連結納税にメリット見いだすカー用品専門店の雄
カー用品専門店としては店舗数国内首位のイエローハット。出店攻勢はいまも続くが、実は「直営」はゼロ。店舗を地場の子会社に帰属させ、グループ力の最大化を図るためである。その流れのなかで、申告業務においても連結納税体制構築に力を注ぐ。同社経理部の岡田孝二部長、石田明彦課長、橳島勇さんに話を聞いた。
新規出店を加速させ着実に固定客を増やす
──イエローハットという社名の由来を教えてください。
岡田 通学時に児童がかぶる黄色い帽子が由来です。自動車産業に関わるものとして、人と車の心地よい共存関係とすべての方々の交通安全を願う想いを社名に込めています。
──カー用品市場の業界環境は?
岡田 現在の市場規模は1兆8,000億~2兆円といわれています。そのうちの約4分の1をわれわれのようなカー用品専門店が占めているわけですが、マーケット自体は2000年頃の3兆円に比べると3分の2以下に縮小しています。ここのところ下げ止まってはきていますが……。
──厳しい環境ですね。
岡田 ただプラス材料もあります。カー用品市場の半分を占めるカーディーラーやSSなど競合が減少傾向にあることがひとつ。それから近年、若者の車離れが喧伝されるなか、実は乗用車の保有台数は微増で推移しているということ。使用年数も平均12年間と10年前に比べて2年増えています。ひとりの方が1台の車を長く乗られるわけですから、当然、タイヤやバッテリーなど消耗品の需要も期待できます。それと、当社は競合他社と比べて比較的小規模店舗が多いため、固定費負担が少なく機動的な展開ができるのも、強みといえるかもしれません。
──そのような追い風を確実につかむための戦略は?
岡田 大きく4つありますが、まず一つ目は店舗数の拡大です。これは、競合の減少により宙に浮いた顧客を取り込む狙いで、居抜き物件を積極活用して出店コストを抑えたり、M&Aで競合他社の店舗(「モンテカルロ」「ドライバースタンド」)を獲得するなどして新規出店を加速しています。結果、当社の国内店舗数は計560店舗(2013年3月末現在)とカー用品チェーンとしてはナンバーワンの数を誇っています。
また、タイヤを中心とした消耗品の販売の強化も進めています。タイヤは、比較的廉価なPB商品からナショナルブランドの高付加価値商品まで幅広く取りそろえ、多様化するニーズに対応しています。
さらに、卸売りの強化。イエローハットの店舗以外、たとえばホームセンターなどへの卸売りを拡大していきます。そもそも当社は卸売りからスタートした会社ですからいわば原点回帰ですね。そして最後は車検・ピットサービスの強化。車検・整備市場は約5兆円の規模があり、非常に魅力的です。この分野はディーラーや整備工場が強く、カー用品店のシェアはごくわずか。シェアアップの余地はあると考えています。
──近年、直営店をなくし、連結子会社を活用した経営にシフトされているようですが。
岡田 現社長の方針で、直営店を順次子会社に移管していき、昨年の4月で本体が運営する店舗はなくなりました。現在、連結対象子会社は21社、そのうちの18社が地場でイエローハットなどの店舗を展開しています。
──目的は?
岡田 やはり、地場に経営を移管した方が、地域事情に密着した事業展開ができ、また、スピード感をもった運営が可能になるというメリットがあります。
──するとこれからは連結経営が重要視されますね。
岡田 はい。われわれ本部では子会社の経営状況を詳細に見ながら、適時適切な手を打っていかなければなりません。TKCさんや横浜税理士法人さんとも連携しながら、最適な体制づくりを模索していきたいと思っています。
納税プロセスのシステム化でスピードと正確性がアップ
──TKCの法人電子申告システム『ASP1000R』を3年前に、そして2012年3月期からは連結納税システム『eConsoliTax』を導入されています。狙いは?
