対談・講演
次の50年も「関与先完全防衛」の理念を共有する最良のパートナーとして歩み続けよう
北原睦朗 大同生命保険株式会社 代表取締役社長 × 坂本孝司 TKC全国会会長
TKC全国会は昨年創設50周年を迎え、今年から新たな運動方針が展開されている。全国会の提携・協定企業の中で最も長い提携の歴史をもつ大同生命保険の北原睦朗社長と坂本孝司全国会会長との対談では、次の50年に向けて「関与先完全防衛」という共通の理念を堅持し、経営助言業務として保険指導に取り組んでいく意義等が語り合われた。
司会 本誌編集長 石岡正行
とき:令和4年3月4日(金) ところ:TKC東京本社
全国会との提携が起死回生の転機に 理念をDNAとして刻み続ける
──本日は、TKC全国会の提携・協定企業の中で最も長い歴史を持ち、今年創業120周年を迎えられる大同生命の北原社長をお迎えし、坂本会長と提携の意義、今後の取り組みなどについて対談していただきます。
坂本 北原社長には昨年の全国会創設50周年を記念した全国大会、それから今年1月の全国会政策発表会等に来賓としてご出席いただきました。ありがとうございました。
大同生命保険株式会社
代表取締役社長 北原睦朗氏
北原 こちらこそ大切な催しで、提携・協定企業を代表してご挨拶させていただき、ありがとうございました。本日はよろしくお願いします。
──早速ですが、北原社長は昨年4月に社長に就任されて間もなく1年を迎えられますが、まずその率直な感想をお聞かせいただけますか。
北原 コロナ禍のためTKC会員の先生方と以前のような接点を持つのは難しかったのですが、全国会創設50周年記念式典や新春賀詞交歓会、地域会の秋期(季)大学等で多くの会員先生方と直接お話をすることができました。私は大同生命に入社してからTKC全国会と直接関わる仕事をしたことがなかったので、とても貴重な機会でした。
坂本 TKCを直接担当された経験がないそうですが昔からお付き合いをさせていただいている気になるのは、北原社長のお人柄ですね。我々を理解しようとしてくださる気持ちが強く、うれしく思います。
北原 いまTKC会員の先生方とご一緒に、「関与先企業を完全にお守りする」ための仕事ができていることは本当にありがたいことです。私はTKC全国会飯塚毅初代会長との出会いは当社にとって「奇跡の出会い」と思っています。そこから「関与先完全防衛の実現」に向け、会員先生方と道を同じくしての歩みが始まりました。
TKC全国会と提携させていただく以前、大同生命は厳しい苦境に直面していました。当時の保険業界は大手の会社による寡占傾向にあり、規模で見劣りする当社のシェアは減少の一途を辿っていました。その危機意識を背景に経営の革新へと乗り出そうとする中で、飯塚毅初代会長との出会いがありました。それは大同生命にとって起死回生の大きな転機となりました。そのご恩を絶対に忘れてはならないと考えています。
これまでも折に触れ、当社の経営者が業務提携の歴史について語ってきましたが、それはTKC会員の先生方とご一緒に関与先完全防衛を実現するという理念を社内にDNAとして刻み続けていくために大変重要なことです。当社は今年、創業120周年を迎えますが、その歴史をしっかり後世に伝えていきたいと思います。
坂本 TKC全国会が創設から50年の間、方向性がぶれることなく歩んでくることができたのも、理念の堅持、追求があったからこそです。大同生命との約50年の長きにわたる提携も同じですね。我々は常にそのことを確認しておかなければなりません。
「保険指導は会計事務所の正当業務」企業防衛制度はイノベーションだった
──提携の歴史についてあらためてお話しいただけますか。
北原 飯塚毅初代会長と当社のご縁は、昭和34年、当時の宇都宮支社長(今井恒夫氏)との出会いがきっかけで、その関係から保険指導のお手伝いをさせていただいておりました。
また飯塚毅初代会長は、当時社長であった三木助九郎と親交を深められていました。ご著書『激流に遡る(飯塚毅著作集Ⅱ)』(TKC出版)に記述されていますが、三木が昭和38年の元旦、息を引き取る間際に、飯塚初代会長に掛軸(句「大石溯激流、大人遡逆運(大石は激流に溯ぼり、大人は逆運に遡ぼる)」)をお届けするように奥様に言い残しています。
