労働安全衛生法の改正ではメンタルヘルス対策が強化されるとききました。対処すべきポイントを教えてください。(ソフトウエア開発)

 近年、労働者が抱えるストレスは増大する傾向にあり、仕事に対して強い不安やストレスを感じている労働者は6割を超えるという統計もあります。また、精神障害等に関連した労災補償状況をみると、請求および認定件数とも増加の一途をたどっています。

 メンタルヘルスに関わる問題が労働者本人はもちろん、その家族や職場に与える影響は今日、ますます大きくなっていることはいうまでもありません。事業所におけるメンタルヘルスの積極的な増進は、社会全体の健全な発展をうながすうえでも、非常に重要な課題となっています。

 以上のような背景から昨年10月に厚生労働省は労働安全衛生対策をより一層強化するための審議を行い「労働安全衛生法の一部を改正する法律案」が示されました。そのポイントは3点あります。

  1. メンタルヘルス対策の充実・強化
  2. 型式検定および譲渡の制限の対象となる器具の追加
  3. 受動喫煙防止対策の充実・強化

 このうち本稿では1. について説明します。法律案では事業者は職場において、「メンタルヘルスケア」に積極的に取り組むよう定められました。さらに全事業者に義務づけられる健康診断受診時に、ストレスに関連する症状・不調を見極める9項目のメンタルチェックを受けることも定められました。メンタルチェックの内容はまだ検討段階ですが、図(『戦略経営者』2012年9月号31頁図表参照)のように示されています。

外部機関の活用を

 労働者がストレスに対処するうえで、自ら気を配る「セルフケア」の必要性を認識することが最も重要です。しかし職場に存在するストレス要因には、自身の力だけでは取り除くことができない要素も多々あります。「セルフケア」に加えて「ライン(上司)によるケア」「職場内産業保健スタッフ等によるケア」および「職場外資源(職場外でメンタルヘルスケアヘの支援を行う機関および専門家)によるケア」の4つを効果的に組み合わせ、継続的に行うことが大切です。

 労働安全衛生法では常時使用する労働者が50人以上の事業所では嘱託産業医を、1000人以上は産業医を置かなければならないとされていますが、常時使用する労働者が50人未満の小規模事業所では、産業保健スタッフを確保できない場合が多いと思います。そのさい事業者は「衛生推進者」または「安全衛生推進者」を選任するとともに、地域産業保健センターやEAPサービス機関等が提供する各種支援策を積極的に活用することが望ましいといえます。

掲載:『戦略経営者』2012年9月号