コーヒー消費大国日本。喫茶店激戦区の東海地方に昨年、フルサービス型の新たなお店「珈琲銘香 さんく」がオープンした。小川悟司社長(33)の『ネットレジ』を活用したタイムリーな打ち手により、早くも地域住民の心をがっちりとつかんでいる。

珈琲銘香 さんく:小川社長(右)

珈琲銘香 さんく:小川社長(右)

──コーヒー豆を扱われていると聞いています。

小川 当社オリジナルの「スペシャルブレンド」と「炭焼焙煎」の2種類のドリップオンコーヒーを主力商品として販売しています。炭焼焙煎コーヒーは、今あまり使われていない備長炭を100%使用して焙煎しているのが売りです。どちらもお客さまが「もう一杯飲みたい」と思っていただけるようなブレンドを目指し開発しました。お中元、お歳暮など贈答用としてもご好評いただいています。

──このほど喫茶店をオープンされたそうですね。

小川 昨年11月、桑名市にできたイオンタウン内に「珈琲銘香 さんく」桑名店を出店しました。会社設立当初から考えていた念願の1号店です。ご存じのとおり、お隣りの愛知県は喫茶店のモーニングサービス発祥の地。遅い朝食をとっていただくこともできるよう、当店ではモーニングタイムを昼の12時までにしました。

──反響はいかがでしょうか。

小川 今回オープンしたのが1号店で、名前がまだ知られていなかったため不安でしたが、おかげさまで予想を上回る大勢のお客さまにご来店いただいています。
 イオンタウンができたのは団地が密集している、名古屋のベッドタウンといえるエリアです。朝7時から夜11時まで営業していますが、午前中はご年配の方、午後は主婦層、夕方以降はお勤め帰りの方と、時間帯によってあらゆる年齢層の方々にご来店いただいています。

──看板商品というと?

小川 コーヒー販売会社が経営している喫茶店というのが特徴ですから、メーンは「ブレンド珈琲」、「スペシャル珈琲」をはじめとしたコーヒーになります。コーヒーを飲めない方向けにも紅茶やソフトドリンク類を豊富にご用意しています。サイドメニューの中で一番人気があるのは、「照り焼きサンド」と「クラシックパンケーキ」ですね。ご注文をいただいたあと厨房で焼き上げているので、出来たてを味わっていただけます。

──集客のため行っていることを教えてください。

小川 まずは多くの人に「さんく」という名前を知っていただくことが先決だと思っています。いまもっとも力を入れているのは、フェイスブックやブログなどソーシャルメディアを活用した口コミです。お店のフェイスブックページとブログの更新情報を随時店舗ホームページに載せ、情報発信しています。特定の担当者を置かず、私も含め全員で書き込むようにしています。

──リピーターの獲得も重要です。

小川 店頭で「さんくチケット」というチケットを販売しています。コーヒーチケットのようなイメージですが、当店のチケットはコーヒーだけではなく額面相当の食事券としてもご利用いただけます。まだ初めてご来店されるお客さまが多いですが、さんくチケットでお支払いされる方が増えていけばうれしいですね。

──接客で心がけている点は?

小川 何よりもまず、お客さまへのあいさつを徹底すること。特に「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」「はい、おうかがいします」の3つは元気よく言えるよう教育しています。
 また飲食店というと忙しいとき、なかなか電話に出てくれないという悪い印象があります。当店は車で来られるお客さまがほとんどで、場所がわからず電話で聞かれることも多いため、極力ワンコールで応対するように徹底しています。週末は私も店頭に立ち、お客さまの声を直接おうかがいするよう努めています。

──最近コンビニで販売している淹れたてコーヒーが人気ですが、どう感じていますか。

小川 実はありがたいことなんですよ。コンビニでコーヒーを買われるのは時間がない方が多いと思います。そもそも当店でターゲットと見込んでいるお客さまの層と異なります。コンビニでよくコーヒーを購入される方も、ちょっと時間ができたときに当店にも立ち寄っていただければプラスになります。コーヒーを飲む習慣がより身近なものになれば、ファン層が広がっていくのではないでしょうか。

