パートタイム労働法が改正されたそうですが、パートタイム労働者の雇用契約の注意点を教えてください。(小売業)

 「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下、パートタイム労働法)の一部が平成26年4月16日に改正されました。この改正では、パートタイム労働者の公正な待遇を確保し、また、納得して働くことができるように変わります。

 改正のポイントは4つあります。一つめは、正社員と差別的取り扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大です。

 現行では、正社員と差別的取り扱いが禁止されているパートタイム労働者は、①職務の内容が正社員と同一②人材活用の仕組みが正社員と同一③無期労働契約を締結しているという3つの条件がありましたが、今回の改正により、①の職務の内容と②の人材活用の仕組みの2つの条件が同一であれば、正社員と差別的取り扱いが禁止されます。

 職務の内容とは、従事している業務内容と責任の程度などを総合的に比較し、著しく異なるかどうかを判断します。つまり、雇用契約上の名称がパートタイム労働者であっても、勤務実態を総合的に見て、正社員と実質的に同様の業務であって責任の程度が著しく異ならない者については、賃金などの待遇について差別をしてはならない、ということなのです。

 人材活用の仕組みとは、人事異動の有無や範囲を指します。転勤の有無や範囲、昇進の有無などを比較します。

 これまで正社員と同じ待遇なのは無期労働契約をしているパート労働者でしたので、この改正により正社員並みの待遇に改善されるパート労働者が10万人程度増える見通しになっています。

短時間労働者の待遇の原則

 2つめの改正は、短時間労働者の待遇の原則の新設です。新しい規定として「短時間労働者の待遇について、通常の労働者との相違は、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」と定められました。この新設規定により、パートタイム労働者と正社員の待遇を相違させる場合は、この待遇の原則をもとにパートタイム労働者の雇用管理の改善を図ることになります。

 3つめの改正は、パートタイム労働者を雇い入れたときの事業主による説明義務の新設です。新しく「短時間労働者を雇い入れたときは、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置の内容について、事業主が説明しなければならない」と規定されました。説明が必要な雇用管理の改善措置の例としては、正社員転換制度があるか、賃金制度はどのようになっているか、教育訓練や福利厚生施設の利用機会があるか、などがあります。

 4つめは、パートタイム労働者からの相談に対応するための事業主による体制整備の義務の新設です。改正後は、相談担当者を決めて相談対応を行うことが義務となります。この「相談窓口」は、雇い入れの際に文書で明示する義務のある項目の一つとして追加されます。

 この改正の施行日は、平成27年4月1日のため、企業は、パートタイム労働者の賃金などの待遇や、相談窓口について検討が必要となります。

掲載:『戦略経営者』2014年10月号