対談・講演

50年後、100年後も企業防衛制度を継続し、ともに関与先を防衛しよう!

大同生命保険株式会社代表取締役社長 工藤稔氏に聞く

とき:平成29年9月28日(木) ところ:TKC東京本社

TKC全国会の提携企業の中でも、大同生命保険との提携の歴史は40年を超える。その歴史を振り返りながら、両者の強固な提携関係や今後の取り組みなどについて、大同生命保険工藤稔社長とTKC全国会坂本孝司会長が対談した。

◎司会 会報「TKC」編集長 石岡正行

巻頭対談

飯塚毅全国会初代会長の言葉が仕事をしていく支えとなった

 ──本日はTKC全国会の長年の提携企業である大同生命保険の工藤稔社長と坂本孝司会長に対談をしていただきます。
 まずお二人の企業防衛制度との出会いについてお聞かせください。

 坂本 私が開業したのは昭和56年、25歳のときで、すぐにTKCに入会しました。入会時に巡回監査などの話を聞くのですが、その時に企業防衛制度の説明も受けて、なるほどなと思ったわけです。ただ内心では、お客さまに「金儲けのために保険を売っているのか」と言われないかな──という不安がちょっとよぎったのです。だから正直な話、なかなか行動がついていかない時期がありましたね。
 ただ頭では分かっていました。特に「企業防衛制度導入の8原則」にもなっている、飯塚先生が説かれた「肉親の一人として、親身になって助言・指導すること」というのは非常に腑に落ちました。

大同生命保険株式会社代表取締役社長 工藤稔氏

大同生命保険株式会社
代表取締役社長 工藤 稔

 工藤 私は昭和53年に大同生命に入社して、昭和58年に初めてTKCの先生方と関わる仕事をしました。それまでは本社の事務を2年間、支社の事務を2年間やっていたのです。
 初めて会員事務所に訪問させていただいた時は「なぜ自分たちが保険屋みたいなことをしないといけないのか」とおっしゃる先生がまだ多かったのは事実です。保険代理店登録の話を100回すると97回は断られました(笑)。
 そのような中でも私がこの仕事をやり続けなければならないと思った原点は、飯塚毅先生の言葉です。奈良県で行われた秋期大学に飯塚先生が来られていて、われわれ大同生命のスタッフに対して、「君たちには大変努力をしてもらって、苦労をかけて申し訳ない」と言葉をかけていただいたのです。
 最初はどのような意味か分かりませんでした。先生方に保険代理店になっていただき保険の募集をしていただくための苦労は、社員として当たり前のことと思っていましたから。しかし、飯塚先生はそうではありませんでした。「自分は『保険指導が会計事務所の正当業務である』としっかり言っているが、なかなか税理士は物分かりが悪いのだ」と。「保険指導がなぜ必要かということは自分がこれからも言い続けるけれど、君たちもしっかりやってくれ」と。こう言われたのです。
 私にとって、会社の上司からではなく、当代一流の税理士の先生からそう言っていただいたことは、大変勇気づけられることでした。

 坂本 お互いに飯塚先生の言葉にインパクトを受けていたということですね。

 工藤 本当にインパクトがありました。われわれの仕事は、関与先企業を守ることも含めて、極めて崇高な行動であり、それを先生方とともにやるのだと思えました。ですから何度断られても、いずれ先生方に分かっていただけると、ご提案を繰り返しました。その結果、私が担当して代理店になっていただいた会員先生は相当数いらっしゃいます。それは飯塚先生の思いを教えていただいたことで、自分の仕事の重要さを学んだからです。

社長にとって耳障りな話をする勇気を持つことが保険指導の出発点

 ──坂本会長が職業会計人として、税務・会計の業務だけでなく、保険指導をしていて良かったと思われた経験をご紹介いただけますか。

TKC全国会会長 坂本孝司

TKC全国会会長 坂本孝司

 坂本 36年間事務所経営をしてきて、今になってみると企業防衛制度の保有契約が475億円ぐらいあります。そういう意味ではよくここまで来たと思います。コツコツとやり続けることで、関与先の完全防衛に近づくことは確かです。
 36年も会計事務所を経営していれば、関与先の社長が現職の間に亡くなられるという事態は何回もありました。でも、それによってその会社が傾いたということは、1件もないのです。
 それは、関与先の社長が亡くなられてもきちんと保険金が払われ、運転資金が回り、借入金もきれいにできたということですね。それによって遺族や社員が右往左往したり、路頭に迷ったりせずに済んだというのは、企業防衛制度で完璧に守っていたということです。そのことを考えると、保険指導をして改めて良かったと思います。

