対談・講演

日本の会計制度の課題と展望──企業会計原則は、中小会計要領に反映され、日本の会計制度をリードしている

企業会計審議会会長 関西学院大学名誉教授 平松一夫氏に聞く

とき:平成29年6月6日(火) ところ:TKC大阪南SCGサービスセンター

日本会計研究学会会長や世界会計学会会長などの要職を歴任し、今年、企業会計審議会会長に就任した、平松一夫関西学院大学名誉教授は、国際会計研究の第一人者として知られている。その平松教授をTKC全国会坂本孝司会長が訪ね、日本の会計制度の展望や中小会計要領の意義、決算書の信頼性などをテーマに語り合った。

◎進行 TKC全国政経研究会事務局長 内薗寛仁

巻頭対談

日本が世界から取り残されないよう企業会計基準委員会の発足に尽力

 坂本 今日は念願叶って、平松先生とこうして久しぶりにお会いすることができました。この2月には、金融庁の企業会計審議会会長にご就任され、おめでとうございます。平松先生はこれまでも、国際会計研究の第一人者として実に多くの要職を務めてこられたわけですが、ご経歴の中で、特に印象に残っていることを教えていただけますか。

企業会計審議会会長 関西学院大学名誉教授 平松一夫

企業会計審議会会長
関西学院大学名誉教授
平松一夫

 平松 若いころから日本会計研究学会(JAA)と国際会計研究学会(JAIAS)を中心に、財務会計や国際会計を研究してきました。日本会計研究学会は、ご承知のとおり日本で一番大きな会計の学会ですけれども、図らずも会長になりました(2009年~2012年)。
 そのときには、とりわけ韓国や台湾との交流に力を入れました。というのは、日本の会計研究は、教育も含めてあまりにも国内指向が強い傾向にありました。もちろん個々の学者は、欧米での学会へも参加していましたが、近隣のアジアの重要性を認識しているとはいえない状況でした。そこで、若い研究者に日本とは違うアジアの歩みをもっと見て知ってほしいと思い、交流協定を結びました。今では、日本の多くの若手研究者がアジアで研究発表をするなど、活躍しています。

 坂本 世界会計学会(IAAER)の会長に就任されたのは、その後になりますか。

 平松 2013年から約2年、会長を務めました。この学会は、文字どおり世界の会計学会を代表しており、次代を担う途上国の有望な若手研究者の育成にも取り組んでいます。実は、この世界会計学会の誕生には日本が大きく貢献していたのです。
 1987年に、染谷恭次郎先生(故人、元TKC全国会最高顧問)を中心に大勢の先生方が結束して、京都の国際会議場で世界会計学会が大々的に行われました。当時、日本会計研究学会が日本側の主催者を務めましたが、日本会計研究学会が単独の主催では、国際会議として日本学術会議(わが国の人文・社会科学、自然科学全分野の科学者の意見をまとめ、国内外に対して発信する日本の代表機関)の支援を得ることができませんでした。そこで、日本が世界会計学会の創設を働きかけ、1984年に実際に創設されました。ですから本来は、もっと日本人が世界会計学会で活躍してほしいと思っています。

 坂本 企業会計基準委員会(ASBJ)の発足にもご尽力されていますね。

 平松 そうですね。2001年に企業会計基準委員会ができてからも、理事や委員等を仰せつかって、ずっと関わってきました。ご承知のとおり、以前は、企業会計審議会で会計基準を作っていましたが、国際的な流れの中、パブリックではなくプライベートセクターで、常勤委員を要する新しい会計基準設定主体の設立が日本にも求められました。こうした状況のもとで、日本が世界の動きから取り残されないように、日本公認会計士協会や金融庁(当時は大蔵省)に行って説明したり、論文発表したりしました。徐々にそれらの活動が広まり、理解されるようになって、企業会計基準委員会の発足がかろうじて間に合いました。
 国際会計基準委員会(IASC)が国際会計基準審議会(IASB)に改組されるまでの約2年半、戦略作業部会のメンバーとしてその議論に参加していましたので、日本の対応が遅れないような貢献ができてよかったです。

