福澤諭吉が幼少青年期を過ごしたことで知られる大分県中津市に本社を構え、持ち前の行動力で24時間全国配送をうたうのが、アドバンテージ物流サービスである。中園功一社長(42)に事業にかける情熱と、『FX2』を活用した攻めの業績管理手法について語ってもらった。

迅速・安心のサービスで顧客のお困りごとを解決

アドバンテージ物流サービス:中園社長(中央)

アドバンテージ物流サービス:中園社長(中央)

――事業内容を教えてください。

社長 トラックによる配達、引っ越し業務および倉庫保管・管理業を主に手がけています。配達業務には決まったルート間を運ぶ「定期便」と、緊急のお荷物を配達する「緊急・特配便サービス」があります。書類1通から大型の精密機械まで、日本全国へ迅速に配達しています。

――創業のいきさつは?

社長 僕自身、以前は佐川急便でセールスドライバーとして働いていました。1日に何十軒と回っていると、急な依頼をいただいたお客さまから預かるべき荷物を、うっかり預かり忘れてしまうこともあるわけです。そんなとき当時は最寄りのタクシー会社に連絡し、代わりに荷物を預かって配達してもらうよう依頼したりしていました。退職後、そういった突発的な配達を頼んでいた側から請け負う側に回り、さまざまな事情のある緊急の荷物を配達する仕事を始めたのがきっかけです。

――緊急・特配便サービスですね。

社長 ええ。誤った場所へ配達されてしまったものを預かり配達し直したり、届け忘れの荷物を急いでとどけたり、突発的なニーズに対応できる機動力をうりにしています。いわば事故が起こったときに出動する救急車のような仕事ですね。依頼された仕事は「ノー」と言わない。それが当社のモットーであり、強みだと思っています。

――引っ越し業務の特徴は?

社長 大手引っ越し会社さんに負けない価格設定です。引っ越し用のトラックには「大手他社対抗宣言」と大きくペイントしているので、きっとインパクトがあるものと思っています。新聞やラジオでの広告も始めました。引っ越しのさい、当社を思い起こしていただけるよう、目と耳に残る形でアピールしています。

――最近の経営環境はいかがでしょうか。

社長 インターネット通販が盛んになり、運送会社間の競争が激しくなってきています。以前は通販で扱っている商品というとわりと小さい物が多かったのですが、近ごろは液晶テレビやマッサージチェアなど大ぶりな物を運ぶ機会が増えてきました。通販会社には現場にサービス担当者がいませんので、当社の社員に設置などの依頼がくるんですね。組み立てや設定、ときには廃棄品の引き取りまで行うこともあります。配達しておわりではなく、運送業の枠を超えて色々なお手伝いをさせていただいています。

――安全面の管理も重要です。

社長 安全運転は最優先に取り組むべきテーマです。当社のような中小運送会社は、交通事故により会社の信用が一挙に地に落ちてしまいます。場合によっては1000万円規模の損失につながることもある。ドライバーの毎朝の体温測定とアルコールチェックはもちろんのこと、今年から産業医の先生に毎月来ていただき、健康管理に関するアドバイスをいただいています。
 また、当社は4トン車までしか保有していないため本来装着義務はないのですが、16台の車両すべてにデジタルタコグラフを付けています。安全のため役立つことであれば、何事も積極的に導入するようにしています。

――昨年、こちらの場所に会社を移転されたそうですね。

社長 新事業として重要書類保管管理業務を行うスペースが必要だったからです。「配送に関連する新たなサービスの提供」というテーマで、大分県から経営革新計画の承認もいただきました。このほど500坪の倉庫が完成し、「PMS(Proxy Management Space)」という名前で年明けから本格的にサービスを提供します。昨今、地震や大洪水などさまざまな自然災害が起こり、重要書類を安全な場所に保管するニーズが高まっています。ここ中津市宮夫地区は活断層が通っておらず、地震による津波到達エリアにも含まれていない安全な場所です。中小企業経営者の皆さまにPMSを活用いただくメリットは十分あると確信しています。

常務 地の利に加え、手のひら静脈認証システムやハロンガスによる消火設備など、厳重なセキュリティー対策を行っています。この近辺でこれほど万全なセキュリティーを備えた保管設備は他にはないと自負しています。

金融機関担当者を招き社長自ら数字を説明

――『FX2』導入の経緯を教えてください。

社長 清末(和弘顧問税理士)先生にぜひ使うべきだと強く勧められ、だまされるようにして利用し始めました(笑)。先生は当時、勤務税理士という立場でしたが、とにかく熱い人物でしたね。ご自身の事務所を開業する前からお付き合いをさせていただいている、いわば当社にとっての育ての親です。僕自身、商業高校出身ですがろくに勉強してこなかったので、当初簿記は全くわかりませんでした。でも先生と出会ってから変わりましたね。先生から監査の時に「自社の数字もわからないでよく経営者やってられますね」とか「何回同じ仕訳を間違えるんですか」などと、いろいろ厳しくご指導いただいたおかげです。

