大震災に備えて、会社の防災袋に入れておくべき備蓄品・防災グッズにはどんなものがありますか。(家具製造)

 東京都では、首都直下型地震などの大型地震発生時の、一斉帰宅の抑制を図るために昨年、帰宅困難者に対する対策条例を施行しました。他の自治体においても、これに準じた従業員に対する備蓄が求められています。

 東京都の条例には、企業は従業員に対し3日分の水(3リットル×3日)、食事(9食)などを用意するよう記されています。しかし電気・ガス・水道すべてが一定期間停止し、従業員が社屋内で生活することを考えると、他にも多くの備蓄が必要になると考えられます。まず発災当日からトイレの問題が生じます。断水時だけでなく、停電時にも社屋内の水洗トイレがすべて使用できなくなることが考えられるからです。

 飲用の水不足はそのまま生死に関わりますが、排せつの問題も1日目から深刻な問題になります。固形化(無臭化)する薬剤の入った簡易トイレを従業員分、十分に(3日分程度)用意したほうがよいでしょう。さらにトイレ用のペーパー、女性社員用に生理用品などの備蓄も一定量あったほうがよいといえます。

 災害発生時に社屋内に寝泊りすることは、大きなストレスになります。廊下や冷たい床で睡眠を取らなければならない社員のために簡易マット、防寒用ブランケットなどを人数分用意しておくこともお勧めします。

 また被災時には怪我をしたり、体調を悪くする社員も出てくることもあると思いますが、近隣に救急医療施設があったとしても、重傷者を優先して対応する可能性があります。軽傷や軽度の体調不良に対応できるよう、救急医療薬品類は必ず常備しておき、AEDなどの器具もできれば設置しておきたいところです。従業員本人にも、個人の常備薬等があれば社内に一定量用意しておくよう指示したほうがよいでしょう。

 さらに全員分の個数は必要ありませんが、ラジオなどの情報収集手段を確保し、懐中電灯、乾電池などの備蓄も必要になります。携帯電話の充電器、非常用バッテリーなどのほか、停電が長期にわたった場合に備えて、手動でも充電可能な機器(ラジオ・懐中電灯など)があるとたいへん便利です。

その他に用意しておきたいもの

 速やかな事業再開の必要がある企業などでは、パソコンにも利用可能な非常用電源を用意し、バックアップ体制を整えています。社屋内に災害対策本部(リカバリーサイト)をたてるための情報収集機器・照明・什器などを確保し、支店・本店の連絡を取るための通信機器・通信手段などを用意しておくこともぜひお考えください。また、会社内での長期避難に備える場合には、調理用の器具・ガスコンロなども必要となります。

 これまで企業として用意すべきものをあげてきましたが、社員個人においてもそれぞれが一定の備蓄や準備をしておくべきでしょう。やむを得ず、徒歩で帰宅をしなければならない時に備えて、運動靴を一足用意しておいたり、ペットボトルの水、簡易食、携帯の救急用品(消毒薬・ばんそうこう等)のほか、ヘルメット、軍手、携帯やスマートフォンの予備電源なども用意しておくことを推奨します。また、避難時には粉じんなどを吸い込む危険性もあるのでマスクは必需品。傷などの消毒にも可能なウエットティッシュがあると非常に役に立ちます。

掲載:『戦略経営者』2014年9月号