高級ブティックが軒を連ねる東京・表参道で、隠れ家的雰囲気を醸し出している「HATAKE AOYAMA」。感度の高い人々が足繁く通うイタリアンレストランだ。神保佳永総料理長(36)は、きめ細かい財務管理により「当月の売上高を翌月3日までに把握できるようになった」という。

緑あふれる癒やしの空間で旬の野菜料理を味わう

アイビーエフ・アール:神保総料理長(右)

アイビーエフ・アール:神保総料理長(右)

──お店の特徴を教えてください。

神保 イタリア料理をベースにした野菜料理を中心に提供しています。青山に畑をつくりたいという思いから「HATAKE AOYAMA」という店名にしました。国内産の無農薬野菜や江戸野菜、鮮魚を旬の時期に調理するのが当店のスタイルです。

──江戸野菜とは?

神保 京野菜や加賀野菜など地名を冠した野菜があるように、東京にも地域に根付いた野菜があります。小松川の小松菜、金町のカブなどです。一般的に10月から6月ぐらいまでが江戸野菜の旬ですね。

──食材の仕入れはどのようなルートでされていますか。

神保 東京の築地市場と大田市場のほか、お付き合いさせていただいている全国の契約農家さんから仕入れています。農家の方々と連絡をとり、旬の食材を仕入れることができる点はわれわれの強みです。昨年は契約農家さんの畑で、スタッフ全員が参加しての研修会をおこないました。野菜の栽培過程を学べ、お客さまに情報提供する際、得た知識を役立てています。

──卸売市場関係者の間で「東京で元気なレストランナンバーファイブに入るお店」と言われていると聞きました。

神保 おもに飲食店経営を目指す方々が読む業界誌のアンケート調査で、当店がランクインしました。東京都内の野菜料理をメーンにしているレストラン207店舗の中から選ばれたので、とても光栄です。
 2010年6月のオープン当時、野菜料理をあつかう飲食店がちょっとしたブームになっていました。それから4年近く経ち、今も営業しているのは207店のうち半分ぐらい。当店では20代から40代までの女性の方々をメーン層として、連日たくさんのお客さまにご来店いただいています。産地と生産者の顔が見える食材、青山という立地、価格など、さまざまな要素にお客さまが魅力を感じているからだと思います。

──テラス席があったり、ワインセラーがあったり雰囲気のあるつくりです。

寄谷真二取締役 都会で暮らす人たちの「いやしの場」をテーマに、天然素材や緑を随所に取り入れました。ウエディングパーティーの会場としてもご利用いただいています。

──個室もあるとか。

神保 ランチとディナータイムそれぞれ1日1組(8名まで)のお客さまがご利用できる「シェフズテーブル」で、フルコース料理を楽しんでいただけます。ガラス越しに調理する様子を眺められる臨場感がうりです。予約状況は店舗ホームページで随時更新しています。

──時節柄、食材の産地を気にする方もいるのでは?

神保 ええ。まずスタッフ全員が食材の産地に関する情報を共有することから始めています。メニューリストには産地名を表記し、料理をテーブルにお持ちする際にも、口頭でお客さまにお伝えするよう徹底しています。

──伊勢丹新宿店内にもお店があるそうですね。

神保 本館地下2階にある「HATAKE CAFE」で、2012年9月にオープンしました。旬の野菜をつかったバーニャカウダや、オリジナルのハーブティーなどを気軽に楽しんでいただけます。

──景気は上向いているといわれますが、実感はいかがでしょう。

神保 お客さまがプラス1品多くご注文されたり、オーダー数は目に見えて増えており、売り上げは前年にくらべ徐々に上がってきています。ただ、原材料費が高騰しているため、利益額は昨年とあまり変わっていません。4月の消費税率アップをひかえ、いかに利益を確保していくかが今後の課題です。

月次業績報告会議で多彩な分析資料を活用

──会社設立以来『FX2』をご利用いただいていると聞いています。

寄谷 私の兄弟が伊藤裕子(税理士)先生に顧問をお願いしており、伊藤先生を紹介してもらいました。先生からお勧めいただき、『FX2』と給与計算の『PX2』を利用しています。

──伊藤先生は事務所のある札幌市から巡回監査のため、青山に赴かれているそうですね。

伊藤 毎月初旬におじゃますることが多いですね。青山本店におうかがいし、『FX2』で1カ月間の取引を精査しています。取締役と店舗責任者の方、親会社フランドル様の経営幹部と経理担当者、総勢6人の方々に出席いただき、戦略実行のための月次業績報告会議を開催しています。

