新連結会計システム導入で反転攻勢への土台をつくる
合成樹脂(プラスチック)のプロ集団として、OA機器などの部品製造の分野で日本の成長を支えてきたヤマト・インダストリー。近年はそのノウハウを武器にさまざまな分野に精力的に進出。一時の低迷から脱し、成長軌道に乗りつつある。杉浦大助社長をはじめ、藤元勝利執行役員、管理本部・経理管理グループの小村琢也氏、髙橋有希子さん、吉田和子さん、そしてシステムコンサルタントの福薗健公認会計士・税理士に話を聞いた。
合成樹脂成形の技術を生かしさまざまな分野に進出
──合成樹脂成形を主業務にされているとお聞きしました。
杉浦大助社長
杉浦 全体の7割が合成樹脂成形関連の事業ですが、そのほかにも看板・ディスプレーや物流機器(『コンビテナー』)の製造なども手がけており、その意味ではとらえどころのない会社といえるかもしれません(笑)。
──昭和12年創業ということですが……。
杉浦 現在の業容、つまり樹脂関連事業を主業務にするようになったのは昭和30年からです。そこから数えると今年で60期を迎えることになります。当初、商社的なビジネスをやっていくうちに、次第に樹脂成形のノウハウを蓄積していって製造も行うようになりました。主にOA機器や自動車関連、住宅設備関連、生活用品などの部品を製造しています。
──強みは?
杉浦 企画・設計からはじまり、金型をつくって成型し、最終的には組み立てまで一貫して請け負う能力を持っているところでしょうか。本体では埼玉・川越と中国の深センに工場をもっていますが、とくに深セン工場は、7年前に私が入社してから赤字だったタイと上海の工場を廃止・集約する形で拡大し、川越工場を大きく上回る生産能力を持つようになりました。引き合いが増えている海外の日系メーカーなどには、この深セン工場から納品を行っており、一部は、日本市場へも投入しています。
──看板・ディスプレー事業も古くから行われていますね。
杉浦 事業セグメントとしては看板事業も樹脂成形の一部になります。合併やCI導入などでロゴや社名を変える企業からの需要をはじめ、コンビニや駐車場の看板も手がけています。これも設計から組み立てまで手がけ、看板づくりに必要な「真空成形」の技術も当社の得意分野です。最近では、蛍光灯ではなくLEDが主流化し、付加価値が高くなってきた分、売り上げは横ばいですが利益がとれるビジネスになりつつあります。
──そして物流機器の『コンビテナー』(写真参照)はヤマト・インダストリーさんの代名詞でもあります。
『コンビテナー』
杉浦 昭和43年にスウェーデンから技術導入して以来、初めて日本市場に供給し、ユーザーのニーズに応える技術革新を進めながら業界をリードしてきました。当初はパテントがありましたからシェアは100%だったのですが、現在でも20~25%くらい。技術的には、ジョイントや底の部分を樹脂にして軽量化するなど、さまざまな変革を加えてきました。とはいえ、他社の追随も厳しく、規格品だけでは安売り競争になってしまいます。そのため、当社では特殊なものを運ぶ高付加価値な製品をメーカーと共同で開発するなど、樹脂成形の技術力を生かした事業展開も行っています。
──社長はもともと大手商社出身だとか。
杉浦 当社のタイ進出の際に協力させてもらったことがあって、7年前に現在の相談役から、当時厳しい状態だったヤマト・インダストリーの再建を手伝ってくれないかと……。入社してからは、既述したように海外工場の集約化などの構造改革に取り組み、ここ数年ようやく黒字が定着してきました。今後2、3年でさらなる成長への道筋をつけたいですね。そのためには管理体制を強固にする必要もあります。TKCさんの連結会計システム『eCA-DRIVER』の導入も、その一環だと認識しています。
選択の理由は「クラウド」と懇切丁寧なサポート体制
──『eCA-DRIVER』導入のきっかけは?
藤元勝利執行役員
藤元 数年前より連結会計システムを導入し運用していましたが、そのソフトの保守が切れることとなり、連結会計システムを見直す必要がでてきました。まず、さまざまなベンダーの資料を取り寄せ、デモや見積もりを経て、最終的にTKCさんの連結会計システムを導入することにしました。
──TKCを選択した理由は?
