グループ経営を推し進め「世界のYAMAMURAへ」
ガラスびん製造で国内首位の日本山村硝子。大正3年創業以来、「人」「品質」「革新」を理念に掲げ成長を続けてきた。併せて、新事業の模索と海外進出をテーマに、連結グループ経営の構築にも力を注いでいる。コーポレート本部経理部の荒木陽一部長、金永昌彦副参事、杉本雅美さんに話を聞いた。
ガラスびんの需要縮小を新事業と海外展開でカバー
――ガラスびんの分野では国内トップだそうですね。
荒木 ビール、ウイスキーなどの酒類、あるいは清涼飲料水、各種食品向けなど、1000種類にも及ぶガラスびん製品をラインアップしており、現在、国内で約40%のシェアを占めています。全国4カ所に生産拠点を持ち、少量から大量生産にいたるまで、顧客のニーズに迅速かつ廉価に対応できる高度な生産・品質管理能力が当社の強みです。
――ガラスびんの需要自体は長期的に減少傾向だと思いますが。
金永 最盛期に比べると半減しており、今後も緩やかに減少することが想定されます。その分、ペットボトル(年間4億5000万本)やプラスチックキャップ(同30億個)の製造、あるいは「ニューガラス」の開発・製造などでカバーしてきました。いまや、このようなガラスびん以外の分野が売り上げの半分近くを占めています。今後も、ガラスびんの需要減を、ニューガラスなどの新事業の模索と、海外市場の開拓で補いさらに発展させるというのが、われわれの基本的な成長戦略です。
――ニューガラスとは?
荒木 情報・通信、環境分野、あるいはエレクトロニクスなどの先端分野で素材として使用される粉末ガラスのことです。ガラス素材を混ぜることで耐熱性を高めることができるのです。たとえば、プラズマテレビのディスプレイやLED照明などにも、当社の開発素材が使用されています。昨年、新素材開発の高いポテンシャルを持つ山村フォトニクス(社名変更後)という会社を子会社化し、この分野の強力なてこ入れも行いました。
――海外展開の歴史も古いとお聞きしています。
荒木 フィリピンの食品コングロマリットであるサンミゲル社とは数十年来の付き合いがあり、4年前には協力して合弁会社を立ち上げました。そのほか、中国、タイ、インドネシアなどに合わせて7拠点を持っています。持分法適用関連会社が3社、非連結子会社が3社、その他1社という内訳で、いずれも、自国需要へ対応する製造を行うだけでなく、周辺国市場へのマーケティング活動にも力を入れています。ちなみに、昨年からスタートした中期経営計画では『世界のYAMAMURAへ――心と技術を伝えたい』というビジョンを掲げ、グローバル企業としてYAMAMURAブランドの確立を目指していくことを宣言しました。
――その世界戦略の一環として、アジアからの人材の登用を積極化されているとか。
金永 当社では以前から主に技術系の人材をアジアから受け入れてきましたが、今春、初めて本社管理部門に3名のフィリピン人の新卒を採用しました。経理部にも1人が配属になっています。
――狙いは?
荒木 やはりまず、グローバル化への対応です。今後は、海外拠点も増やしていく予定ですし、現地法人を担うアジアの人材を育てていく必要があります。それから、国内の日本人スタッフが彼らから刺激を受け、触発されるという効果も期待しています。また、技術者だけでなく管理部門のスタッフも、どんどん海外へ出て行く時代が確実にやってくると考えており、その土壌づくりという意味合いもあります。
「電子開示システム」まで一気通貫に連動する仕組み
――連結決算では他社システムからTKCの『eCA-DRIVER』に乗り換えられたわけですが、その理由は?
