ユーザー事例

積水ハウス株式会社

最大の懸案!地方税申告の課題が一挙解決

環境省から住宅業界初の「エコ・ファースト企業」として認定を受けた積水ハウス。3月には顧客の「快適性」「経済性」「環境配慮」のニーズに応える環境配慮型住宅「グリーンファースト」の販売を開始した。一方では法人電子申告システム『ASP1000R』を導入し、税務業務改革にも取り組んでいる。同社の取締役専務執行役員・稲垣士郎氏と経理財務部・経理グループ課長の岩本泰輔氏、神澤亮悟氏に聞いた。

積水ハウス株式会社

住宅業界初の認定「エコ・ファースト企業」

――宇宙飛行士の毛利衛さんが登場するCFもそうですが、この数年「環境の積水ハウス」のイメージが定着していますね。昨年は環境省から住宅業界初の「エコ・ファースト企業」に認定されました。

稲垣 ええ。エコ・ファースト企業は京都議定書の目標達成に向けた地球温暖化対策など、環境保全の取り組みの積極的推進を環境大臣に約束した企業で、当社の場合は「CO排出量削減」「生態系ネットワークの復活」「資源循環」の推進を約束しています。また今年3月からは、これまで培ってきた先進の環境技術を商品に反映し、快適に暮らしながら光熱費や居住時のCO排出量を大幅に削減する環境配慮型住宅「グリーンファースト」の販売拡大・普及にも努めています。

――「グリーンファースト」は具体的にはどんな住宅なのでしょう。

稲垣 そうですね。まず通風・日射しなどをうまく活用した空間設計や周りの自然との共存を目指す「5本の樹」計画等の提案に加え、瓦一体型の太陽光発電システムや家庭用燃料電池を搭載した住宅です。
 つまり住宅の省エネ性能を高めてCOの排出を極力抑え、同時に太陽光発電システムなどで排出するCOをうまく相殺することで、快適で経済性が高く、環境に優しい住宅を実現しているわけです。

――「5本の樹」計画というのは?

稲垣 庭づくりや街づくりの際に、日本の各地域に根ざした在来樹種を中心に鳥や蝶などが好む樹木を提案する取り組みです。当社が2001年に独自に開始した施策で、先ほどの2番目の約束「生態系ネットワークの復活」を目指す取り組みのひとつです。

――不動産市況の悪化や個人の住宅投資意欲の減退など、業界を取り巻く環境は厳しさを増していますが…。

稲垣 実際、06年度に129万戸あった日本の住宅着工戸数は、08年度に109万戸、今年5月の着工レベルでは年率換算で77万戸まで落ちています。ただ政府が打ち出した内需拡大型の経済対策が功を奏し、足もとでは回復の兆しも見えてきています。今回の住宅ローン減税と投資型減税では、年間11.7万戸相当の住宅投資が増加すると試算され、その経済波及効果は約5.5兆円にのぼるといわれています。
 当社としてもこうした変化に対応するため、コスト構造を見直す一方で、営業現場の人員を増やして販売力強化をはかるなど、徹底した構造改革を行っています。今やコストダウンと受注拡大策の両立が必須の時代になっているわけです。

――“環境”も追い風になっていますね。

稲垣 ええ。政府は昨年の洞爺湖サミット開催を機に、太陽光発電を2030年までに現状の40倍にするという目標を掲げました。こうした取り組みは私どもが長年展開してきた施策にも合致し、大きな追い風になると考えています。ちなみに昨年度、当社は太陽光発電システムを搭載した住宅を2071棟販売しましたが、今年度は6000棟を目標にしています。
 また「グリーンファースト」は戸建住宅だけでなく、賃貸住宅でも提案しています。昨年、当社が大阪府の茨木市に建設した太陽光発電システム搭載型アパートはかつてない人気を集め、高い入居率を実現しました。オーナーさんにとっては周囲と差別化されたアパートになるうえ、太陽光発電システムに対する補助金の存在を考えれば、経済性の観点からも十分メリットがあります。

全国400の自治体から税率情報収集する手間を解消

――さて、積水ハウスさんは昨年6月に法人電子申告システム『ASP1000R』を導入されました。導入にあたっての一番の決定要因はどこにあったのでしょうか。

岩本 最大の懸案事項だった地方税申告の課題が、一挙に解決できる可能性を感じたからです。当社は全国約400の都道府県・市町村に事業所があります。そのため毎年、自治体ごとの税率情報等の収集にかなり手間がかかっていました。ところが『ASP1000R』には全都道府県・全市町村の地方税率が、税率マスターとして搭載されていたわけです。これは大きかったですよ。

