「連結決算業務」を効率化し担当者のスキルアップを実現
バドミントン、テニス、ゴルフを“3本柱”にグローバル展開しているヨネックス。石川遼選手など世界のトッププレーヤーと契約して認知度を上げている。そこで、同社の事業戦略とTKCの『eCA-DRIVER』を活用した財務戦略を、連下千歳常務取締役総務統括兼総務部長などに聞いた。
世界のトップ選手がヨネックスのラケットを使用
――「ヨネックスの国籍は世界」をスローガンに掲げ、事業展開されていますが、その内容について詳しく説明していただけませんか。
連下千歳常務取締役 当社の事業は大きく分けて「スポーツ用品事業」と「スポーツ施設事業」の2つからなります。スポーツ用品事業はバドミントン、テニス、ゴルフ、スノーボード、ウオーキングシューズなどを取り扱い、国内外で販売を展開しています。
バドミントン競技は、1992年バルセロナオリンピックから正式種目となりましたが、過去のオリンピックでは、常に当社のラケットを使用する選手がメダルの獲得で圧倒するなど、バドミントンでは高いブランド力を築いています。
海外市場については、米国、ドイツ、英国、台湾、中国などに「現地法人」(7社/うち6社が連結子会社)を設立する一方、それら以外の国に対しては「代理店」(50数カ国)を置き、主にバドミントン、テニス、ゴルフ用品を提供しています。
――スポーツ施設事業の中核は、新潟県長岡市寺泊にある「ヨネックスカントリークラブ」の運営ですか。
連下 はい。ちょうど今日(5月27日)から始まったLPGAツアー「ヨネックスレディス」は、ここで行われています。寺泊の自然の丘陵を生かして作られた18ホールは「プロに厳しく、アマに楽しく」をコンセプトにしており、着実にファンを増やしています。
――直近の業績(連結ベース)を教えてください。
連下 2011年3月期の連結売上高は、大震災の影響を受け、前期に比べて0.5%減の366億8700万円となりました。当社のビジネスは、春先に小売店等からバドミントンやテニス用品などの注文をいただき、出荷します。1年で最もボリュームの大きいときに、大震災に見舞われたため、業績を下げましたが、ここにきて受注は総じて回復基調にあり、中長期的観点からの打ち手も講じています。
1つは08年1月に石川遼選手と契約してゴルフ分野での知名度を上げていること、2つ目は海外市場の掘り起こしです。バドミントンを主体とした営業活動の強化の他、ゴルフでは新たに中国(上海)にゴルフ販売のための子会社を設立。また、従来国内販売のみであったウオーキングシューズの販売を一部の国で開始するなど海外事業の強化をはかっており、海外売上高比率を早期に30%以上に引き上げられるよう「グローバル戦略」を推進しています。3つ目はこうしたマーケティングを展開した「結果」がどうだったのかを、いち早く把握できる仕組みづくりに取り組んでいることです。要するに「基幹システム」の見直しをはかっているわけです。
短期間でシステムを使いこなせた秘訣
――昨年8月にTKCの『eCA-DRIVER』を導入されたと聞いていますが、その理由は……。
近藤茂経理部長 今、連下がお話しした「基幹システム」の見直しをはかっている一環として、連結会計の部分について『eCA-DRIVER』を導入したということです。連結決算そのものについては10年ほど前から行っていて、従来のシステムが古く、使い勝手もよくなかったことから『eCA-DRIVER』に切り替えたというのが直接的な理由です。
塚田圭司経理部決算業務課長 以前のシステムは1人(1台)しか使えなかったため、どうしても仕事が滞り、効率よく経理処理することができませんでした。1人の担当者に負荷が大きくかかっていたということです。その点、『eCA-DRIVER』なら分散入力ができるので効率的です。専門家のTKC会員のサポートを受けることができる点も、心強く感じています。
佐藤美紀同課係長 実際、導入に際しては、朝日長野税理士法人の大野崇公認会計士に大変お世話になりました。中間決算(2010年9月)から『eCA-DRIVER』を使って処理したいと考えていたので、スケジュールが非常にタイトでした。このため、導入ミーティングはわずか7回(約3週間)しかできなかったのですが、それでも一通り使いこなせるように仕込んでくれましたからね。
――どういう方法で指導されたのですか。