 工藤 坂本先生の事務所は素晴らしい実績を挙げられていますが、要因はどこにあったのでしょうか。

 坂本 事務所経営を数年やって気づいたのは、言いにくい話、社長にとって耳障りな話を言う勇気が出てきたときが、本当のお客さまづくりの始まりだということです。
 事務所経営の初めは弱気だから、ちょっとお客さまのご意向を伺うような感じがあるのです。それが、「社長ちょっといいづらいことなんですけども、社長のところは記帳がだらしないですよ。ご自分で最低限の記帳をされないと、自分の会社を守れませんし、数字も分かりませんよ」とか、「社長、もし亡くなられたときにどうなるんですか。借金まみれでご家族が路頭に迷いますよ」と、言いづらいことを言えた瞬間から保険指導ができるようになったんです。親身の相談相手というのは、社長が喜ぶ言葉だけじゃなくて耳障りな言葉を、言いづらくても社長のために言えるかどうか。そこに気づいたことが転換点だと思いますね。
 それができるようになると指導的あるいは助言的な業務が展開できる。これは、巡回監査の実行とか、自計化の推進、企業防衛制度の推進も、同じ心のスタンスだろうと、ある時点で分かりました。

 ──工藤社長が企業防衛制度の発展をこれまで見てきて、印象に残る点は何でしょうか。

 工藤 最も記憶に残る話というと事業本部長の時の「ミッション16兆」です。四半世紀の悲願である保有16兆円をついに達成した時に、もちろん大同生命の社員は喜んでいましたが、最も喜んでいただいたのがTKCの先生方。そして株式会社TKCのSCGサービスセンターの皆さまも一緒に、まるで高校野球で優勝したときのように、みんなで喜びを分かち合ったというのが印象に残っています。
 もちろん16兆というのは最終到達地点ではなく、完全防衛という目的への一里塚ですけれども、そういうことを一緒に喜ぶことができる関係を、先生方、そして株式会社TKCの皆さま方と持てたというのがうれしかったですね。

 坂本 ミッション16兆は確かに大変な盛り上がりでした。飯塚先生が16兆円の目標を掲げたときのことはよく覚えていて、すごい数字をおっしゃると思った記憶があります。それにしても長い道のりでしたね。

 工藤 長かったですね。経済情勢の影響で目標から遠ざかる時期もありましたし。

 坂本 でも道のりが長くて、流した汗が多ければ多いほど感動もあったし、同志というつながりが強くなりましたね。本当に見事な達成でした。

税務・会計・保証業務が重なったところに企業防衛がある

 ──保険指導を会計事務所の業務に取り入れられた飯塚毅全国会初代会長の発想を振り返ってどのように感じますか。

 坂本 企業防衛制度の立ち上げまでには飯塚先生の大変なご苦労がありました。まず、昭和38年に飯塚先生がアメリカ公認会計士協会から発行されている『成功する会計事務所のハンドブック』をベースにロジックをまとめて、「保険指導は会計事務所の正当業務である」と内外に宣明したというのが、素晴らしいことだと思います。私もそのベースとなった原書を見てみました。そうしたら、アメリカでは会計事務所の正当業務として生保・損保の保険指導が入っているのですが、代理店業務ではないのです。要は、お客さまが保険に入るときに、適正な保障を指導しなさい、フィーは関与先からいただきなさいというロジックなのです。
 ところが飯塚先生の展開は、一歩踏み込んで、代理店登録をさせしめて、企業防衛を進めるための体制づくりをされた。ビジネスモデルとしては完璧ですよね。そこがすごいなと思います。
 今で考えると、「税務・会計・保証・経営助言」という税理士の4大業務のうち、企業防衛は間違いなく経営助言に入ります。しかもメインです。リスクを金額として算定する際は、借入金等々からいろいろと計算をして会計的に導き出します。また、税務の知識も必要です。リスクが2億円あったとして、事故があって保険金が2億円入ってきても、半分ぐらい法人税を払うことになったら不足しますよね。個別の税務診断、税務指導が入ってくるわけです。次に正しい数値じゃないとリスクが判断できないので、保証業務も必要となる。しっかりした決算書・数値の下で計算する。だから税務と会計と保証業務が重なったところにこの企業防衛があるという話なのです。
 特に税務については、日本では税理士の無償独占業務ですから、一般の保険代理店は税務の決定的なアドバイスはできないわけです。つまり、日本では事業者に対する保険指導は税理士ならではのもの、となるわけです。こういう自信と責任を持ってほしいと思っています。