 坂本 まさに、日本の会計制度の方向性を牽引する中心的な役割を担ってこられたのですね。

会計学者としての歩み(情報会計)は、武田隆二先生とのご縁から始まった

TKC全国会会長 坂本孝司

TKC全国会会長 坂本孝司

 坂本 神戸大学名誉教授でTKC全国会第3代会長でもあった、武田隆二先生とのご縁をお聞かせください。

 平松 私が関西学院大学のドクターコースに進学したときに、武田先生が非常勤講師で大学へ来てくださり指導を受けたのが武田先生と私との出会いです。
 武田先生は非常勤講師であるのにもかかわらず、学生の合宿にも付き合ってくださいました。われわれも武田先生とそういう機会を持ちたいと思って、厚かましいお願いをしたところ、先生も「ぜひやろう」と、快くお引き受けになりました。合宿先では武田先生と卓球もしました。強かったですよ(笑)。

 坂本 武田先生はいつも優しいですが、いざ学生の指導に入ると顔つきが変わりましたよね。

 平松 私にも厳しい言葉がありました。ですが、研究への姿勢や理路整然とした考え方に学ぶべき点がたくさんありました。実際、先生が書かれる文章にしても、発言される内容にしても、私が言うのもおこがましいのですが、すべてが見事なのです。今でも、先生の研究者としての論理の厳密さ、博識で広い視野から問題を捉えて解決策を見いだしていく分析を、あのような高いレベルでできる方は他にいないと思っています。

 坂本 平松先生のご著書に『外部情報会計──会計代替案選択問題の研究』がありますが、若かりし頃の武田先生とのご縁が結びついているものなのですか。

 平松 そのとおりです。武田先生の論文の中に、外部情報会計という分類があります。それをそのまま書物のタイトルにさせていただきました。
 そうしたら、武田先生が書評を書いてくださることになりまして、私がまだ30代前半の若いときでしたから、それが怖かったですね(笑)。ですが、指摘すべきところをご指摘いただいた上で、思いやりの心と温かい目で見て書いてくださいました。
 今思うと、私のような、こんな恵まれた院生はいません。大学が「情報会計」の講座を用意してくれて、学内に指導教授がいないものだから、武田先生を非常勤で招いてきてくださって、その後、武田先生を引き継ぐ形で講座を担当するようになったわけです。
 会計学者としての私の歩みは、武田先生のそういう路線があって始まったといえますね。

 坂本 当時は、文部省の審査がものすごく厳しくて、めったなことでは大学で新設の講座が認可されなかったと聞きました。

 平松 権威ある武田先生だったからできたのでしょうね。

『正規の簿記の諸原則』から『会計制度の解明』につながる研究意義

 坂本 TKC全国会初代会長の飯塚毅先生のこともお聞きいたします。昭和59年5月に、飯塚先生の『正規の簿記の諸原則』(森山書店、昭和58年)が、日本会計研究学会「太田賞」(後の「太田黒澤賞」)を受賞しました。平松先生はどうご覧になりましたか。

 平松 飯塚毅先生の著作が「太田賞」を受賞したということは、すごいことなのです。「太田賞」というのは、年に1~2冊しか受賞できない、学会としては最も権威のある賞です。それを、実務家である飯塚先生が獲得するということは、その著書には非常に大きな意味があると理解していました。

 坂本 飯塚先生の『正規の簿記の諸原則』は、日本会計研究学会の機関誌『会計』に、「正規の簿記・帳簿の証拠性──この国民的誤解の訂正を願う──」と題して、3年間(昭和54年~57年)にわたって連載された論文を収録したものです。
 その背景は、東大の中村常次郎博士が、飯塚先生による『TKC会報』への論文をご覧になって、「君の正規の簿記の諸原則論を否定できる人は誰もいないよ。今から黒澤清先生に頼んで、機関誌『会計』に連載してもらいなさい」と言って、連載が始まったそうです。

 平松 黒澤清先生は、超一流の学者で、武田先生の恩師でもありますから、その黒澤先生の許可がないと、機関誌『会計』には載せられないということがあったかもしれませんね。
 後に、坂本先生が著書『会計制度の解明──ドイツとの比較によるわが国のグランドデザイン』(中央経済社、2011年)で、「太田黒澤賞」を受賞されましたが、これは飯塚先生の研究に匹敵する評価だと思います。坂本先生の長年にわたる理論と実務の両方を兼ね備えた研究業績が理解されたのだと思います。