石田 そもそも20年以上前から当社とTKCさんとは密接なつながりがありました。たとえば、横浜税理士法人の服部久男先生が中心となって動かれ、全国の子会社やボランタリーチェーンすべてにTKC会員先生を就け、会計システムに『FX2』(TKC戦略財務情報システム)を導入したというのもそのひとつ。『FX2』の情報をギャザリングして、本部で分析。貴重な経営資料として活用していました。
服部 そんななかで数年前、イエローハットさんの業績がやや停滞していた時期に、業務の革新、効率化のために『ASP1000R』の導入を考えてみてはいかがでしょうかと当事務所から進言し、結果的に採用していただいたという経緯です。
──導入効果はありましたか。
橳島 それまでは申告書別表は手書きで作成していたので大変な作業量でした。当社の別表関係は加減算が多くてとくに煩雑なんです。手書きだと結果が合っているのかいないのかもにわかには分かりません。しかし『ASP1000R』では別表間の自動連動機能や、入力・計算時に税法上の誤りをチェックする「税法エキスパートチェック機能」などがあるので、そのような悩みは一気に解消しました。
──そこから連結納税制度を採用し『eConsoliTax』へと移行された理由は?
石田 当社には現在、幸いにも赤字の子会社はありませんが、将来的には分かりません。グループ内に赤字企業が発生した場合、黒字企業と損益通算ができるという連結納税のメリットがリスクヘッジになります。これをやっておかないと「善管義務」を果たしてないということにもなりかねないですからね。これがまずひとつ。それから単純に、各社ごとではなく本社で一括納税した方が業務効率が上がるし、資金的なメリットが出てくることも理由でした。
──『eConsoliTax』導入の際に苦心されたことは?
橳島 私個人としてはTKCの研修会に何度も参加させていただくなどして問題ありませんでしたが、少し大変だったのは子会社に対してでしょうか。教える立場になるとやはりちょっと戸惑いました(笑)。
服部 前年の8月に、子会社の担当者と顧問の税理士先生に一同にお集まりいただき、TKCの東京本社で研修をさせていただきました。先ほども話にありましたが、子会社の顧問税理士はほとんどがTKCの先生ですから、その点は楽でしたね。その後、決算直前の翌年3月には前年のデータを使って全員でシミュレーションを行いました。
石田 実は当グループの場合、連結納税関係の入力は、他のケースと違って主に顧問税理士の先生方にやっていただいているのが現状です。会計事務所で打ち込んでいるケースもあるようですよ。その分、数字の信頼性はより高いかもしれません。
──2012年3月期に実際に連結納税をされてみていかがでしたか。
橳島 最大のメリットと感じたのは子会社のデータをオンラインで逐一確認できることです。それまでは単体申告の結果をFAXでもらってはじめて分かるという状態でしたから、その後にやっかいな誤りを発見することもたびたびでした。いまではリアルタイムに見ることができますからそのようなことはありません。また、子会社からも事前に質問が来たりと、親子間で良いコミュニケーションがとれるようになりました。
──機能的には?
橳島 やはりチェック機能が便利です。数字の不整合にはエラーメッセージが出てどこが誤っているかが即座に分かる。スプレッドシートでは、間違った箇所を発見するだけで数時間かかったりしますからね。それから地方税の納税プロセスが圧倒的に効率化しました。『eConsoliTax』には各地方公共団体の最新税率マスターが搭載されているので、ワンクリックでそのままエルタックス(地方税ポータルシステム)に送ることができるようになった。これも大きなメリットですね。
──TKC会計人によるコンサルティングもこのシステムのウリなのですが……。
橳島 私はTKCさんしか知らないので、比較のしようがありません。いたれりつくせりやっていただくのが当たり前だと思っています(笑)。
名称 | 株式会社イエローハット |
---|---|
設立 | 1962年3月 |
所在地 | 東京都中央区日本橋馬喰町1-4-16 |
売上高 | 1,031億円(2012年3月期連結) |
従業員数 | 2,023名(2012年9月現在連結) |
URL | http://www.yellowhat.jp |
『戦略経営者』2013年5月号より転載
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