業務提携の前史(「(株)TKC50周年記念誌」より)
 大同生命保険とTKC全国会との業務提携の開始は1974(昭和49)年ですが、企業防衛制度推進委員会が設置された1976(昭和51)年から数えると今年(2016年)は発足40周年となります。
 1959(昭和34)年、飯塚毅博士は当時の大同生命保険宇都宮支社長の今井恒夫氏から生命保険の取り扱いを依頼されました。その頃は定期保険ではなく養老保険が中心で、2年ほどは実績もないままに過ぎましたが、3年目に一気に取りかかり、わずか1年で約50億円の契約(現在の「企業防衛制度」Rタイプに換算すると約500億円に相当するでしょうか)を推進しました。その驚くべき実績から、当時の三木助九郎社長との面識を得、飯塚博士は大同生命保険の顧問に就任したのです。
 しかし、その後、1963(昭和38)年に勃発した「飯塚事件」の影響もあって顧問を辞し、同社との接触は事件の終焉まで途切れることとなりました。

 工藤 生命保険は、標準保障額の算定を含めて、加入するときも大切ですが、加入後の期間も長いものです。ケースによれば30年、40年となります。当然のことながら、一度加入したらそれで十分ということではありません。特に企業はいい時もあればそうでないときもあります。標準保障額一つとってみても、当然変化していきます。
 実は関与先企業にとって最も大切なのは、いついかなるときも保険の管理を含めてきっちりと寄り添ってくれる人がいること。それを考えたときに、税理士の先生方は、最も身近に関与先企業とともに歩んでいかれている。まさに最適な保険指導ができるお立場だと思います。

対談風景

「8原則」は理想ではなく実践原理いつも自分に問い返すべき

 ──TKC会計人の保険指導の特長は「企業防衛制度導入の8原則」に集約されていると思います。この8原則についてのお考えをお聞かせください。

TKC企業防衛制度導入の8原則
【第1原則】肉親の一人としての助言・指導
【第2原則】純粋かつ断固たる指導者の態度
【第3原則】会計税務・経営の指導者の態度
【第4原則】満腹作戦の実施
【第5原則】適正額算出による指導
【第6原則】議事録の作成
【第7原則】会計人としての保険指導
【第8原則】関与先企業に最も有利な保険の指導

 坂本 この8原則は飯塚先生が考えられただけあって、一つ一つに深い意味があります。第1原則が「肉親の一人としての助言・指導」、親身の相談相手として言うのだと。第2原則が「純粋かつ断固たる指導者の態度」とあります。この辺がとくに大事で、お客さまに「そんなことを言うなら先生、もう税務顧問の契約も考えさせてもらいますよ」などと言われても構わない、本当のことを言うんだというぐらいの気持ちで臨むことが基本だと思います。
「8原則」は単なる理想ではなくて、現実の仕事としてそこまでしなさいという実践原理です。人間だからちょっと及び腰になることもあるとしても、職員も含めて、常に「いや、それではいかん」と自分に問い返しながら業務に取り組んでいくべきだといつも思っています。

 工藤 先ほど坂本先生が保険指導の転換点の話をされましたよね。経営者が喜ぶ話はいいけれど、厳しい話はなかなか言えない。しかし、それが言えるようになって初めて企業防衛も進んでいったと。私もその通りだと思うのです。私自身、耳当たりの良い話よりも、厳しく言われたこと、それも自ら気づかせるために教えてくれた言葉は、やはり心に残る。そういう姿勢を保険指導の8原則の中で飯塚先生が示されたのは、大変素晴らしいことだと思います。

