ユーザー事例

株式会社パイオラックス

約20社の国内外拠点を束ねるばね専門メーカーのグループ力

「ばねの専門家」を自認し、主に自動車産業に精密部品を供給し続けてきたパイオラックス。技術オリエンテッドな姿勢を保ちつつ、国内外約20拠点を駆使してグローバルな事業展開を進めている。同社の経営管理部経理グループの郷原慎一グループリーダー、福田俊宏マネージャー、植本啓揮氏に、グループ経営の概要と連結会計について話を聞いた。

パイオラックス

「弾性を創造」しながら世界的メーカーに成長

──ばね専門メーカーとして創業し、今年でちょうど80周年を迎えられたとお聞きしています。

郷原 1933年に東京・本所菊川でスタートした加藤発條製作所がルーツになります。当初は従業員5名の町工場でしたが、その後、徐々に国内外の自動車メーカーから技術力を認められるようになり、いまでは、精密ばねだけではなく、ファスナー(車の内装・外装の結束具)、グローブボックス用エアーダンパ(世界シェアトップ)・ロック(国内シェアトップ)など、多種多様な部品を手がけています。1台の車に、約1,500個の当社製品が使用されることもあるほどです。

──小さな工場から上場企業へ駆け上がってこられた強みは。

郷原 やはり技術力の高さでしょうか。当社は「弾性を創造するパイオニア」をスローガンに、より高性能で、より軽く、より耐久性のある製品づくりを追求してきました。また、金属と樹脂の両方のばねを製造するメーカーとしては世界で唯一です。ちなみに社名のパイオラックスは、PIONEERS(パイオニア)とELASTICITY(弾性)、さらにX(無限大)の意味を含んでいます。

──リーマンショック以降は右肩上がりの業績ですね。

郷原 ご承知の通り、ここ数年、エコカー補助金や減税など行政の後押しもあって、車の国内販売が堅調に推移したことが大きいと思います。しかし、そのエコカー補助金が終了し、生産の海外移管もより一層進んでいますので、国内市場に限っていえば今後は厳しいかもしれませんね。一方、海外では米国、東南アジアで日本車の販売が好調を持続していますから、こちらは生産拡大が期待できると思っています。

──その意味でも、海外展開に力を入れられているとか。

郷原 当社の中期計画(2015年最終年度)でも、連結売上高600億円のうち海外を58%(現在は約40%)に引き上げる目標を立てています。また、国内では売上高が3割減っても生き残れるよう経営のスリム化に努め、一方で、地域・商品・顧客をグローバルに多角化する外向きの経営も求められるでしょう。さらに、売り上げ確保を焦って特定の拠点への過度な依存をしないよう、北米、中国、東南アジアとバランスよく収益を上げていく必要があります。

──進境著しい医療機器事業も期待が大きいですね。

郷原 はい。高齢化社会を見据え、いま医療分野で求められているのは、大がかりな手術をなるべく避け、身体への負担を抑える「低侵襲治療」です。これを実現するための血管内治療具、内視鏡治療具を開発・製造しています。具体的には、ガイドワイヤー、カテーテル、ステントなどですね。この分野でも、ばね製造で培ってきた当社の「弾性体微細加工技術」が生かされており、医療トレンドの最先端を行く技術として、当社事業の2本目の柱に育ってくれることを期待しています。

──現在、どのような企業グループを構成されていますか。

郷原 当社と子会社17社(国内8、国外9)、関連会社2社で構成され、自動車関連製品の製造販売が主な事業です。ちなみに海外拠点としては、アメリカ、メキシコ、イギリス、中国、タイ、韓国、インド、インドネシアで自動車部品の製造販売を行っています。

工数を大幅に削減し劇的な合理化を推進

──昨年度から『eCA-DRIVER』を導入されましたが、理由は?

福田 それまでは他社システムを使っていたのですが、手仕訳の部分も多くノウハウの属人化も心配でした。そこで、業務を標準化するためにシステムを刷新することにし、5社ほどのプレゼンを受けました。選択の基準は、「工数が劇的に削減されること」「値頃感があること」「英語に対応できること」「バックアップ体制に信頼感があること」そして「内部・IT統制に耐えうる安定したシステムであること」でした。この条件をすべてクリアしたのがTKCさんだったわけです。さらにいえば、ASP(クラウド)サービスであることと『マネジメントレポート(MR)設計ツール』という機能の存在も『eCA-DRIVER』の採用を後押ししました。

──というのは?