金永 以前は、大手ITベンダーのERPシステムのパッケージのなかの連結決算機能を使っていました。しかし、このシステムの保守期限が切れるのを契機に、ひとつ他社の製品も検討してみようと……。
――なぜですか。
金永 十数年前に作ったシステムの使い勝手が悪く、効率的な運用が出来ておらずちょうどいい機会だと思ったからです。色々と検討した結果、従来システムのベンダーとTKCさん、それともう1社の計3社にプレゼンに来てもらいました。
――『eCA-DRIVER』を選択された理由は何でしょう。
金永 価格だけを見ると最安値ではなかったのですが、総合的には『eCA-DRIVER』が比較優位であったという印象です。
――具体的には。
金永 まず最初見た時に、直感的にユーザーフレンドリーな雰囲気がありましたし、使ってみてその印象通りでした。実は、以前のシステムは経理部以外のシステムに詳しいスタッフに頼んで動かしていました。それほど難しかったわけです。一方、『eCA-DRIVER』は、杉本(雅美さん)1人で十分に対応できます。
杉本 前のシステムは、ブラックボックスのようで恐くて触れない(笑)感じでしたが、『eCA-DRIVER』はマニュアルを読まなくても進めていける印象でしたね。
金永 それから、データ連携によって、子会社の個別会計の情報がそのまま連結会計につながり、さらには金融庁のEDINET(電子開示システム)に開示されるまで一気通貫で連動する機能にも魅力を感じました。子会社のデータを打ち直したり、プリントアウトしたものを開示報告書に転記する手間がなくなりますからね。
――情報の流れがスムーズになったということですか。
杉本 はい。各連結対象子会社(山村倉庫、星硝、山村フォトニクス、山村製壜所の4社)から決算情報をレポーティングパッケージでいただく際に、手入力による打ち間違いが少なくなりました。それから、以前のシステムではスプレッドシートでデータをもらってから照合していたので、各社のデータをいちいちチェックし、誤りを見 つけると再度送り直してもらうという作業が必要でした。ところが、『eCA-DRIVER』では、画面上でお互いにデータを見ながら話ができるので、かなり効率性が上がったと思います。とくに、内部取引の照合などは、私のところに上がってくる前に、子会社の担当者同士が画面を見ながら照合を済ませてくれるようになりました。
金永 要は、業務の効率化と同時に、職務分掌も実現できたわけです。それと、連結修正仕訳の自動作成機能は、とてもありがたいです。連結キャッシュフロー計算書も含め、かなりの部分を自動的に作成出来るようになりました。以前のシステムでは自動仕訳が分かりにくくて、別途集計した結果を仕訳として打ち込んだりしていました からね。
専門家のコンサルティングでハードルを次々クリア
――ほかに『eCA-DRIVER』のメリットを感じるところは?
金永 すでに2回バージョンアップが行われ、法改正にも適切に対応していただけているので安心感があります。それから、これも『eCA-DRIVER』の他社製品にないメリットだと思いますが、公認会計士・税理士の大西雅也先生と岸田泰治先生のコンサルティングを受けながら導入を進めることができたのも大きかったと思います。
――どのようなコンサルティングを受けられましたか。
金永 2009年の11月から1年以上にわたり、子会社の経理担当者を集めた研修などを含め、計20回程度は来社されて立ち上げをサポートいただきました。その過程では、未実現利益や持分法処理、あるいは税効果会計の構築などの局面で問題が出たりもしましたが、お2人の専門的なアドバイスがあったからこそ切り抜けることができたと思っています。
――監査法人への対応という意味ではいかがでしょう。
金永 前期末の監査から、パソコン画面を監査法人の方に見ていただきながら進める形にしました。
杉本 画面だけでOKが出る場合もあるし、指摘されればその資料をプリントアウトすればいいのでとても効率的になったと思います。
金永 それと、監査資料という意味では、連結精算表や連結修正仕訳の増減分析を2期比較で行える機能も良いですね。ドリルダウンで過年度の仕訳帳までさかのぼることができますから、監査に必要かつ十分な資料を提出することができます。
――月次の予算連結や業績管理にも取り組まれているとか。
金永 まだ構築中の段階ですが、現在の月次資料を見直し『eCA-DRIVER』のデータに基づいた、よりマネジメントに生かせる資料づくりに取り組んでいるところです。また、将来的には海外現地法人も連結に組み入れていき、グローバルな管理体制を構築したいと思っています。
名称 | 日本山村硝子株式会社 |
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業種 | ガラスびん等製造・販売 |
代表者 | 山村幸治 |
所在地 | 兵庫県尼崎市西向島町15-1 |
TEL | 06-4300-6000 |
売上高 | 726億円(2011年3月期) |
社員数 | 1073名 |
URL | http://www.yamamura.co.jp/ |
『戦略経営者』2011年8月号より転載
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