 坂本 光栄です。そのときは、平松先生が日本会計研究学会の会長でいらっしゃって、授賞式では壇上で平松先生から直接表彰されて、とてもうれしかったのを覚えております。

 平松 そうでしたね。昔から錚々たる方々が審査員を務めているので、「太田黒澤賞」を受賞するのは、そう簡単なことではありません。

 坂本 私の本は、飯塚先生の『正規の簿記の諸原則』論を現代によみがえらせようと思って論証を深めたものです。飯塚先生が学際的な研究をされたことは、特に重要だと感じています。
 私としては、会計制度は、会計学や金商法だけではなくて、会社法、商法、租税法などのすべてに及びますから、今日にいたっても学際研究が足りないところに陥っているのではないかと危惧しています。

 平松 会計学の領域で、実務で最も影響のある税の部分の研究ができていないということですね。そういう観点で見ると、会計学者で法人税法のことを研究された方がいらっしゃる。それが武田隆二先生です。先生には、『法人税法精説』というご著書がありますからね。
 恥ずかしながら、私も修士論文で法人税法のことを書きました。

 坂本 そうだったんですか。実は来年は、飯塚毅先生の生誕百年にあたります。これを記念して、『正規の簿記の諸原則』の復刻と併せて、私や河崎照行甲南大学教授、飯塚真玄TKC名誉会長など、数名が執筆者となって、論文集を発行する予定です。私はその中で、『正規の簿記の諸原則』の歴史的意義や、帳簿の証拠力等を論じたいと考えています。

会計学の第一級の講師陣によるTKC・関西学院大学新月プログラム

 坂本 早いもので、TKC・関西学院大学新月プログラム(税理士のための会計講座)は今年で14期目を迎えます。会計の最新動向を学び、実務に活かすことを目的としています。
 その経緯ですが、当時、TKC会員への租税法の再教育を目的として、TKC・中央大学クレセントアカデミーがすでに開校されていました。関東だけでなく関西方面にも同様の場を作りたいということで、当時、TKC全国会中央研修所の所長だった加瀬昇一先生から相談を受けました。それで関学出身の露口六彦先生(TKC南近畿会会長)に聞いてみたところ「よし、分かった」と。そして、平松先生にお願いしてみようという話になりました。

 平松 露口さんは関学出身で、私が所属していたのと同じゼミの1年先輩です。坂本先生とも、新月プログラムの関わりの中で、知り合いましたね。

 坂本 私にとっても本当に運がよかったです。平松先生は商学部の重鎮で、学長もお務めだったのにもかかわらず、関学側の窓口をお引き受けくださいました。TKC・関西学院大学新月プログラムは、結果的には会計講座になって、それが大成功でした。初めは、租税法で話が進んでいました。

 平松 当初はカリキュラムを組む上でとても苦労しましたが、それが私の専門の会計コースになり、非常に調整しやすくなりました。

 坂本 実際に、講座を受けてみるとその凄さが分かるのですけれども、日本の会計学界の中で、第一級の先生方が講師をお務めくださっています。とてもありがたく思っているわけなのですが、これも平松先生のご人脈のおかげです。

 平松 いわば民間のプログラムに、よくもこれだけのメンバーにお集まりいただけたと、われながら感心しています。
 これもよかったなと思っているのは、数年前から中小企業会計の講座を設けることができたことです。武田隆二先生のお弟子さんである古賀智敏先生と河﨑照行先生は、坂本先生のご紹介があって講師にお招きすることができました。

 坂本 プログラムの最終日に行われる講義では、毎年、関学出身で、一流企業の経営者を講師としてお呼びしており、経営実務のテーマでお話ししていただいているのも特徴的ですね。

 平松 受講者の先生方が熱心なので、経営者の皆さんにも、とても喜んでいただいています。

 坂本 ちなみに、TKCの提携企業である大同生命保険株式会社の工藤稔社長も関学出身で、平松ゼミ第1期生と伺いました。これにも何かのご縁を感じます。

「IFRS出島論」を主張して、IFRS全面導入論と一線を画す

 坂本 平松先生は、IFRS導入の是非に際する論戦で、「IFRS出島論」をご主張され、IFRS全面導入論に対して一線を画されていました。われわれの数少ない応援者だったわけです。とても心強く思っておりました。