飯塚容晟TKC元副社長と河原四郎大同生命元社長が制度を支えた大功労者

会報「TKC」編集長 石岡正行

会報「TKC」編集長 石岡正行

 ──40年を超える企業防衛制度の歴史の中で、支えてきた多くの力があったと思いますが、振り返っていかがでしょうか。

 坂本 これは株式会社TKCの創設・発展の経緯にも似ているところがあると思いますが、最初の立ち上げの理念や社会的使命といったコンセプトは飯塚先生が作られる。それを具体化して広めるという段階になったときには別の立役者がいる。株式会社TKCでいえば飯塚真玄現名誉会長ですし、企業防衛制度でいえば先日亡くなられた飯塚容晟(かずあき)元副社長と、大同生命の当時窓口となった河原四郎さんです。このお二人が理念をしっかり受け止めて体制を作り、制度として広めた功績が大きいのではないでしょうか。

 工藤 飯塚容晟元副社長は当時、企業防衛制度推進委員会には必ずご出席いただいていました。そこで容晟元副社長に果たしていただいた役割が、まさに委員会の歴史を支えてきたのだと思います。当然のことながら、委員会では先生方からいろいろな意見が出てきて議論が起こります。そんなときに、原点に立ち返り「飯塚毅名誉会長はこういう思いでこれを作られました。その視点で考えられたらどうですか」というようなアドバイスをいただきました。

 坂本 基本に戻るのですね。

 工藤 そうなのです。飯塚毅名誉会長ならおそらくこう言われるのではないかということを言われていた。そうすると委員会の先生方も納得され、「いろいろな考え方があるけれども、原点から考えればこうじゃないか」という場面がたくさんありました。
 ですから飯塚毅先生から当社の元社長である河原が要請を受け、企業防衛制度が誕生した後、それを支えるさまざまなインフラが整備されたのは、容晟元副社長のご努力によるところが大きいと思っています。

 坂本 企業防衛制度を委員会で推進したということも大きかったですね。委員会のメンバーはほとんどボランティアのようなものなので、基本的には志も高く、なおかつ地元の地域会から選ばれますから、そういう意味では一目置かれた方が企業防衛委員長として出てきます。そういう志のある人が20名集まって真剣に議論をし、なおかつ実務を踏まえると。この歴史というのはすごく大きいですね。TKCの各委員会は、企業防衛制度推進委員会に限らず素晴らしいです。特に企業防衛制度推進委員会につきましては大同生命さんのサポートも本当に手厚く、強力なエンジンとして押してくださるので、力強い委員会の一つであることは間違いないですね。

TKC会員や関与先のニーズに適って進化する企業防衛制度

 ──改めてTKC全国会と大同生命保険の提携関係についてどのようにお考えかお聞かせいただけますか。

 坂本 大同生命さんは生命保険業界においても健全性はトップクラスです。そういう会社の社長さんが「私どもの会社はずっとTKC全国会に寄り添っていきます」と言ってくれること自体が奇跡に近い。こんなふうにいろいろな立場を超えたパートナーが他にあるでしょうか。会社をあげて理念も共有しながら寄り添ってくれるというこの関係をTKC会員はしっかりと理解していただきたいと思います。

TKC担当者の行動指針

大同生命社員(TKC担当者)の行動指針

 工藤 大同生命ではTKCの先生方を担当させていただくために、これはしっかり守っていこうという「TKC担当者の行動指針」というものを定めています。TKC全国会で作っておられる「行動基準書」や「8原則」を踏まえ、われわれがすべきことは何か、を考えて作り上げました。
 また、企業防衛制度の新しい商品やサービスは、先生方からのご要望や、関与先企業にとって助かるといったご意見を参考に作ったものがたくさんあります。例えば、「経理処理案内サービス」というものがありまして、先生方にとって絶対に間違うことのできない既契約者さまの保険料の経理処理について、当社からも年1回、「こうなっています」とお届けしています。保険金を分割で受け取ることのできる制度も、実はTKCの先生から「会社を守るという観点から考えると一時金以外での受取方法も必要だ」とご意見をいただいて作らせていただいたものです。
 今でもいくつかのご意見をいただいていて、なかなかすぐには実現できなくて申し訳ないと思うケースもあるのですが、先生方が関与先企業にとって良いことだとおっしゃることについては、しっかりとお応えしていきたいと思います。これが大同生命の使命の一つとして、飯塚先生がご期待されていたことではないかと考えるからです。

