ユニクロがパート・アルバイトの正社員化に動き出したという話もあります。非正規従業員を正社員化するメリットについて教えてください。(流通業)
この春の、雇用・労働関連の大ニュースと言えば「アルバイト・パートの正社員化」です。なかでもファーストリテイリングが4月10日に発表した、国内のユニクロで働くアルバイト・パートを地域限定で働く正社員に登用するという施策は話題となりました。約3万人いるパートやアルバイトの半分強の約1万6000人を対象とし、2~3年間で正社員に転換していくと発表しています。
個人的な解釈ではありますが、私はこの動きについては、次のポイントから論じられると思います。①産業構造の変化②雇用のポートフォリオ、特に正社員と非正規社員の役割分担③雇用の多様化です。
産業構造の変化というのは、産業構造がハードからソフトに、つまり製造業からサービス業にシフトしてきているということです。
次に、雇用のポートフォリオについてです。1995年に日経連(当時)は、『新時代の日本的経営』のなかで長期蓄積能力活用型グループ、高度専門能力活用型グループ、雇用柔軟型グループの3つにわけて運用しようという提言をしました。言うまでもなく、非正規雇用は雇用柔軟型グループに分類されます。ただ、00年代に明らかになったのは、雇用柔軟とはまるで正反対の動きでした。非正規雇用は、正社員をサポートする仕事を大きく越え、むしろ最前線でコア事業を担当する役割を負うようになっています。この傾向は流通業などで顕著で、企業としては彼らの流出をできるだけ抑えたいと考えています。
そして、雇用の多様化という論点もあります。すなわち「限定正社員」という新たな選択肢の話です。正社員で総合職となったならば、誰でも幹部を目指さなければなりません。そうしたことから、地域や勤務時間、さらには担当業務などが決まっている限定正社員に関して労使ともにニーズが高まっています。
人材の獲得・維持によい影響
さて、ここで「アルバイト・パートの正社員化」のメリットについて考えてみたいと思います。
ひとつは人材の獲得・維持に好作用を及ぼすということです。正社員という安定した立場の魅力により、優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。アルバイト・パートは雇いやすく、必要なくなった時に辞めてもらいやすいわけですが、逆に辞められるリスクも高い。最近は景気回復により、非正規雇用の人材獲得の難易度が上がっています。
また、アルバイトよりも指揮命令系統が明確になり、マネジメントもしやすくなるという利点もあります。さらに、雇用形態を合わせられることにより、組織の一体感が高まることも期待できます。
もっとも、本当に期待されたとおり、人材の獲得に効果があるかどうかは、やや疑問です。もともと非正規雇用で働く方は、自由な雇用形態を望んでそうしているわけです。また、そもそもこれが推進される業界は、人材確保に苦しんでいます。それは、業務の性質そのものの問題でもあります。新たな人材の獲得というよりは、現状の社員の維持に効果的だと言ったほうがよいかもしれません。
むろん、ただ正社員化すればよいというわけではありません。正社員化を考えている企業は、背景なども踏まえつつ、自社にどう効果がありそうかを考えてみてください。