赤字の中小企業に対して外形標準課税を適用する改正案が検討されているといいます。そもそも外形標準課税とは何でしょうか。(鋳物製造)
法人税の実効税率を20%台まで引き下げるための代替課税として、赤字の中小企業に対して外形標準課税を適用する改正案が検討されています。改正案が決まれば、赤字の中小企業の税負担が増し資金繰りがさらに厳しくなることが予想されます。
外形標準課税とは、事業所の床面積や従業員数、資本金や付加価値など外観的に判断できる基準を課税ベースとして税額を計算する課税方式で、法人事業税でこの課税方式が採用されています。
法人事業税は法人の行う事業そのものに課される税です。企業はその事業活動を行うにあたり、地方自治体から産業・都市基盤整備、警察・防災、環境保全などさまざまな行政サービスの提供を受けており、これに必要な経費を分担すべきだという考えにもとづいて課されているものです。
企業が享受する受益の大きさは企業の事業活動の規模に応じるという考えのもとに税負担の公平性を確保しようとすれば、行政サービスを利用しているすべての法人がその事業規模に応じて税を負担する必要があります。従来の法人事業税は所得課税(所得金額×税率)で税額を算出していたため、自治体の税収は景気変動によって大きく左右され税収の安定性を欠いていましたし、たとえ大きな事業活動規模の企業でも欠損が生じれば税負担がゼロになるなど税負担の公平性も問われていました。そこで、従来の所得課税だけでは事業規模との関係が必ずしも適切に反映されないとの指摘から、平成16年から資本金1億円超の法人を対象に所得課税と並行して外形標準課税が行われるようになったのです。ただし資本金1億円以下の法人については、外形標準課税対象から外れました。
現在の法人事業税は、所得割、付加価値割、資本割で構成されています。従業員への給与や支払利子、支払賃借料など企業が生み出した付加価値や資本金などの額に応じて税額を計算する仕組みとなっているため、所得が低い法人でも規模が大きければ事業税を支払うことになり、企業間の税負担を平準化する効果があります。
賃上げとは逆方向に進むことも
では、外形標準課税が資本金1億円以下の法人にも適用されるようになった場合、どのような影響があるのでしょうか。
行政サービスを等しく享受するわけだから、法人の黒字・赤字で負担額が異なるのはおかしいとの指摘はあるものの、赤字で資本の蓄積が乏しい中小法人に今以上の税負担を強いることは中小企業の存続を揺るがしかねない事態を招くかもしれません。企業規模が小さくなればなるほど経費に占める人件費の割合が大きくなる傾向が強く、現行の付加価値割をそのまま課税ということになれば企業存続のためにやむなく人件費の削減に踏み込むことにもなり、安倍政権が進める「賃上げ」とは逆の方向に行くことも考えられます。
また、今般の消費税率改正で増税分の価格転嫁が出来なかった企業は、その分を自社で負担しなければならないことを考えると、外形標準課税の課税拡大が中小企業に二重の税負担を強いることにもなります。