その年に「飯塚事件」が起こった際、飯塚初代会長はその句をご自身の励みにして頂いたとのことです。ビジネスを超えての深い絆もあって生まれたのが今日の企業防衛制度であることも忘れてはならないと感じています。
──昭和49年7月に全国会との業務提携がスタートし、昭和51年にTKC専用の商品として「TKC企業防衛制度」が誕生しました。
北原 昭和40年代半ば、当社は他社と違い、「法人への定期保険路線」に転換・特化し、企業経営者を守るための営業体制の確立を目指していました。飯塚毅初代会長は、関与先を完全に防衛することがTKC理念の実践と考えられ、それを共有できる保険会社として当社をお選びいただいたと思います。
昭和53年からはTKC会員の先生方へ保険募集人登録の働きかけ(代理店制度の導入)を行い、昭和54年にTKC専担支社(渉外支社)を設置しました。
保有契約高が10兆円に到達した平成3年に飯塚毅初代会長と対談させていただいた当時社長の河原四郎は、商品開発や体制整備は社内調整、当局認可等の面で容易ではなかったと述懐しつつ、業務提携に際して飯塚初代会長やTKC会員の先生方の心温まるご支援により最もやりがいのある仕事であったと語っています。
──坂本会長、昔は会計事務所が保険指導を行うことに違和感を覚える税理士も多かったといいます。そのとき飯塚毅初代会長がおっしゃったのが「保険指導は会計事務所の正当業務である」という言葉です。そのあたりのいきさつをお話しいただけますか。
坂本 飯塚毅博士はアメリカ公認会計士協会から1959年(昭和34年)に発刊された『Guides to Successful Accounting Practice/成功する会計業務に関する手引書』をもとにしてTKC会員に対して、保険業務のことを中心にいろいろなことを教えてくださいました。租税資料館(東京都中野区)に所蔵されている実際の書籍を手に取ると、飯塚博士が付けられた下線や印、コメントが残っていて感慨深いのですが、それとともに、すでにその頃から飯塚毅会計事務所が保険指導に取り組まれていたという先見性に驚かされます。
そしてこの書籍をもとにロジックをまとめ、「保険指導は会計事務所の正当業務である」と内外に宣明されたのです。海外の文献で事実の裏付けをしながら論理的に語るので説得力があるのですが、さらに飯塚毅博士はロジックを一歩進め、原書では適正な保険指導を関与先企業へ行い対価を請求せよとあったところを、代理店登録により関与先完全防衛の体制を作るべきであると展開されるわけです。こういうところに飯塚博士の天才的なイノベーションがあると思います。
北原 私も、企業防衛制度は飯塚毅初代会長の「発明」だと感じています。
また、「保険指導は会計事務所の正当業務である」という言葉はTKC会員の先生方へ発せられたものですが、我々にとっても当代随一の税理士先生の言葉は非常に説得力があり、励みになったと思います。
──「企業防衛制度」というネーミングも、関与先企業を会計人として守っていくという我々に最もフィットする名称ですね。
坂本 名が体を表していて、腑に落ちます。私も若い頃、保険指導に躊躇していた時期がありましたが、飯塚毅博士が理念、実践の意義を理論的に示してくださっていたことが励みになり、取り組む原動力となりました。
企業防衛制度だけでなく、「税理士業務のイノベーション」を飯塚毅博士はいくつも図っておられます。我々が基本業務として実施している月次巡回監査はその最たるものです。そういう意味で飯塚博士は50年以上も前から税理士業務のイノベーターであったと思います。我々は税理士業界発展のために尽くされたその思い、仕組みを享受するだけでなく、継承しさらに進めることで次の50年に向けた歩みを確かなものにしていかなくてはなりません。
「企業防衛制度の費用は必要経費」であることを肝に銘じておくべき
──坂本会長、事務所で保険指導を実践していて良かったと思われるエピソードはありますか。
TKC全国会会長 坂本孝司
坂本 関与先企業が救われた事例は数多くあります。保険金が支払われるスピードや分割での支給もありがたい。多くのTKC会員が同じ経験をしていると思います。
──関与先経営者が不慮の事故などにあいながらも立ち上がっていく姿を見ると、あらためてその重要性を実感します。
