことが決まっています。まだまだ夢の実現のための通過点で、準備を進めていく中で改善すべき課題は数多く存在すると思います。しかし会計基準への準拠や内部統制システムの確立、法務対応などの具体的課題に対して、TKCシステムで対応できる部分も多くあります。これからも今まで以上にTKCシステムを徹底活用し、ピースリビング様の夢の実現の一助となれるよう全力でサポートしてまいります。

掲載:『戦略経営者』2015年8月号