大野崇公認会計士 まずヨネックスさんの実態(旧システムを使った連結会計業務)をヒアリングさせていただき、そのうえで前年度データを使って、自ら『eCA-DRIVER』で処理を行ってみました。これによってどのように使えばヨネックスさんにとって一番いいのかを見つけだし、その使い方をミーティングで体験してもらっていったわけです。
那倉弘行同課主任 その一つが子会社の過去データを用いてのテスト処理でしたが、導入スケジュールがタイトでしたから、一度に全部(連結子会社6社)行うのは難しいわけです。そこで大野先生には1社をモデルケースに処理の仕方を詳しく教えてもらい、残りの子会社分は「宿題」とされました。その宿題を、われわれ(担当者3人)が力を合わせて次のミーティングまでに行うわけですが、その際、疑問に思った点やわからなかったところをあらかじめ整理しておき、それについて、大野先生(が次回ミーティングにきたとき)に教えてもらうというやり方でマスターしていきました。
――どういう流れで連結決算は行われているのですか。
塩原妙子さん スプレッドシートを使って子会社の個別財務諸表データを親会社の『eCA-DRIVER』に取り込んで処理しています。実は旧システムのときもスプレッドシートを使ってデータを取り込んでいたのですが、そのときは収集したファイルを加工して(旧システムに)取り込んでいました。これに対し、現在は収集したファイルをCSV形式に変換して行っています。つまり、ファイルを作るという中間工程をなくしたことで、業務を効率化したわけです。
以前に比べて担当者の残業時間が大幅に減少
――具体的には、どのように『eCA-DRIVER』を使って連結精算表などを作成しているのですか。
那倉 まず連結精算表の作成に関していえば『eCA-DRIVER』によって、それまで手仕訳だった「開始仕訳」をすべて自動で起こせるようにしたこと、加えて為替差損益や繰り延べ税金資産と負債の相殺仕訳に関しても、自動で行う仕組みにしたことです。結果、“消し漏れ”を完全になくすことができましたね。
塚田 当社の事業はスポーツ用品事業とスポーツ施設事業からなりますが、前者に関しては日本、北米、ヨーロッパ、アジアの4つをセグメントとしています(スポーツ施設事業を含め計5つ)。以前は、旧システムから連結精算表を抜き出して、それをスプレッドシートで加工してセグメント情報を作成していましたが、現在は連結精算表を完成させれば、自動的にセグメント情報も作成される仕組みになっています。
佐藤 さらに連結キャッシュ・フロー計算書の作成についても、『eCA-DRIVER』の導入を機に、インプットとアウトプットの両方から見直しをはかりました。簡単にいえば、旧システムのときは非常に細かく勘定科目を設定して連結キャッシュ・フロー計算書を作成していたのですが、それを簡素化して、見やすく使いやすくしたということです。
塩原 開示についても、「決算開示システム」とデータ連携できるので非常に効率化されました。
塚田 こうした点を一つひとつ業務改善していったわけです。その結果、旧システムを使って連結決算を行っていたときに比べて担当者の残業時間は相当減りました。その浮いた時間を、財務・経営分析に役立つデータの作成などにあてています。
佐藤 それだけでなく監査効率も向上したと思います。『eCA-DRIVER』の場合、複数の人が「ID」を持つことができますが、当社では「参照」のみに限定して監査法人にもIDを提供しています。これにより、監査法人は自ら『eCA-DRIVER』を使ってチェックすることができます。例えばある経費が前期に比べてかなり増えていたとすれば、その原因をドリルダウン機能を使って調べていくわけです。
いずれにしろ、『eCA-DRIVER』を導入したことで正確かつ迅速に連結決算業務を行うことができるようになると同時に、私たち担当者のスキルも相当上がったと思います。
名称 | ヨネックス株式会社 |
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業種 | スポーツ用品の製造販売 |
代表者 | 米山 勉 |
所在地 | 東京都文京区湯島3-23-13 |
TEL | 03-3836-1221 |
売上高 | 366億8700万円(2011年3月期/連結ベース) |
社員数 | 1368名(同) |
URL | http://www.yonex.co.jp/ |
『戦略経営者』2011年7月号より転載
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