坂本 その意味で保険指導において肝に銘じているのは、飯塚毅博士が強調されていた「企業防衛制度の費用はカットしてはいけない。これは必要経費なんだ」という言葉です。企業防衛制度は、飯塚博士が「低廉な保険料でより大きな保障が確保できる定期保険を」と大同生命へ依頼して設計された「これ以上コストカットできない」ものです。経営改善計画等で安易にカットしてよいものでもない。生命保険料、損害保険料は企業の万が一のための必要経費であることを今一度確認しておきたいと思います。
──TKCシステムの変動損益計算書を活用し、固定費カットだけではなく限界利益をいかに上げられるかを考えていくのが経営ですね。
坂本 その通りです。新たな全国会運動方針に掲げた通り、TKC会員は月次巡回監査を通じて黒字化を支援し、優良企業を育成することを目指しています。飯塚真玄TKC名誉会長のご提言により『TKC経営指標(BAST)』の「優良企業」の定義が変更されますが、高付加価値経営に取り組む経営者を増やし、付加価値(限界利益)を高めることで、最終的に付加価値額(限界利益額)の総体である日本全体のGDPの底上げに寄与したいという思いからです。
「経営助言業務」としての保険指導が事務所の経営基盤強化にもつながる
──坂本会長は企業防衛制度の推進を「税理士の4大業務」の中の経営助言業務として位置づけられましたが、この点についてお話しいただけますか。
坂本「税理士の仕事とはいったい何か」という漠然とした問いをずっと抱いていました。全国会会長に就かせていただく頃でしょうか、税理士の仕事を体系化できないかと考え、税務・会計・保証・経営助言の4つの業務の概念を整理し直しました。それぞれ重なり合っている中心部分が仕訳、会計帳簿です。
経営助言に重なり合うのは税務、会計、保証です。ですから「経営助言の中心にあるのが企業防衛です」とTKC会員の皆さんへお伝えしてきました。リスクを金額として算定する際は、借入金等から計算をして会計的に導き出します。また保険金が入ってきたら法人税の支払い等を考慮するので税務の知識も不可欠です。正しい数値でなければリスクが判断できないため、書面添付の実践つまり保証業務も必要となります。したがって税務と会計と保証業務が重なったところにこの企業防衛があるという話です。経営リスクに関する対策指導は会計・税務・保証業務の専門家である我々だから行えるのであり、TKCシステムを活用した月次巡回監査を経た数字から導き出すから説得力があるのです。
北原 おっしゃるように、標準保障額は保障額を決定する根拠であり、正確な会計帳簿だからこそ的確な保険指導ができるというロジックは、まさに企業防衛制度が中小企業の存続に資する経営助言であり、非常に大きな社会的価値を持っていると感じます。
TKC会員事務所だから巡回監査に基づく根拠ある「標準保障額」算定が可能
──今お話にあったように、標準保障額の算定は、TKC会員事務所による保険指導の最大の特徴ですね。
北原「TKC企業防衛制度導入の8原則」には「保険指導の契約指導に当っては満腹作戦をとるべきだ、ということ(第4原則)」とあります。そして満腹作戦における適正額計算では、企業のリスクを算定して標準保障額をしっかり導き出す(第5原則より)。食べすぎも腹八分目もだめで、経営者の万が一のときに困らない金額、やはり満腹という点が大事です。
その点において企業防衛制度は明確な根拠に基づいて適切な保険に加入いただくことができます。関与先企業への巡回監査を毎月実施され、きちんとした会計で税務も含めたご指導により正確な数字が算出できるからにほかなりません。
TKC企業防衛制度導入の8原則
第1原則
関与先の防衛問題を、関与先の経営者の肉親の一人として、親身になって解決してやるのだ、との
純粋かつ崇高な使命感から助言し、指導すること。
第2原則
先生は相手方の妄想、思惑、風当りを考え、及び腰で説得する、との態度を絶対的に避け得ていること。
第3原則
先生は保険会社の外務員でもなければ、保険会社の代弁者でもない。会計税務の専門家であり、経営の指導者である。ただ資本制社会の制度としての保険の一種類を、最も有利に関与先のために活用せんとするだけだ、との態度を絶対に堅持すること。
第4原則
企業防衛制度の契約指導に当っては、「満腹作戦」をとるべきだ、ということ。
第5原則
関与先企業における保険適正額を予め算出して指導に当ること。
第6原則
先生は保険加入説得の時点で、関与先に対し、保険契約成立と同時に法的に有効な議事録作成のアフターサービスを実施する旨を、厳然と伝えておくこと。
