最近人生の終末期に備える「終活」という言葉をよく聞きますが、何から着手すればよいのでしょうか?(印刷業)
いわゆる「終活」とは、人生の終末期に備えて葬儀やお墓、遺産相続などの準備をすることを意味します。従来、このようなことは家族に任せればよいという風潮がありましたが、最近は平均寿命が伸びたこともあり、人生のエンディングを納得のいくものにしたいと願う人が増えてきました。
中小企業経営者は、わが身に万一のことがあったとき、株式や不動産などの資産をスムーズに承継させるため、準備しておきたいと考えている人が少なくないはずです。大事なことは、終活にはある程度の時間がかかるので、早めに対策をスタートする必要があるということです。
相続対策というと、まず顧問税理士に相談しようと考える人が多いと思いますが、そこまで差し迫った必要性を感じていないという方には、最近はやりの「エンディングノート」を利用することをおすすめします。エンディングノートとは、将来自分に万一のこと(病気・介護・死亡など)があったときに備えて、家族や周りの人々に伝えたいことを、あらかじめ記入しておくノートのことです。前半はプロフィール(自分史)および医療、介護に対する希望、後半が葬儀やお墓の希望、遺産相続、大切な人へのメッセージからなります。通常の手書きのほか、パソコン入力できるものや2分冊になったもの、特定のテーマが充実しているものなど、さまざまなタイプがあります。
エンディングノートに記入するメリットは、将来リスクが現実化したときの対処法を具体的に考えられるだけでなく、家系図や財産リストを作成していくうちに、誰にどの財産を相続させるかといったことについて、考えがまとまりやすくなる点が挙げられます。
記入のポイントは(1)項目が多いので必要性の高いところから書く(2)ひとりよがりにならないように、なるべく周囲と相談しながら書く(3)保管方法に注意する等です。
(2)は、たとえば「葬儀は身内だけで、戒名は不要」などと書くと、葬儀の後で配偶者が親族から非難されたり、遺骨をお寺に納められなくなるといった可能性があります。将来、ノートの内容を実行するのは自分ではないため、周りの人々の意見を参考にして作成することをおすすめします。
(3)は、ノートには重要な個人情報が詰まっているため、普段は他人に見られないようにするとともに、必要なときすぐに使用できるようにしておく必要があります。信頼できる人に保管場所を伝えたり、財産や遺産相続に関するノートは別冊にして保管場所を分けてもよいでしょう。
法的効力のある書類作成を
注意したいのは、エンディングノートに記した内容には法的な強制力がないことです。財産管理や遺産相続など、確実に実行してもらいたいことがある場合は、遺言書など正式な書類をつくる必要があります。遺言書というと、家族仲の悪いお金持ちが作るものというイメージがあるかもしれませんが、実際は財産の多寡や家族仲に関わりなく、スムーズに遺産相続する上で役立ちます。自筆で書くための遺言書キットも市販されていますが死後、家庭裁判所での検認手続きが必要となり時間がかかるため、なるべく公証役場で作成することをおすすめします。
また、自分が寝たきりや認知症になったとき、特定の子に財産管理を任せたいといった希望がある場合は、公証役場で相手とともに「財産管理の委任契約書」や「任意後見契約書」を作るとよいでしょう。公証役場での相談は無料なので、気軽に訪ねてみてはいかがでしょうか。相続税や法的な問題が気になる方は、税理士や弁護士などの専門家に相談しましょう。