 平松 日本として守らなければいけないものがある。中小企業の会計についてもきちんと守っていくということです。もし、すべてを取り入れていたら、日本はかなり厳しい立場に追い込まれていたはずです。したがって当面は、上場会社のうち、特に国際的に事業展開しておりIFRSに準拠した財務諸表の作成を必要とする企業にはIFRSにしっかり対応してもらって、これを「出島」として世界に堂々とアピールすればよいと考えていました。
 IFRSの強制適用は、国の企業の実態がそれに合うならいいですが、海外から持ってきたものをそのまま取り入れてもあまり意味がない。必要な企業だけがやればいいということです。逆に、国内で活動している多くの企業にとって、どうしてIFRSが必要なのかということです。

 坂本 結果的にアメリカが、IFRSの強制適用も任意適用も止めてしまいました。そうなった今は、それが当然のように思われていますけれども、平松先生のご主張は、当時は珍説のように言われていましたよね。

 平松 私は、日本では実務上、IFRSを個別財務諸表には適用できないと考えていましたので、「連結先行はあり得ない。連単分離しかない」と発言したところ、これも叩かれました(笑)。当然ながら、私も連単は一致することが望ましいと考えているのですが、現在の制度を前提とすれば、税法上の問題などがあってそれは現実的ではありません。

 坂本 先を見据えておられたのですね。日本には確定決算主義があるので、連単分離が必然であるということですよね。

 平松 そうです。結局、そういう方向で実務が動き出しているので、私としては満足しています。

企業実務から生まれた企業会計原則は中小基本要領に見事に反映されている

 坂本 実務家として研究者の先生方にお願いしたいのは、日本経済を支えている中小企業に向けて、さらに会計研究の光を当ててほしいということです。また、フィンテックや人工知能(AI)が進めば、簿記はもう必要ないという人もいますが、簿記の仕組みを知らないかぎり、会計の深い理解はできません。中小企業ほど簿記が大事です。
 そうした中で、企業会計原則に対して、ある種の新鮮さを感じています。真実性の原則や正規の簿記の原則などの考え方は、中小会計要領に色濃く反映されています。

 平松 先ほどお話ししましたが、今は大企業向けには、企業会計基準委員会(ASBJ)が会計基準を作っており、企業会計原則は空洞化しています。では、どうなったかというと、私も中小会計要領の中に、企業会計原則の考え方が、見事に活かされていると思っています。それはなぜか。企業会計原則は、戦後すぐに公表されたわけですけれども、これは理論から降りてきたもの(演繹的アプローチ)ではなく、企業実務から生まれてきたものを集約した、帰納的アプローチによるものだからです。
 そうすると、中小会計要領は、理論的な整合性ももちろん大事ですけれども、中小企業がそれを使うことができる、広い意味での会計基準でなければならない。その点で、私は企業会計原則が現在の時代にあって、中小会計要領の中に反映されて、日本の会計制度をリードしていると考えているわけです。

 坂本 とても勇気付けられるお言葉です。私たちは、あらゆる機会を通じて、中小会計要領の大合唱を行っていく覚悟です。

 平松 日本的な企業会計原則の未来像をどうするのかというのを、これからよく考えていく必要があります。やはり先達が残されたものを、われわれは海外からの影響でサッと消し去ってしまうのではなく、一度よく考えて対応すべきだと思います。

 坂本 私は今、弁証法に関心を持っています。はじめに企業会計原則があって、それに対する形で外国から概念フレームワークが入ってきました。結果的には、両方を融合したものが求められてくるように思います。
 それを示されるのが、平松先生が会長を務める企業会計審議会のお役目なのではないでしょうか。