第7原則
先生は「保険会社の外務員」ではなく、「保険契約指導の会計人」なのですから、いささかでも勧誘的な感触を関与先に与えない様、厳然たる指導者的態度を崩さず、堂々と胸を張って行動すること。
第8原則
関与先企業に保険契約を指導する場合には、常にその時点で、関与先に最も適切有利なものに的をしぼり、それ以外は薦めない態度を堅持すること。
坂本 株式会社TKCが「企業防衛データベース(KBD)」の開発をして、スムーズに標準保障額の算定等が行えるのもありがたいです。企業防衛制度推進委員会の優秀な委員が開発に加わり、より良いシステムの設計となるよう携わっているので安心です。
──大同生命さんはTKC企業保険支社というTKC会員専担者を社内に置いて支援体制を整えてくれています。
北原 昭和54年以降、TKC専担支社の全国への展開とともに、標準保障額算定の支援も広がり始めました。
平成18年には「TKC担当者の行動指針」を策定し、TKC全国会の理念である「自利トハ利他ヲイフ」の理解に努め、TKC会員の先生方の大切な関与先企業を守るための想いや行動を徹底してきました。以来、「会員先生方が真剣に取り組まれている。我々も期待に応える」という風土が全社的にも広がりました。
大同生命TKC担当者の行動指針
私たちは、大同生命の基本理念である「加入者本位」「堅実経営」を礎とし、TKC全国会の理念である「自利利他」の理解に努め、次の行動を通じて、TKC会員事務所の関与先さまの発展に貢献します。
- TKC全国会の同志的結合体の一員として、関与先さまの完全防衛の実現を最高の目標として行動します。
- TKC会員事務所の保険指導業務の支援を最大の使命として行動します。
- 相手を尊重する気持ち・考え方を身につけ、コンプライアンスに基づく行動により信頼を築くことを最高の価値とします。
- 自らが主体的に行動し成長することと互いにコミュニケーションを深めることで、最大の資産である活力ある組織をつくります。
坂本 ありがたいですね。大同生命の皆さんとだからこそ、我々は関与先完全防衛実現を目指せるのです。
私はTKC静岡会の会長時代に、大同生命の支社とTKCSCGサービスセンターに呼びかけてそれぞれの担当者による情報交換会を年に2回くらい実施し始めました。そういう仕組みが全国に広がっていきましたが、大同生命もTKCも会計事務所を支えてくださる存在なので、コミュニケーションを良くして互いの業務を知るのは大切だと思ったのです。
コロナ禍においていち早く関与先向けの無金利契約者貸し付けを実施
司会 石岡正行本誌編集長
──企業防衛制度のありがたさをあらためて感じたのは、コロナ禍が拡大し始めた約2年前、企業が資金不足に陥ったときです。大同生命さんから迅速に、金利ゼロの契約者貸し付けが実施されたことで我々は勇気づけられました。
坂本 当時は工藤稔社長でしたが、本当にすばやいご対応で、無金利での貸し付けを即決していただきました。保険を解約せずに済み、関与先企業からも非常に喜ばれました。
北原 TKC会員の先生方と一丸となった企業支援ができたのは我々にとっても光栄なことでした。
──東日本大震災の時も現地に救援物資を届けてくれたり事務所が再建できるようサポートいただきました。危機において血縁的集団の一員としてサポートしていただける心強いパートナーです。
コロナ禍となって、仕事や会合等をリモートで実施するようになりましたが、TKC会員事務所とのコミュニケーションや保険手続きに影響はありましたか。
北原 当社ではコロナ禍前からリモートで勤務できる環境の整備や非対面手続きの準備を始めていたので、比較的スムーズに対応できました。2017年には、テレワークへの先進的な取り組みをしているとして総務大臣賞をいただきました。翌2018年には日本テレワーク協会から大賞を、2019年には厚生労働大臣賞もいただきました。
坂本 先進的に取り組まれていたのですね。
北原「保険金等の適切かつ確実なお支払い」という生命保険会社の基本的使命は危機の時にこそ果たさねばなりませんから、リモートでも仕事を前進させる環境整備がコロナ禍において役に立ちました。
坂本 我々も、コロナ禍でWebも活用した巡回監査へと方法が変わりましたが、違和感なく踏み出すことができました。これまでの自計化推進への取り組みは、DX時代における会計事務所の経営基盤作りだったともいえます。
