インターネットを利用したクラウドファンディングという資金調達法があると聞きました。詳細について教えてください。(金属加工業)

 クラウドファンディングとは、企業や団体などがインターネットを通じて不特定多数の人々から小口の投資を募る手法のことです。ベンチャービジネスの起業が活発な北米圏では、新しい起業スタイルとして認識されつつあります。国内でもここ1年で普及の兆しを見せています。

 その普及を後押しているのがクラウドファンディングサイトです。米国の「キックスターター」をはじめ、国内でも「キャンプファイヤー」や「レディーフォー?」など多数のサイトが登場しています。クラウドファンディングサイトでは、投資を必要とする企業などが発起人としてプロジェクトのアイデアを披露し、こうした提案内容をもとに訪れた不特定多数の人々が投資の要否を判断します。

 プロジェクトには、必ず募集期限と目標金額が設けられます。期限内に投資額が目標額に達した場合は、クラウドファンディングサイトの運営業者から一定の手数料を差し引いた額が支払われます。ただし、期限内に目標額に達しなければプロジェクトは不成立となり、投資者に全額返金されます。

 クラウドファンディングの仕組みで特徴的なのは、資金調達の手段が多様であることです。調達手段は、投資者への報酬の形によって3通りのパターンがあります。投資の対価を支払わない「寄付型」、投資額に応じた金銭を支払う「投資型」、プロジェクト達成により具現化した成果物を提供する「購入型」となります。購入型の見返りは「製品化に成功した機器の購入権」や「関連グッズの提供」など金銭以外の物品やサービスで提供するのが通常です。実際の資金調達では、購入型や寄付型の利用が大半を占めています。

 調達手段の多様化は投資の間口を広げ、専門投資家だけでなく消費者に近い一般投資家を呼び込むことを可能にします。担保不要で資金調達のハードルが比較的低いことも、企業にとっては利点です。

北米では多額の資金調達例も

 クラウドファンディングの利用が進んでいる北米では、いくつかのプロジェクトが多額の資金調達に成功して注目を集めています。その一つが、カナダのベンチャー企業が2012年4月に企画したスマートフォンと連携する腕時計の量産化プロジェクト。購入型の投資をキックスターターで呼びかけたところ、1カ月の間に1000万ドル以上の資金が集まりました。このときの報酬は開発製品の予約購入権。未知の製品への期待と話題性の高さが、一般投資家の関心を引き付けたと思われます。同社は当初、ベンチャー向け投資会社で資金調達を試みていたのですが、難航したためクラウドファンディングに切り替えています。

 一方、一般投資家の関心を呼び込めず不成立となったプロジェクトも数多く見受けられます。投資を呼び込むには、こうした一般投資家に対して、プロジェクトによる成果を魅力的に訴えることが重要です。最近では、プロジェクトを立ち上げる前にSNSなどを通じてコミュニティを築き、周到に告知するケースが増えています。クラウドファンディングはネットならではの新しい資金調達法です。利用する企業側もそれに合わせたノウハウが求められます。

掲載:『戦略経営者』2012年11月号