水質汚濁防止法が改正されたと聞きました。改正のポイントと対応の仕方について教えてください。(クリーニング店経営)

 平成23年6月に「水質汚濁防止法の一部を改正する法律」(改正法)が成立しました。地下水は都市用水の約25%を占める貴重な淡水資源ですが、工場または事業場が原因と推定される汚染事例が継続的に確認されています。地下水汚染は、原因者の特定が難しく、自然の浄化作用による水質の改善が期待できないことなどから一度汚染すると回復が困難です。今回の改正は、地下水汚染の未然防止のための実効ある取り組みの推進を図るために行われたものであり、本年6月1日から施行されます。改正のポイントは次の通りです。

1.対象施設の拡大
 有害物質を貯蔵する施設(有害物質貯蔵指定施設)の設置者は、定められた様式に、当該施設の構造、設備(付帯する配管等)、使用の方法等を記載し、都道府県知事等に事前に届け出なければなりません。ここでいう有害物質とは、カドミウム、鉛、トリクロロエチレンなど水質汚濁防止法施行令第2条で規定されている26物質を指しますが、今後追加される可能性があるので注意が必要です。

 また、有害物質使用特定施設(水質汚濁防止法施行令第1条に規定されている特定施設のうち、有害物質の製造、使用、処理を行う施設)の設置者について、公共用水域に水を排出していないため届け出を行っていなかった事業者についても同様に届け出が必要となります。なお施行の日に既にこれらの施設を設置している事業者は、6月30日までに都道府県等への届け出が必要となります。ただし既に水質汚濁防止法に基づく特定施設の届け出を行っている場合は、施行時における届け出は不要です。

2.構造等に関する基準順守義務等
 有害物質使用特定施設または有害物質貯蔵指定施設(以下単に「施設」という)の設置者は、施設の床面および周囲、施設に付帯する配管等、施設に付帯する排水溝等、地下貯蔵施設に関する構造等に関する基準を満たす必要があります。施行の日以降に施設を新設する際には、例えば、床面および周囲については、コンクリート、タイルその他の不浸透性を有する材料による構造とし、有害物質を含む水の種類または性状に応じ、必要な場合は、耐薬品性および不浸透性を有する材質で被覆が施されていることや、防液堤、側溝、ためますもしくはステンレス鋼の受け皿またはこれらと同等以上の機能を有する装置が設置されていることなどが必要となります。

 なお、改正法の施行の際に既に設置されている施設(既存の施設)については、実施可能性に配慮し、構造等の基準の適用が3年間猶予されます。また、施設を更新しなくても、漏えいを検知するための装置や流量の変動を計測するための装置など、漏えいを確認できる措置を講じることにより、基準を満たす場合があります。

3.定期点検の義務の創設
 施設の設置者は、施設の構造等について、目視等の方法により定期に点検しなければなりません。点検結果については、必要な事項を記録し、3年間保存することが必要となります。なお、既存の施設についても新設の施設と同様に、施行の日から定期的な点検、記録、保存が必要となります。

 制度の詳細については、環境省ホームページ(http://www.env.go.jp/water/chikasui_jiban.html)に掲載しており、あわせて、事業者の方が実際に対策を実施する際の参考となるためのマニュアルも掲載しているので、参考にしていただきたいと思います。

掲載:『戦略経営者』2012年3月号