前川 直営店のため、ロイヤリティーの負担もありませんし、商品開発、価格設定も自社で行えます。大手チェーンのフランチャイズでない点は、さんく様の大きな強みです。

店舗外からネット経由で売上・集客状況を把握

──前川先生の関与のいきさつをお聞かせください。

小川 顧問税理士の方を探していたとき、前川先生が以前勤務されていた第三銀行の元同僚の方から先生をご紹介いただきました。

──直営店オープン以来、『ネットレジ』を利用されているそうですね。

小川 ええ。経理担当者がたまたま『戦略経営者』に掲載されていた『ネットレジ』の広告を目にし、前川先生に相談したのがきっかけです。売り上げデータを『FX2』に仕訳連動できるという点にメリットを感じ、導入しました。

──従業員の方は操作にすぐ慣れましたか?

小川 店舗オープン当初、慌ただしい中でしたが、スタッフを集めて3日間ほどかけて集中的に操作研修をおこないました。ふだんスマートフォンやタブレットを使っている従業員が多いので、タッチパネル式の操作は、すんなり入っていけたと思います。疑問点は24時間体制のサポートセンターに電話で問い合わせ、操作方法を丁寧に教えてもらえました。お客さまからのご注文を入力するハンディーターミナルも6台購入しました。店内には91席あり、同時にオーダーをいただくことも多いので、そのぐらいの台数は最低限必要だと感じています。

──仕訳連動はいかがでしょう?

小川 『FX2』を入力しているパソコンは店舗ではなく本社にありますが、『ネットレジ』から切り出した売り上げデータをクラウド経由で簡単に連動できます。前川先生にもフォローいただいているので安心です。

──売り上げの入力以外にも、『ネットレジ』ではさまざまな角度から分析できるメニューがあるのが特徴ですが……。

小川 よくチェックしているのは《時間帯別商品別売上集計表》ですね。時間帯別にどんな商品が売れたかひと目でわかるようになっています。店舗の売り上げはデータセンターにアップロードされるので、インターネットを介して売上高をリアルタイムで把握できます。スマートフォンで毎朝、前日の売り上げを確認するのが習慣になりました。営業時間中も随時、売り上げと客数をチェックして、問題があればすぐに手を打つようにしています。

──具体的には?

小川 売り上げが伸びていないときは何らかの原因があるはずです。メニュー表が飽きられてしまっているとか、テーブルの上に置かれたPOPが古くなっているとか。先日はさんくチケットがアピール不足だと思い、POPをつくってみたところ、チケットを購入される方が徐々に増えてきました。

──『FX2』で注目している指標はありますか。

小川 売上高に対して、人件費率と原価率がそれぞれ25%以内に抑えられているか確認することが多いです。直営店オープンを機に、部門別管理も導入しました。2号店、3号店と今後お店を出す際は、部門ごとの独立採算で経営していくことを念頭に置いています。

前川 会社を設立された当初に自計化をご提案し、小川社長は会計に対する意識を強く持っていただいています。『継続MAS』で策定した経営計画を予算として『FX2』に登録し、部門別に予実管理もしています。

──給与計算には『PX2』(戦略給与情報システム)を利用されているそうですね。

小川 TKCからアマノ社の勤怠管理システム『タイムパック』を購入し、タイムカードの情報を『PX2』に読みこんでいます。正確に勤怠データを連動できて助かっています。

──今後の意気込みを。

小川 オープンしたばかりの桑名店の経営を軌道に乗せ、愛知県、岐阜県にも直営店を出店したいと考えています。東海3県でさんくブランドを確立し、ゆくゆくは全国にフランチャイズ展開していきたいです。『ネットレジ』はまだ活用しきれていない機能もたくさんあると思うので、前川先生にアドバイスをいただきながら有効活用していきたいですね。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 珈琲銘香 さんく
設立 2012年11月
所在地 (本社)三重県四日市市垂坂新町159番地1
(店舗)三重県桑名市大字西別所字駒広2104(イオンタウン桑名新西方敷地内)
TEL (本社)059-334-0550
(店舗)0594-24-3939
社員数 20名(アルバイト・パート含む)
URL http://coffee-sanku.co.jp/
顧問税理士 前川定之
前川定之税理士事務所
三重県津市広明町345番地5 第2三浴ビル2階
TEL:059-229-2560
URL:http://www.maegawa-sadayuki.com/

掲載:『戦略経営者』2014年2月号