雇用保険法が改正されたそうですが、そのポイントを教えてください。ほかにも労務管理関係で注意すべき法改正等があれば教えてください。(製造業)
改正雇用保険法が成立しました。一番のポイントは、失業手当の給付日数を延ばすなどの暫定措置を2年間(平成25年度末まで)延長することが決まったことです。もともと措置期限は今年3月末まででしたが、厳しい雇用状況を踏まえて延長に踏み切ったわけです。その暫定措置の詳細は以下のとおりです。
【再就職困難者の延長給付措置】
解雇・倒産・雇い止めによる離職者について、年齢や地域を踏まえて特に就職が困難と認められる場合に給付日数を最大60日延長する措置。再就職の支援が必要と公共職業安定所長が個人別に認定して給付日数を延長します。
【特定理由離職者の給付日数拡充】
雇い止めによる離職者の給付日数(90~150日)を解雇・倒産による離職者の給付日数(90~330日)並みにする措置。
【特別会計について】
失業等給付の積立金から、雇用調整助成金の支出のために必要な額の借り入れを可能とする措置。特別会計の雇用勘定に失業給付積立金を積み立てているうちの中から、雇用調整助成金の財源として借り入れができるわけです。
【雇用保険料率の引き下げ】
失業手当に充てる雇用保険の料率を賃金の1.0%(労使折半)に引き下げる措置。つまり「一般の事業」「農林水産業・清酒製造業」「建設業」の3区分において、前年度から1000分の2(事業主負担分、従業員負担分それぞれ1000分の1ずつ)、法定の下限まで引き下げられることになります。
改正育児・介護休業法にも注意
さて、雇用保険料率が引き下げになるという事業主・従業員に配慮したかたちで雇用保険法が改正された一方で、平成24年7月1日から「改正育児・介護休業法」が完全実施されて中小企業の負担が増します。この点についてもぜひ注意してください。
これまで常時100人以下の従業員を使用する事業主は適用が猶予されてきましたが、
- 3歳未満の子を養育する従業員が希望すれば利用可能な短時間勤務制度の設定
- 3歳未満の子を養育する従業員が申し出た場合の所定労働時間を超える労働時間(残業)の制限
- 要介護状態にある家族の世話をする従業員が申し出をした場合の1日単位での介護休暇の取得(対象家族が1人の場合年5日、2人以上の場合10日)
が義務化されることになります。
なお1.の短時間勤務制度は単に運用されているだけでは不十分です。その手続きが就業規則に規定され、制度化されていなければなりません。
また2.の所定労働時間を超える労働の制限、および3.の介護休暇の取得については、その導入の際には事前に就業規則への記載が要件となるので、規定の変更が必要です。
育児・介護休業法の完全実施導入により、労務管理等の事務処理負担は増加しますが、ワーク・ライフ・バランスを踏まえた雇用環境を整備することで、事業主側にも大きなメリットがあります。これまで出産を機に退職していた社員を、育児休業取得後も短時間出勤制度で職場復帰させて能力を発揮してもらえれば、採用から投資してきた育成費用を無駄にすることなく「使える人材」を定着させることができるからです。