巡回監査では、関与先の現場に行かなければ確認できないことと、課税区分や一部証憑の突合など巡回監査支援システム等の活用で「事前確認」できることがあります。ここで留意すべきは、飯塚毅博士が説かれたように、巡回監査は毎月必ず1回以上関与先企業の現場に出向いて全取引の実態を法的かつ会計的に確かめ、指導することです。つまり巡回監査で何をするかが問われているのであり、巡回監査に行くこと自体を目的化してしまってはなりません。さらに飯塚博士は、中小企業は内部統制が確立しておらず、あっても脆弱なため、「巡回監査によって経営者の心にベルトをかける」ことの必要性も強く訴えておられました。
コロナ禍においてそうした巡回監査の本質があらためて明確になりましたが、TKC会員、職員の皆さんが「事前確認」も行いながら、「手段の目的化」を避け、巡回監査を実施しているのは見事だと思います。
北原 テクノロジーはどんどん進化し、リアルとバーチャルの境も限りなくなくなっていくと思いますが、人と人とのつながりの重要性に変わりはありませんね。企業防衛制度においても、事故が起きた時のご家族の苦しみや解決策など、リアルでないと汲み取れないニーズ、伝わらない想いがあると思います。当社においても、「保険指導業務の支援」についてリモートの活用とともにしっかりと本質を見据えて汗をかき、中小企業、会員事務所の皆さまの期待に応えていきたいと思います。
創業120周年を機に「健康経営」推進などで中小企業の存続により貢献したい
──大同生命さんは今年創業120周年を迎えられます。どのような事業を展開されるのでしょうか。
北原 コンセプトを「サステナブルな社会の実現に向けて」とし、中小企業の存続を支援する取り組みを行います。
取り組みの一つである健康支援・健康経営支援について、例えば中小企業の場合、がん検診を従業員が受けているのは全体の4割と大企業と大きな差があります。企業防衛制度で扱う従来からの定期保険は、経営者の不測の事態などによる、いわば企業の「不慮の死」に対応するという趣旨のものですが、健康経営は中小企業が「衰弱死」に向かわないための予防をしていくという趣旨です。
日本全体の雇用の7割は中小企業です。120周年を機に、中小企業の事業継続性という観点からも企業防衛の中に健康経営という概念を取り入れて中小企業を支え、いささかなりとも社会への貢献につなげたいと思います。
──最後にお二人から、提携の意義を踏まえて今後の展望についてお話しいただけますか。
北原 企業防衛制度の仕組みの原点は、飯塚毅初代会長がご自身の体験をもとに策定された「TKC企業防衛制度導入の8原則」であり、約50年の時を経てもその価値は不変です。そして関与先企業と深い信頼で結ばれ、リスクを適正に評価、身内のように心配し、助言ができるのはTKC会員の先生方なればこそです。
理念を共有し「同志的結合体の一員」として共に中小企業をお守りできるパートナーとして、TKC全国会との提携関係を我々は今後も大切にし、同じ目標に向かって歩んでまいりたいと思います。
坂本 かつてTKC会員の中でも、保険指導に熱心に取り組む会員と、書面添付に熱心に取り組む会員との間にどこか垣根があるような時期もありました。ところがいま、保険指導を行う会員は書面添付を実践し、書面添付を行う会員は保険指導を実践しています。どちらも中小企業の存続・発展を願うからこそであり、その状況をうれしく思います。これこそが飯塚毅博士が求めていた基本業務の実践であり、理想的なTKC会計人に近づいてきていると思います。
現在、金成祐行企業防衛制度推進委員長のもと、理念に基づく保険指導の実践が推し進められています。理念を同じくする最良のパートナーである大同生命と共に、関与先完全防衛に向けたミッションを果たしていきたいと思います。
──この提携関係が次の50年に向けて一層発展するように、我々TKC会員は取り組んでいきたいと思います。本日はありがとうございました。
(構成/TKC出版 清水公一朗)
北原 睦朗(きたはら・むつろう)氏
1959年11月生まれ。東京都出身。82年中央大学経済学部卒業後、大同生命入社。企画部長、代表取締役副社長等を経て、2021年4月より代表取締役社長。
(会報『TKC』令和4年4月号より転載)