──店舗スタッフの方が伝票入力されているのですか。

神保 フランドル・経理課の永本さんにおこなってもらっています。

永本良氏 取引を「仕入れおよび支払い」と「入金」に分け、もうひとりの社員と分担し1台のパソコンに入力しています。月間の仕訳数はトータルで100件ほどです。

──使い勝手はいかがでしょうか。

永本 関連会社でべつの経理ソフトを使っていますが、仕訳辞書は非常に便利だと感じています。頻繁に入力する取引を自分で仕訳辞書に登録できるので、すんなり慣れることができました。当初、操作方法がわからないときは伊藤先生によくメールで質問をしていましたが、レスポンスがとても早く、ありがたかったです。

伊藤 外出するときはいつもノートパソコンを持ち歩いていますし、パソコンのアドレスに届いたメールは携帯電話に転送しています。

──『FX2』で活用している機能を教えてください。

神保 青山店、伊勢丹新宿店、オンラインストア、それと本社共通の4部門に分けて管理しています。永本さんに《部門別科目残高推移表》を元にさまざまな分析資料を作成してもらい、月次業績報告会議で活用しています。売上高と営業利益、人件費はとくに気になる部分。売上高科目の「4111」はAからIまで9つの枝番に分け、細かく管理しています。「TKC経営指標(BAST)」に掲載されている同業他社の「1人当たり売上高」「1人当たり限界利益」といった指標と比較して、自社の立ち位置を確認しています。

──業績報告会議で話し合われている内容は?

神保 前回の会議で課題となっていた事項を議事録から確認し、解決できていないことがあれば打ち手を話し合います。『FX2』のデータをもとに売上高と営業利益の推移をグラフ化した「月次業績報告書」という資料を独自に作成しています。目標数値も記載しているので、進捗状況をひと目で把握できようになりました。伊藤先生にも訪問される前に会議のテーマ、月次業績報告書、各店舗の日報などをメールでお送りしています。

──現場にはどのように目標を落とし込んでいますか。

神保 2人の店長が業績報告会議に出席し、会社の数字を共有するのが第一。毎日実施している朝礼と夕礼で前日の売り上げを発表し、目標額におよばなかったときは、スタッフといっしょに原因と対応策を考えています。

──今後の展望をお聞かせ下さい。

神保 現在は2店舗ですが、新たな出店計画を検討しているところです。お店が増えれば取引量も増加するので、複数拠点から仕訳入力できる体制を整える必要がでてくるかもしれません。これからも「食を通してお客さまを幸せにする」をモットーに、精進していきたいと思います。

アイビーエフ・アール:神保総料理長(右)

会社概要
名称 アイビーエフ・アール
設立 2010年4月
所在地 (青山店)東京都港区南青山5-7-2 B1
TEL 03-3498-0730
売上高 3億5000万円
社員数 49名(アルバイト含む)
URL http://www.hatake-aoyama.com

CONSULTANT´S EYE
日々の手厚いサポートで顧問解約くい止める
税理士 伊藤裕子 伊藤裕子税理士事務所
北海道札幌市中央区北三条西1-1-1パナソニックビル2F TEL:011-222-3330
http://www.e-ito-office.com/

 アイビーエフ・アール様とは、顧問先経営者のご兄弟である寄谷真二取締役に当事務所の内装デザインをお願いしたご縁で、設立以来関与させていただいています。月次監査は経営の根幹ですから、「遅い試算表では役に立ちません!」と訴え、毎月上旬での監査を断行してきました。

 日々、店舗責任者から報告を受け、親会社の担当者が経理・給与処理をおこなっています。現場のルーティンワークを把握するよう努め、状況を漏れなく経理担当者に伝える仕組みづくりに重点をおきました。今では毎月5日には店舗別の月次棚卸が完了し、翌月6営業日後には全社の試算表ができあがります。同時に監査に出席する経営幹部と当事務所あてに、試算表や前月の宿題、監査月の状況、今後の課題等を記載した議事案がメールで届きます。したがって、参加者は数値を見たうえで臨むため、業績報告会議はかなり踏み込んで問題解決の策を練る場になります。当事務所からは、試算表と『TKC経営指標(BAST)』等を照合した改善点、税制改正のポイント、景気や業界動向など、事業戦略に取り入れていただきたい情報をお伝えしています。

 フランドル様が運営する関係会社は多数ありますが、TKC会員が顧問契約を結んでいるのはアイビーエフ・アール様のみです。昨年、フランドル様から他社の会計ソフトで全社統一する旨の通達があり、関与継続が厳しくなりました。しかし、TKCシステムの優位性と、これまでの指導姿勢を評価いただき「伊藤先生のような税理士はほかにいないから、顧問契約を続けるべきだ」と取締役や親会社の幹部が栗田社長に直訴してくださり、引き続き関与させていただくことになりました。ご報告を耳にしたときはうれしさのあまり、泣きながら表参道を歩き会社をあとにしたのを覚えています。

 現在、多店舗展開を視野に入れており、より詳細に業績管理を行える『FX4クラウド』の利用を提案しています。アイビーエフ・アール様のいっそうの発展をしっかりご支援してまいります。

掲載:『戦略経営者』2014年3月号