ECサイトの本格的な運用を考えています。その際、自前で商品撮影をしようと思っているのですが、基本的な考え方とコツを教えてください。(食品加工)

 ECサイトのように商品に触れることができないビジネスの成否は、ほとんど写真で決まります。インターネットは雑誌と違い、クリックするたびに無限のページが表示されるので、自然とユーザーは文字を読まずに、写真や図を流し見する傾向があります。皆さんもアマゾンや楽天でモノを買うときに、商品説明をじっくり読むのではなく、まずは写真を流し見しませんか。そして気に入ったら商品説明を読むという流れになっているはずです。

 では、写真うつりを魅力的にするには、プロカメラマンのような才能と経験、そして一眼レフのような高額なデジカメが必要なのでしょうか。答えはノーです。どちらも必要ありません。昨今のコンパクトデジカメの性能はすばらしく、ちょっとしたコツを覚えればだれでも上手に商品撮影できます。

 よくシャッターを押す瞬間にすべてのノウハウが詰まっていると勘違いされがちですが、それは動いているスポーツ選手を撮影するプロカメラマンなどに当てはまること。静物をとる商品撮影はむしろ撮影前の環境づくりが成功のカギを握っています。

買ってほしい人を想像する

みたらし団子

 たとえば右の写真を見くらべてください。写真A、Bは同じ商品を撮影しています。どちらの写真も、「みたらし団子」であることは100%伝えています。しかし写真Bは、「食べたくなる」みたらし団子ですね。私は両者を区別して説明写真と妄想写真と呼んでいます。

 この妄想写真を撮影するには、シャッターを押す前の環境の整備が重要です。ここで既に売れる写真か売れない写真か勝負がついているわけです。皆さんもご自分の商品にあった「妄想写真」を撮影しましょう。コツはその商品をどんな人に買ってほしいか想像して環境をつくることです。ちなみに写真の小道具はすべて100円ショップで仕入れました。使ったデジカメも1万2000円で購入した安いものです。

ライティング

 商品撮影で大切なのは妄想写真をとるための環境づくりと述べましたが、そのために大切なのはライティング(どんな照明をどのように当てるか)です。こちらはイラストCをご覧ください。商品撮影の基本的なライティングです。抑えておくポイントとしては、最も自然光に近い昼白色の照明を使うことです。蛍光灯でもLEDでも構いません。

 次にディフューザーと呼ばれる薄くて白い膜です。素材は布でもトレーシングペーパーでも大丈夫ですが、必ず照明と被写体の間にかませて下さい。そうしないと点光源が面光源にならず、被写体下部に強烈な影ができてしまうからです。どれもホームセンターや文房具店で調達できますので、撮影キットの自作も可能です。「撮影キット 自作」で検索すると自作している人の写真付きの情報がたくさん手に入りますので、トライしてみてはいかがでしょうか。

掲載:『戦略経営者』2015年2月号