福田 ASPサービスによって、当社自身によるサーバーのメンテナンスが不要になるし、更新作業や法改正への対応もおまかせでやってもらえる。ASPサービスの提案はTKCさんだけだったと思います。また『MR設計ツール』を使えば、データから数字を切り出して自由に経営資料をつくることができます。これも大きなプラスポイントでした。

──導入に苦労されたところはありましたか。

福田 それまでは、手仕訳で多くの伝票が処理されてきたので、開始仕訳を行うための仕訳の分析にやや時間がかかりました。また、自動化にともなってマスタ設定や多様な検証作業が必要になりましたが、この部分は、導入コンサルティングサービスでフォローしていただいたので助かりました。また、海外子会社については、TKCさんに英語のマニュアルを用意していただいたものの、当社独自の運用ルールもあるため、担当者が訪問して2~3日かけて運用方法を説明しました。運用後も、海外は教育の機会も限られるため、レポーティングパッケージに不備があればその都度説明資料を送るなど、コミュニケーションを頻繁にとるようにしています。

──コンサルティングサービスはTKCシステムの「ウリ」でもありますが、いかがだったでしょうか。

植本 前田先生とTKCの担当者の方には導入時に16回、その後、運用をスタートしてからも4回、ご来社いただいています。キックオフから導入、導入後のフォローと一環してしっかりとご対応、サポートをいただき、とても助かりました。前田先生は当然、会計の専門家でありシステムにお詳しく他社への導入経験もありますから、われわれの「このように導入したい」という意思をきっちりくみ取って、的格なアドバイスをもらえましたし、導入後の改善活動にもご協力いただいています。

──システム運用のフローを教えてください。

植本 まず、国内会社は個別決算完了後、データ連携を利用して財務諸表の取り込みを行っています。これで、打ち直すことによる入力の誤りがなくなりました。また、レポーティングパッケージ(RP)は、国内外問わず、子会社側で入力し、各自、整合性チェック機能を利用してエラーがないことを確認した後、親会社に報告します。その後、本社の担当者が連結処理を行うわけですが、貸倒引当金の調整や未実現利益(棚卸・固定資産)、税効果、資本連結、持分法などはすべて自動処理されます。手仕訳は未達処理、科目振替、特殊な持分法仕訳くらいでしょうか。ほとんどの計算がワンクリックで行われるという印象です。また、セグメント情報や連結キャッシュフローなども、直近期比較の異常値チェック程度で出来上がります。いずれにせよ、ヒューマンエラーが減り、劇的な工数の減少ができたのは確かです。これまで3人体制で3日を要していた連結決算業務も、いまでは2人体制でしかも1日半で可能になりました。

──決算完成後は……。

植本 ASPなので、自席でデータを見たり、ダウンロードしたり、あるいは『MR設計ツール』を使って、求められる経営資料を作ったりします。『MR設計ツール』は、レポーティングパッケージの付属資料を作成する際にも使用しており、非常に利用範囲の広いスグレモノだと思っています。

──監査時にも役立っているとか。

福田 監査法人には非常に好評です。クラウドなので、担当の公認会計士の方が自分のPCからリアルタイムに当社の連結データを確認できますし、監査の工数も大幅に減少したようです。それと、面白いのはわれわれの側も合理化ができたことで、公認会計士のような分析作業を行えるようになったことです。たとえば、棚卸未実現利益の数年間の推移を分析して異常値を探り、結果的に子会社の報告エラーやわれわれの処理誤りを事前につぶすことができるようになりました。現在、3四半期連続で監査担当会計士からの修正事項はありません。

──すごいですね。

福田 いえいえ、まだまだ改善の余地はあります。特に海外子会社には課題山積で、たとえばインドとインドネシアには、まだ指導・説明に行けていません。国内外の会計スキルを標準化し、グループ全体として『eCA-DRIVER』の機能を十分に活用できるようにしていきたいですね。

会社概要
名称 株式会社パイオラックス
創業 1933年10月
所在地 神奈川県横浜市保土ヶ谷区岩井町51
TEL 045-731-1211
売上高 485億円(連結・2012年3月期)
社員数 2540名(連結)
URL http://www.piolax.co.jp/

『戦略経営者』2013年10月号より転載

掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、2013年10月現在のものです。
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