導入システム eConsoliTax/eTaxEffect
連結納税採用で節税に成功した人工歯のトップシェア企業
独創的な企業が数多く存在する京都。長年、人工歯の分野でシェアトップを続ける松風もそのひとつ。創業100周年の2022年をメドに年商500億円を目指す同社はいま、積極的な経営戦略の実践と並行して、その土台ともなる連結納税システムを導入した。財務部長の梅田隆宏氏、同財務課の西村和幸主任、システムコンサルタントの京都合同会計の白崎幸男所長、玉山秀文税理士、中岡真一主査に話を聞いた。
ベンチャー精神横溢する社風で「日本初」を連発
──清水焼の窯元だったとか。
梅田隆宏財務部長
梅田 はい。当社は創業者の三代松風嘉定が1922年に設立しました。松風嘉定は陶磁器製造の工業化による大量生産や碍子(がいし)の開発と事業化、そして国産初の高級陶歯の開発を試みるなど、ベンチャースピリットの高い人だったようです。
──とくに人工歯の分野ではパイオニアだったようですね。
梅田 当時、人工歯は舶来品がほとんどでした。しかし欧米人との骨格の違いからどうしても日本人には合わない。そこで、三代松風嘉定は、日本人に合った人工歯の開発に情熱を燃やしセラミック製の高級歯の開発に成功。これが創業につながったと聞いています。そんな創業者の姿勢が、その後も引き継がれ、世界初・日本初の製品を数多く開発してきました。
──たとえば?
梅田 45年には樹脂製の人工歯(レジン歯)、52年には国産初の「真空焼成陶歯」、また、同年には新しい研削器具として、ダイヤモンド粒を利用したダイヤモンド研削材を開発、発売したのも日本で初めてで、研削材の分野では現在もトップシェア(43%)を誇っています。
──経営危機も経験されています。
梅田 80年代に医療費抑制政策が打ち出され、大きな打撃を受けました。強い危機感を抱いた当時の社長である五代松風嘉定は、社の存続をかけ、「量から質」への方針転換を断行し、高品質で高付加価値の製品を供給する体制が組まれました。その後に開発した国産初の硬質レジン歯「エンデュラ」は、日本歯科医師会および厚生省(当時)でも高く評価され、88年には健康保険にも採用されました。これはいまでも当社の主力製品ですし、人工歯の分野でトップシェア(35%)を保つ立役者でもあります。
──海外進出も早かったとか。
日々の研究が画期的な製品を生む
梅田 当社は「創造的な企業活動を通じて世界の歯科医療に貢献する」を経営理念に、海外事業の展開に注力しています。71年には米国、78年にはドイツで販売子会社を設立し、いち早く海外事業に進出しましたが、当社の売上高規模から見ても、まだ世界の歯科医療への貢献度は十分とは言えません。そのため、12年に22年の100周年に向けた10年計画で売上高500億円(計画策定当時160億円)、営業利益75億円という目標を掲げました。これを実現するために海外シェアの拡大をコアにしながら新戦略を実践中です。たとえば、15年4月にドイツの人工歯メーカーであるメルツ・デンタル社を買収。研究開発、生産、販売で大きなシナジーを生みだし、当社グループの海外事業拡大への推進力にしていきたいと考えています。15年10月より、インプラント製品の販売を開始しました。今後はさらにラインアップを充実させるほか、ニーズの収集やサービスの充実に努めていきます。
──生産体制は?
梅田 上記目標を達成するには、生産体制の整備は絶対条件です。そのため、昨年の7月に京都・久御山に2000坪以上の敷地面積の工場を建て、子会社の松風プロダクツ京都を移転。加えて、CAD/CAMを用いた歯科技工物の加工を行う事業を開始しました。そして本社工場では、より高付加価値製品への転換を行っています。
システムコンサルタントがそのまま顧問税理士に
──連結グループ経営を推進している理由を教えて下さい。
梅田 現在、国内5社、海外11社ですが、今回のインプラントのような新事業は、ある程度、業界のしがらみの外でビジネスを行えるなど、別会社にした方が多くの意味で有利な面があります。それから、後で話が出るでしょうが、連結納税を採用することによる税制面でのメリットも大きい。今後もグループ経営を効率よく行うことが成長の鍵でもあります。
──昨年度の決算からその連結納税制度を採用されましたが、「税制面のメリット」とは?
西村和幸主任
西村 第1に、当社は研究開発型企業なので、連結納税によって試験研究費税額控除制度がグループ全体で合算できることにメリットを感じました。実質的に控除限度の枠が増えますからね。第2にはやはり、グループ内で損益通算ができることです。どうしても新事業の立ち上げ当初には赤字が出ます。実際、昨年度はCAD/CAMを使用した歯科技工物の新事業を立ち上げ、損益通算のメリットを享受できました。
──TKCの『eConsoliTax』を採用された理由は?
西村 最終的には2社に絞り、コストもほぼ同じでしたが、そこでTKCさんを選んだ決め手は、まずワーキングシート方式でメニュー化されており、入力がしやすいと感じたこと。また、連結納税は税効果会計が複雑なので、『eTaxEffect』(税効果会計システム)との同時導入によって、税額計算から税効果計算までのシームレスな作業が可能になるところが魅力でした。
──導入作業はいかがでしたか。
西村 京都合同会計様のサポートもありとてもスムーズに行えたと思います。
玉山秀文税理士
玉山秀文税理士 私と中岡と西村さんとで、税効果、連結納税についてシステムの成り立ちから具体的操作まで、1年以上かけて勉強を進めていきました。その後、ある程度マスターした後に子会社の担当者を一堂に集めて説明会を開催。そこで実際にPCでの操作の仕方を覚えていただきました。
──実際の効果は?
玉山 まだ今回が初回なので、西村さんに負荷がかかりすぎている状態です。しかし、子会社の担当者の方々のスキルが上がってくれば、本部に余裕ができて、グループとしてもスムーズな納税作業ができるようになると思っています。
──ところで、システムコンサルタントとしてお手伝いする役割だった京都合同会計さんは、昨年の12月には、松風の顧問税理士にも就任されたそうですね。
白崎幸男代表税理士
白崎幸男代表税理士 今回のやりとりのなかで、少しは信頼いただけたのかなあと。われわれのお客さまは、大多数が中小会社なので、松風さんのような大会社の顧問をつとめることは勉強にもなるし、当事務所も成長できると考えています。
──いつごろの段階で顧問契約を考えられたのですか。
西村 昨年の12月です。前の税理士さんの契約が12月で切れる形だったので、それなら、連結納税のコンサルタントの京都合同会計様でしたらシステムと税務面の両方を相互的にサポートしていただけると考えました。
白崎 その際には、当事務所に訪問され、しっかりと監査されて帰られました(笑)。
──今回、TKCのシステムを導入されて、全体の印象は?
梅田 全社的に税金をコントロールすることはとても大事です。とくに、当社では前述した2022年の目標に向けて、利益の創出は大きな課題であり、そこに貢献できたことは、経営陣にも伝わっています。しっかりやれば、こんな風に節税ができるということであり、なによりも会社全体のメリットを目に見える形で創り出せました。その意味では、とても大きなプロジェクトだったと思っています。
名称 | 株式会社松風 |
ベンチャースピリットで数々の新製品を開発 |
---|---|---|
創業 | 1922年 | |
所在地 | 京都府京都市東山区福稲上高松町11 | |
売上高 | 約197億円(連結2015年3月期) | |
社員数 | 881名(連結2015年3月末現在) | |
URL | http://www.shofu.co.jp/ |
『戦略経営者』2015年12月号より転載
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