藤元 まず、クラウドシステムであること。他社は、基本的にクライアントサーバー型でクラウドはオプションの扱いでしたが、TKCさんの場合、最初からクラウドでの提案で、価格もリーズナブルでした。やはり、サーバー型はメンテナンスなどの手間がかかるし、情報漏洩(ろうえい)のリスクも大きいですからね。もうひとつの理由は、会計の専門家(福薗健公認会計士・税理士)のサポートがいただけるので、導入支援のみならず制度面まで相談できること。他社のソフトだとここまでのサポートはありませんから。
──福薗先生はシステムコンサルタントとしてどういう印象を受けられましたか。
福薗健公認会計士・税理士
福薗 海外子会社(深セン、上海)を抱えておられるなか、工夫をされながらスプレッドシートを使って連結会計をこなされてきただけに、経理管理グループの方々が鍛えられているという印象でした。みなさんのレベルがとても高いので、『eCA-DRIVER』導入もスムーズでしたし、標準化、効率化による経理部門の能力の向上という意味では、最大限の効果が出ていると思います。
小村 福薗先生には、導入支援の段階では頻繁に、その後も年2回(中間、期末)ご来社いただき、あるいはメールでやりとりしながら、システム面はもちろん会計的なアドバイスももらっています。
──導入されてみて、機能的な面はいかがでしょう。
小村 国内子会社2社(埼玉ヤマト、ヤマト・テクノセンター)には『eCA-DRIVER』を直接開いてもらい、財務諸表などの入力をしてもらっています。以前はこちらですべて打ち込んでいましたので、随分楽になりました。子会社のデータを取り込むだけで財務諸表だけでなく、キャッシュフロー計算書が自動でできるというのがとくにありがたいですね。従来のシステムにも機能としてはあったのですが操作しづらくサポートを求めても曖昧なままなので自動化はあきらめてしまっていました。
それから、自在に管理会計帳表をつくることができる『マネジメントレポート(MR)設計ツール』には助けられています。とくに、中国の子会社2社の連結精算表が、『eCA-DRIVER』に数字をデータ連携等で入力すると同時にできあがるように設計できたので、大変重宝しています。従来は、整合性のチェックもできず、海外子会社の報告を信用するしかなかったですからね。
ブラックボックス化させない努力を
──実務担当者のお2人は何かご感想はありますか。
髙橋 私は債権債務の相殺・消去の担当ですが、全体を考えると随分楽になった印象です。以前は、データを見て〝これは前の数字が残っているのでは?〟などという不安がよぎったりしていましたが、いまは、それはあり得ないので即座に自分の仕事に取りかかれます。それから税効果会計における税率差異の注記も、以前はスプレッドシートで何日もかかっていたものを小村さんが即座に作成されていて驚きました。
吉田 私はキャッシュフロー計算書を担当しています。前のシステムでの運用を知らないので単純な比較はできませんが、各子会社のデータを確認する際の「整合性チェック」の機能は良いですね。自分の仕事によって正解に近づいていく達成感があります(笑)。
──監査対応での使い勝手はいかがでしょうか。
小村琢也氏
小村 監査法人用のIDを付与して、必要な情報は監査法人自ら閲覧してもらうようにしており、手間は大幅に減りました。
福薗 内部統制を担保するための『eCA-DRIVER』の役割は?
藤元 連結決算は、『eCA-DRIVER』で導き出したデータを監査法人の判断に任せている状態です。
福薗 その意味ではTKCシステムが内部統制環境を提供している形になりますね。
藤元 そういうことになります。監査法人からOKをいただいている状況ですから。
──今後はいかがでしょう。
福薗 システム化によってインプットとアウトプットの間がブラックボックス化しない努力が必要になってくるかもしれません。
藤元 おっしゃるとおりで、そうならないようスタッフ全体の会計知識を深めていきたいですね。そして、より堅固なグループ経営に貢献できるような管理体制をつくっていきたいと思っています。
名称 | ヤマト・インダストリー株式会社 | |
---|---|---|
設立 | 1955年8月 | |
所在地 | 東京都台東区上野3-9-1 | |
売上高 | 159億円(連結2015年3月期) | |
社員数 | 1,068名 | |
URL | http://www.yamato-in.co.jp/ |
『戦略経営者』2015年10月号より転載
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