 坂本 会計人の中には、生命保険会社1社としかお付き合いがないことに否定的な方もいますが、このような関係は他にできないと思うのです。企業防衛制度推進委員会の特別顧問である吉田雄一先生が「なぜ大同生命・企業防衛制度なのか7つの理由」というものをリーフレットにまとめてくれていますが、あれを読むと腑に落ちるはずです。

「なぜ大同生命・企業防衛制度なのか」7つの理由(抜粋)
1. 提携の経緯と理念の共有
2. TKC会員や関与先のニーズに適った商品を提供してくれる会社
3. TKC専担組織による充実した支援体制
4. 関与先の立場に立った、スムーズな保険金等の支払
5. TKC企業防衛データベースの提供
6. 企業防衛制度推進実績に基づく地域会費による地域会活動への貢献
7. 保険会社としての財務の健全性

 工藤 代理店としていくつもの保険会社とお付き合いするというのも一つの考え方であるとは思います。しかし、生命保険は長期にわたるものですから、何十年後も続くような体制を作れるかという話だと思うのですね。私どもは、今までしてきたように、例えば30年後も私の後輩たちがしっかりと同じ体制を守るということをお約束しますし、30年後の社長が30年後の全国会会長と同じように対談させていただいていたら、これほどうれしいことはないでしょうね。

 坂本 対談していますよ、きっと(笑)。

企業防衛は経営助言の本丸であり実績の伸びは総合力の強化とイコール

 ──全国会創設50周年に向けた第2ステージも半ばに差し掛かっています。その中での企業防衛制度の位置付けと、戦略目標「企業防衛加入関与先30万社」「保有20兆円目標」の意義について、お話しください。

企業防衛制度の戦略目標と活動のイメージ

 坂本 企業防衛の目標は、第1ステージでは「企業防衛加入関与先30万社」だけでした。それで企業防衛制度推進委員会の中からもいろいろと建設的な意見が出て、私も相談にあずかって、結果的には法人と経営者を含めた個人の「トータル保障」に重点を置くという方針にまとまりました。トータルのフル保障をするとなった時に、横を加入件数、縦を保障額と捉え、掛け合わせた面積を保有額としてその面積を20兆円とすることを目指そうという議論が出てまいりました。
 それで第2ステージは30万社を目標に、なおかつ20兆円にも向かっていこうと。二つのものを掲げて非常に分かりやすい目標となりました。
 そして企業防衛は経営指導、経営助言の本丸だという位置づけをしっかりしようと。企業防衛は税務・会計・保証業務の集大成であって、いわば総合力の発揮だとすれば、企業防衛を強力に推進できる事務所は、TKC会員の中でも総合力を身に付けた事務所、あるいはそこを目指す事務所という位置づけになります。今後も中心業務と位置づけて、企業防衛の数字が伸びることイコール総合力の強化だというように考えていただきたいと思っています。

 工藤 いま坂本会長が縦・横・面積の話をされましたが、まさにその通りです。これを別の言葉で言うならば、たとえどんなに素晴らしいことであったとしても、先生方の関与先企業の一部だけにやっています──というのでは、これは本物ではないと思うのです。
 逆に、すべての関与先企業が加入していても、もしもの時に役に立たない──つまり、保障額として1億円必要なのに、残念ながら3千万円しか入っていなくて、この3千万円がほとんど役に立たなかったということでは、これも意味がない。やはり大切な関与先企業をお守りするという観点では、より多くの関与先企業に適切な金額の保険をお届けするということをしていかなければならないと思っています。
 それを支援するために大同生命としてはどういうことができるのかという課題に、いつも向き合っています。10月下旬からはJタイプやTタイプの引き受け限度額を1億円から2億円に拡大する予定です。
 また、委員会で新たに打ち出していただいた施策で素晴らしいと思ったのは、企業防衛データベースとOMSを介した連携による「企業防衛エキスパート・チェック」の機能です。関与先企業の売り上げが伸びたとか、借入金が増えたとか、企業防衛として新たな視点で提案あるいは見直しをする必要があるときには、プッシュ機能で事務所の皆さまにお知らせできるようになるということです。