清末税理士 それは言い過ぎです(笑)。今でも社長自ら、毎月約600取引を『FX2』に入力されているのがすごいところで、伝票の起票もされているので数字には非常に強いです。

社長 先生から入力は経理担当者に任せるべきと日ごろ言われていますが、毎日入力して業績をつかんでおかないと気が済まないたちなんです。『FX2』を利用するようになって、常に自社の数字を把握できるようになったことが以前と格段に変わった点ですね。

――主に『FX2』のどんな機能を活用されていますか。

社長 《利益管理表》を印刷して、科目ごとに予算と照らし合わせてチェックすることが多いですね。重点的にチェックしている科目は売上高はもちろんのこと、外注費や燃料費、高速代、車両修繕費などです。あと《業績評価マトリクス》もよく見ています。結果を見てテンションが上がるときと下がるとき両方ありますが、業績がどう推移しているか視覚的につかめるところが好きです。

――経営計画も立てておられるのですね。

社長 毎期作成しています。当社は9月決算ですが、8月までの11カ月間の業績の推移をたたき台として、5カ年の中期計画と翌期の計画両方を作っています。計画がまとまった時点で先生の事務所の会議室をお借りし、お付き合いさせていただいている金融機関3行の担当者さんを招いて計画を発表しています。スクリーンに『FX2』の画面を映し出して会社の業績を僕が説明するんです。「穴があったら入りたい」と思いながら(笑)。ただ、金融機関の方がどこをチェックするのか着眼点がわかるので、非常に勉強になりますね。そこでいただいたアドバイスを元に計画を作り直し、だいたい12月ぐらいに完成させています。

――業績検討会も開いていますか。

社長 もちろんです。毎月月次決算が終わるたびに金融機関を訪問し、試算表をお渡ししています。担当者との面談のアポイントを取り付け、翌週などに当社の業績の推移や見通しを説明する時間をいただくのです。金融機関から「常に会社の動きが把握できる」と評価をいただいています。清末先生のアドバイスにより始めて、かれこれ8年になりました。

清末 とにかく社長は行動が早いです。月次監査の翌日には金融機関に試算表を持って行かれています。

――今後の抱負をお聞かせください。

社長 物流会社は単に商品を配送するという業務をやっているだけでは、この先厳しいと思います。当社では“ハイブリッド物流”をキーワードに、重要書類保管管理業務を始めます。これはかねてから5カ年計画にも記載していた長年の夢でした。PMSは地域や業種の垣根をこえてご利用いただける可能性を秘めたサービスです。今後どういう仕事をしていきたいかということを先生からよく聞かれるんです。その際、お客さまに「ありがとう」と感謝される仕事がしたいと常々話していました。ゆくゆくはPMSをご利用いただくお客さまから「アドバンテージに預けておいて本当に良かった」と言っていただけるサービスに育てていきたいと思っています。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 有限会社アドバンテージ物流サービス
設立 2004年1月
所在地 大分県中津市大字宮夫字正手182番地
TEL 0979-26-0789
売上高 2億1200万円
社員数 20名
URL http://www.adv-ls.com/

CONSULTANT´S EYE
TKCシステムをフル活用し数字を語れる経営者を育成
税理士 清末和弘
清末和弘税理士事務所
大分県別府市石垣東6丁目1-13 TEL:0977-23-3175
URL:http://www.kiyosue.com/

 アドバンテージ物流サービス様とは、法人設立後まもなく関与させていただきました。設立当初は資料をお預かりして当事務所で入力する監査方法でしたが、その後いち早く『FX2』により自計化され、今では戦略的経営、社長の計数管理能力向上のためフル活用いただいています。また『継続MAS』システムを利用して決算報告会時、5カ年経営計画および短期経営計画を作成し、『FX2』に予算として登録しています。前期決算完了時には、金融機関担当者の方々もお招きして経営計画を作成しました。

 毎月の巡回監査では試算表だけでなく、「予算実績比較表」を最も活用しています。決算報告会時に作成した経営計画と比べ「なぜ予算と実績に差が生じているのか」「なぜ行動計画が実行されていないのか」といったことを分析し、PDCAサイクルを確立すべく取り組んでいます。

 また、働きやすい職場づくりのため、社長自らが社員一人ひとりに目を配り、率先して“声がけ”を行っています。さらに社内に年間目標売上高などを掲げ、社員と一丸となって目標の達成にまい進する「元気な会社づくり」に力を注いでいます。当事務所は社長の身近な相談相手としてのサポート役であるととらえています。

 アドバンテージ物流サービス様は現在、書類1通から精密機器まで、あらゆる品物の配達や引っ越し等の事業を展開されています。今後新事業として、お客さまの契約書や社内文書等の機密書類を保管する、重要書類保管管理業を実施していきます。昨年、会社事務所を移転され、経営革新計画の承認も受けました。

 中園社長の経営方針の根幹をなすのは感謝の気持ちです。お客さまに対して“夢のある仕事”、“喜ばれる仕事”をしたいといつも考えておられます。今後も熱いハートをもった社長の良きパートナーであり続けたいと考えています。

掲載:『戦略経営者』2012年12月号