――従来、地方税の申告書はどのように作成していたのでしょう。

岩本 自社開発のシステムで税額計算から申告書の作成まで処理していました。ただ税率等はわれわれ経理グループが毎回、手間と時間をかけてアップデートしなければならなかったわけです。
 各自治体から申告書を送ってもらい税率を一つひとつ修正するわけですが、何月何日以降はこの税率になるといった条件がついていたり、いろいろ読みくだしていかなければならないケースがけっこうあるわけです。これを400件繰り返していると、ときには担当者の集中力が切れ、ミスを起こすリスクも高くなります。

――この数年は「平成の大合併」による混乱もあったのではないですか。

岩本 おっしゃる通りです。しかもこれらの作業が申告書作成の繁忙期と重なっていたわけですから、担当者の苦労は並大抵ではありませんでした。
 それともう1つ、地方税については電子申告(eLTAX)への対応という課題もありました。自社開発システムとeLTAX対応ソフトのPCdeskとの連動の可能性も探りましたが、かなり難しい状況でした。そのため、いずれは地方税の電子申告に対応できるシステムを導入しなければならないと考えていたわけです。

――なるほど。それらの課題は『ASP1000R』の導入で解決しましたか。

岩本 お陰さまで、すべて解決しました。ただ事業所のある約400の自治体のうち、電子申告に対応している自治体は121、市町村だけではわずか74です。問題はこうした状況がいつ改善されるかです。

――おっしゃるように、現在ある1800弱の市町村のうち電子申告を受け付けているのは約300にすぎません。しかし残り1500の市町村も、大半があと1、2年で対応するだろうといわれています。

岩本 早くそうなってほしいですね。いずれにしても『ASP1000R』の導入で、従来は延べ4~5日かけていた税率の確認・登録作業がなくなりました。それにeLTAXに対応したことで郵送費などの直接コストが前期比で年間10万円くらいはカットできました。今後電子申告に対応する自治体がもっと増えれば、当社の場合最大で年間30万円のコスト削減が見込めます。

懇切丁寧に教えてくれるシステムコンサルタント

――ところで、法人税はどのようにして申告書を?

神澤 従来、法人税についてはスプレッドシートを使って申告書を作成していたので、チェック作業にずいぶん時間をとられていました。その点、『ASP1000R』は別表間でデータが完全連動しているので、二重入力とチェック作業を排除できる。しかも「税法エキスパートチェック機能」が税法上の要件や関連するデータとの相互チェックをしてくれるので、非常に安心できますね。

――ワーキングシート方式の入力については、抵抗はなかったですか?

神澤 最初は慣れるまで少し時間がかかりました。ただそれも、どの別表に入力すればどこに情報が飛ぶかといったことをつかむまでです。むしろ必要最小限のデータの入力で申告書が作成できるというメリットの方が大きいと思います。

――国税の電子申告にはいつ頃から対応したのですか。

神澤 『ASP1000R』を導入する2期前からe-taxソフトを使って電子申告していましたが、e-taxは別表間が連動してないので手書き同様の手間がかかっていました。もちろん導入後はその手間もなくなりました。
 また導入後、システムコンサルタントの先生には大変お世話になっています。一般的な税法の解釈や申告書の書き方はもちろん、ほんとうに些細なことまで税務のプロであるTKC会員がシステムコンサルタントとして懇切丁寧に教えてくれる。これは心強いですよ。

稲垣 実は私自身、経理担当者から『ASP1000R』の報告を受けるたびにその良さを確信し、子会社や関連会社に積極的に導入を薦めるようになりました。すでに積和不動産の4社が導入し、今は取引関係企業200社に関してもご紹介しているところです。

――ありがとうございます。今後の『ASP1000R』に期待することがあれば、お聞かせください。

神澤 税法エキスパートチェック機能は精度の高い申告書をつくるうえで欠かせませんし、すごく重宝しています。ただユーザーにとっては頼もしい反面、概算を組んだりするときにもその機能が働いてしまい作業が進まなくなるときがあります。重宝している機能だけに、そのあたりも考えてもらえたら有り難いですね。

――今後、税務部門はどうあるべきだとお考えですか。

岩本 いうまでもありませんが、われわれがまずやるべきことは「適正な税務申告」です。とにかくこれを確実にやっていく。毎年複雑になっていく会計、税務環境の中で、「当たり前」のクオリティを保っていくことは簡単なようで一番難しいんですね。システムコンサルタントのご助言もいただきながら、今後も正しい申告に努めていかねばならないと考えています。

会社概要
名称 積水ハウス株式会社
業種 建築業
代表者 阿部俊則
所在地 大阪府大阪市北区大淀中1-1-88
売上高 (連)1兆1514億円(単)1兆1005億円
社員数 1万6215名
URL http://www.sekisuihouse.co.jp/

『戦略経営者』2009年8月号より転載

掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、2009年8月現在のものです。
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