 平松 私も同じことを考えていました。アウフヘーベンして、日本の考え方をまとめ、かつそれを英語に訳して、世界に向けて発信できるといいですね。

金融機関にとっても計算書類等に信頼性を付与する仕組みは重要

巻頭対談

 坂本 中小企業の決算書の信頼性の問題をお尋ねします。金融機関にとって、真面目な経営者や税理士の識別が付くような仕組み──例えば、ドイツのベシャイニグングのような仕組み──を作らなければいけないと思っています。日本には、税理士法第33条の2に規定する書面添付制度という、税理士による税務申告書の保証制度があります。中小企業において、税務と会計はリンクしていますから、当面は、この制度をもって、決算書のある程度の信頼性を担保するというところに現実的には持っていきたいと考えているのですが、いかがでしょう。

 平松 特に、地域金融機関は中小企業を育成しながら自らも発展しようとしています。ところがそのときに、信頼できない計算書類等が出てくると、融資枠を変えざるを得ません。ですから、単に計算書類等を作るのではなく、そこに対する信頼性を付与するような働きかけがあるのは、金融機関にとっても大事なことです。
 実際、TKCで力を入れている、巡回監査や書面添付の意義を金融機関がもっと広く認知するようになれば、いいと思います。現段階で、金融機関の融資審査の中で、書面添付のことが必ずしも認知されていないのではないですか。

 坂本 先生の言われるとおりでして、金融機関に書面添付の存在を認めていただくことが先決です。私どもも、その努力を怠っていたと反省しています。
 中小企業金融で一番大きな課題は、貸し手と借り手の「情報の非対称性」の解消です。金融庁は、リレーションシップバンキングや事業性評価などを推進することで、金融機関に対してもっと企業の中身を知るべきではないかとの指導をされています。ですから、行員さんや職員さんが企業の現場に行くように働きかけています。しかし実際のところ、決算書が信頼できるものであれば、その情報だけで7~8割は企業の実態をつかめてしまうと思っています。そうなれば、社会的コストを相当抑えることもできます。しかも、真面目な経営者や税理士が報われる望ましい社会にもなると思います。

 平松 そうなるといいですね。

TKC会員は理念を失わず努力を怠らず中小企業のために活躍を

 坂本 最近の気になる動向として、会計分野におけるフィンテックや人工知能の影響について、平松先生は、どのようにお考えですか。

 平松 会計の生産性は、経営者とのコミュニケーションによって成り立っていく部分があると思います。将来的には分かりませんが、当面、その部分をフィンテックや人工知能が代わることは考えられません。
 逆に、フィンテックや人工知能が単純作業を行ってくれることによって、人間はもっと高度な判断業務に携わる時間が持てるようになります。それは歓迎すべきところではないでしょうか。

 坂本 会計実務家は、会計や税務判断にもっと専念できるということですね。

 平松 それが大事です。やはり人間が関わるべき、経験がものをいう世界がありますから、税理士や会計士の仕事がすぐになくなるというような心配はいらないと思います。

 坂本 最後に、TKC会員に一言メッセージをいただけますでしょうか。

 平松 TKCの先生方は、飯塚毅先生が掲げたTKC全国会の高い理想を追い求めながら、かつそれに到達するように常に努力しておられます。どこからそのエネルギーや情熱が湧き出てくるのかと思うくらいにすごいと思っています。そういうことがあってはじめて、TKCの先生方が日本の中小企業に対して、会計にしても税務にしても、正しい方向に導いていくことができるのでしょう。理念を失い、努力を怠れば、そういうことはできなくなると思います。
 引き続き、TKCの理念を忠実に履行していただいて、日本の中小企業の会計が正しく運営され、経営に活かされるように、それをもって顧問先企業がさらに発展するようなご支援に努めていただきたいと思います。皆さまのますますのご活躍をご期待しております。

 坂本 ありがとうございます。日本全国のTKC会員が結束して、これからも中小企業のために精一杯頑張りますので、引き続きご指導のほど、よろしくお願いいたします。

平松一夫(ひらまつ・かずお)氏

日本学術会議会員、日本会計研究学会会長、アメリカ会計学会副会長、世界会計学会会長、公認会計士・監査審査会委員、企業会計基準委員会委員、国際会計士連盟・国際会計教育基準審議会委員等を歴任、2002‐2007年度には関西学院大学学長を務める。2017年2月に企業会計審議会会長に就任。

(構成/TKC出版 古市 学)

(会報『TKC』平成29年7月号より転載)