システム刷新で外貨建て取引の効率化に取り組む国際商社
アパレル専業の貿易商社・サンマリノは、豊富なノウハウと提案型営業を武器に名だたる大手衣料メーカーやセレクトショップを取引先に持つ。しかし、国境を越える業態ゆえに、その管理体制にはさまざまな困難が伴う。同社東京管理部の福田修一専務取締役、近藤清香課長代理、河野由里子課長代理に話を聞いた。
──社名の由来は?
福田修一専務
福田 創業者が〝小さくても自主独立の会社でありたい〟と、当時「世界で最小・最古の独立国家」だったサンマリノ共和国から名前を借りたと聞いています。同国とは当社の創業30周年を期に交流がはじまり、2017年には留学生の受け入れも行いました。
──アパレル専業商社だとお聞きしています。
福田 自社ブランドを持たず、OEM/ODMに特化したビジネスモデルを実践してきました。受注、生産管理、輸入、納品までを一貫管理する貿易商社です。とくに近年は、大手レディースアパレルメーカーやセレクトショップ、SPA(製造小売)に対して、世界中で収集・開発した素材(生地・糸)やデザインなどを提案していく姿勢を強め、付加価値の高い製品づくりに取り組んでいます。
──海外進出が早かったのだとか。
福田 設立当初から韓国での海外生産を手がけ、その後、香港、ほどなく上海へ進出し、中国での委託生産へと拠点を移してきました。現地工場への生産依頼や原料・素材調達、輸出入管理、貿易実務などに精通するアパレル専業商社としてのノウハウを強みとするなか、プラザ合意による円高で海外生産が本格化したことにより、成長軌道に乗ることができました。
──その後は、海外生産が当たり前になり、競合も増えたのでは?
福田 大量生産のOEMはいわゆる設備産業であり、ビジネスとして成立させるには資金力が必要ですし、利幅がとれないのでリスクが高く、小回りもききません。当社は大資本ではありませんので、提案や商品自体に付加価値をつけることが重要だと考えています。
──高価格帯への特化ということですか。
福田 どちらかと言えばそういうことです。比較的廉価でベーシックなデザインの商品は、アパレルメーカーが自らつくるケースも増えています。必然的に、素材が良く、デザイン性の高いものへとシフトせざるを得ません。それだけに、クライアントをうならせる企画・技術開発力、プレゼン力が求められますし、各過程で発生する諸問題に迅速に対応する折衝力も必要です。
──中期計画では、将来の上場を見据えてハイピッチの成長を目指されているとのことですが……。
福田 連結売り上げが現在70億円余り。それを今後3年で、年5億円ずつ、85億円くらいにもっていきたいと考えています。
──そのための戦略は?
福田 ご承知の通り、国内市場は頭打ちです。そのため、数年前から中国市場を攻略するべくさまざまな手を打ってきました。香港と上海の2社を統括する新たなホールディングカンパニーを設立したのもその一環です。今後、中国国内におけるより本格的な販売戦略の展開を予定しています。
──多角化にも取り組んでおられますね。
福田 2016年に設立した2つの小売店舗を別会社で運営しています。編み物を中心に、暮らしが楽しくなる提案をするウールスタジオ(静岡・島田)と紳士用オーダースーツを手がけるスタジオマナス(東京・白金)で、いずれも高付加価値製品を扱い、大量生産ができないニッチな市場をターゲットにしています。
新システムの導入効果で作業量が劇的に減少
近藤清香課長代理
──福田専務は、サンマリノの役員をつとめながらTKC会員税理士でもあるという珍しいお立場だと聞いていますが……。
福田 当社には02年に入社し、10年に税理士登録、13年にTKCに入会しました。税理士登録した時にはすでに役員に就任していましたので会社に残る選択をしました。財務諸表の作成・分析や子会社の管理、あるいはM&Aといった事案に対応する会計スキルが当社の事業に役立つと思ったからです。一方で会計事務所(福田修一税理士事務所)も運営していて、ここにいる河野(由里子課長代理)などは、その関連でクライアントの月次巡回監査に行ってもらったりもしています。サンマリノの業務のスキルアップにつなげる意味合いです。
──昨年、TKC統合型会計情報システム『FX5』を導入されました。理由は?
福田 他社システムの保守切れを期に、当社の基幹システムによる原価計算の結果と連携できるシステムに切りかえようというのが第一の理由です。従来のシステムではそれができなかったからです。また、当社の場合、外貨建て取引に対応するシステムが必須で、それが可能な『FX5』がまず俎上(そじょう)に載りました。それと、TKCの連結会計ソフトや海外法人をモニターするソフトへの拡張性も魅力に感じました。
河野由里子課長代理
近藤 外貨建て取引を管理できる『FX5』に加え、外貨建て債権債務管理(インボイス単位での外貨建て債権債務の消込・外国送金依頼など)に対応した『Navio』(外貨建債権債務管理システム)も併せてご提案いただきました。
──TKCのアライアンスパートナーであるナビオコンサルティング社のシステムですね。
河野 ナビオさんはコンサルティングの面でもとても丁寧なので助かっています。使い勝手も良いですね。従来のシステムでは、債務支払時の割引計算などは手計算で打ち込む必要がありました。しかし、今では『Navio』のマスター登録機能によって作業が自動化され、また、そのデータが『FX5』にそのまま連携されています。以前と比べて、作業量が減りました。
MR設計ツールを与信管理に活用
──『FX5』の機能面での印象は?
福田 当社は自社システムにより販売・購買・在庫の管理をしていますが、従来の会計システムではデータの連携が容易ではありませんでした。
『FX5』の仕訳読込機能は、自社システムからはき出したデータを加工する必要がなく、仕訳読込レイアウトを細かく設計することで、どんなデータも連携できます。この点は、導入効果を実感しています。
──実務上での使い勝手は?
河野 『FX5』は基本的な機能が充実していて、たとえば取引先別残高一覧をドリルダウンして、仕訳明細までをたどれるので、異常値のチェックや分析などに活用することができます。
近藤 エラーチェック機能も重宝しています。エラーの原因をダイレクトにコメントしてくれるので、以前のように自分で調べる必要がなくなりました。それと、自由に帳表を設計できる「マネジメントレポート(MR)設計ツール」は良い機能ですね。当社ではこれを与信管理に使っています。取引先の債権残高を一覧表にし、債権の額が社内規定を超えていないかチェックしています。従来のシステムではデータのはき出しはできますが、自動更新される帳表はつくれませんでした。とても便利になったと思います。
──抱負をお聞かせください。
福田 シェアードサービス(複数の組織の間接部門を共有すること)をビジネスにしていきたいと思っています。「稼ぐ管理部」として、子会社の経理業務を手がけ、プラス他社からのニーズにも対応する。現在、子会社を含めて6社の経理業務を行っています。今後、コンサルティングや社内研修なども手がけ、事業範囲を広げていくことができれば、われわれがプロフィットセンターとなり、会社の収益に貢献できます。そこを目指したいですね。
名称 | 株式会社サンマリノ | |
---|---|---|
設立 | 1975年1月 | |
所在地 | 東京都中央区築地2-11-24 | |
売上高 | 約70億円(連結) | |
社員数 | 90名 | |
URL | http://www.sanmarino.co.jp/ |
『戦略経営者』2018年7月号より転載
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