 坂本 TKCのシステム力と会員の発想がリンクして、非常にいいことですね。

 工藤 これは、まさに株式会社TKCと大同生命が「企業防衛データベース」というシステムを通じて長年にわたりコラボしてきたからこそ実現できたものだと考えています。
 これからは、少し増額の保険指導をしなくてはいけないところを、うっかり忘れていたとか、あるいは経営者が代替わりしたので次の2代目さんの保障も十分か確認しなければいけないとかが、漏れたり欠けたりすることなくできるということです。
 事務所の巡回監査担当者の皆さまが保険指導をする際に、関与先企業にご説明しやすく、そして納得していただきやすい。こういうものを今後も実践していくことが「企業防衛加入関与先30万社」「保有20兆円目標」の目標達成につながっていくと思っています。責任を持ってしっかり取り組んでいくと明言いたします。

これからもより強固な連携関係を保ち提携50周年を華やかに迎えよう

 ──大同生命さんは今年、創業115周年を迎えられましたが、現在力を入れている取り組みについてご紹介いただけますか。

 工藤 いくつかありますが、「大同生命サーベイ」について少しご紹介させていただきたいと思います。大同生命サーベイというのは、毎月いろいろな項目について中小企業の経営者にフェイストゥフェイスでアンケートをして、どんなことを考えておられるかということを聞いているものです。毎月4000名以上の経営者の方々にご協力いただいています。アンケート結果は地区別や業種別にもできるようになっており、先生方もご自身の関与先と比較して見ることができますので、参考にしていただければと思います。
 また、坂本先生には神戸大学の家森信善教授(金融庁参与)をご紹介いただきましたが、家森教授もこの大同生命サーベイにご興味を持っていただき、より活かしていけるのでは、というお話もされていました。
 もう一つは「健康経営」です。生命保険会社は、もしものことがあったとき、あるいは入院したときに保険金をお支払いすることが中心的な業務であるのはもちろんです。そこからもう一歩進んで、ご加入いただいたお客さまに少しでも長く健康寿命を全うしていただこうということで、ウェアラブル端末で毎日の歩行数や1日のカロリー消費量、眠りの質、脈拍などの管理ができるプログラムを提供しています。まだ実施し始めたばかりですが、これが3年、5年となって、関与先企業で働く方々の健康状態が良好であるという話になれば、先生方にも喜んでいただけるだろうと思って取り組んでいます。

──最後に、坂本会長からこれからの展望についてお聞かせください。

 坂本 先ほども少し触れましたが、税理士の4大業務の中の「経営助言」におけるコアは企業防衛制度の推進です。これ以上のものはないと思っています。AI等々、時代の変化の波は今後も何度も来るでしょうけれども、これをしっかりやり続けることが、中小企業のためであり、日本のためであり、同時に職業会計人の職域防衛・運命打開にも直結します。
 各会員事務所におかれましても、サポートしていただく大事なパートナーとして、大同生命の社員さんとより深いお付き合いをして、チームプレイでさらに中小企業支援をしていただきたいと希望しています。
 この提携関係も7年後は50周年を迎えるわけですが、今の勢いのまま、より強固な連携関係を保っていただき、50周年を華やかに迎えたいと思っています。希望はその次の100周年も、より強い絆で日本の中小企業とそれに関連する方々を完全に保障しながらサポートしていることです。これからも手を携えて、ご協力いただきながら中小企業を守っていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いします。

 工藤 多くの先生に「われわれの事務所には大同生命のスタッフがついている」と言っていただけるように、これからも全力でTKC会員事務所および関与先企業をサポートさせていただきます。こちらこそよろしくお願いいたします。

工藤稔(くどう・みのる)氏

昭和30年生まれ。昭和53年関西学院大学商学部卒業後、大同生命保険入社。神奈川TKC企業保険支社長、商品部長、企画部長、業務部長、常務執行役員事業本部長等を経て、平成21年取締役常務執行役員に就任。平成23年取締役専務執行役員、平成26年代表取締役副社長となり、平成27年4月より代表取締役社長。

(構成/TKC出版 蒔田鉄兵)

(会報『TKC』平成29年11月号より転載)