堅固な連結グループ経営で“最先端”を走り続ける
1都8県、10の会員生協で組織されるパルシステム生活協同組合連合会。いまでは当たり前となった“個配”のパイオニアとして知られる生協業界のイノベーターだ。そんなパルシステムは、連結会計においてもそのイノベーターぶりを発揮している。『eCA-DRIVER』を運用しながら、複雑な連結決算を見事に実践する管理本部の鈴木隆部長と齋藤誠氏に話を聞いた。
イノベーションを積み重ね高い成長力実現
――パルシステムさんといえば、生協のなかでの“個配”の先駆者として有名ですね。
鈴木 我々は当初、プライベートブランドなどの共同購入で結びついた関東近縁の小規模生協(16生協、現在は1都8県10生協)の集合体でした。しかし、いかんせん後発であり事業規模も小さい。組合員拡大などで伸び悩んでいた上に“1県1生協”への集約を目指す日本生協連合会の方針もプレッシャーになっていました。そのような苦しい状況を打破しようと導入したのが、個人単位の配達、つまり「個配」だったのです。生協といえば班単位の配達「班配」がスタンダードでしたから、これには周囲が驚きましたね。1990年に3つの生協が試験的に導入し、その結果を受けて93年に首都圏コープ連合会(パルシステムの前身)としての取り組みを本格化させたわけです。
――その後は急速に会員数を増やされたとか。
鈴木 共働きの増加、在宅者の減少という近年の世相にフィットしたのだと思います。いままで、「日中は働いていて家にいない」など、入りたくても物理的に入ることができなかった人たちを取り込むことができました。また、従来の「班」組織をつくって共同購入する手法に煩わしさを感じる人たちが増えたことも成長の理由でしょう。当初は、内外からの批判もありましたが、実績を積み上げ、「個配研究会」を立ち上げて全国の生協にノウハウを分け合ったりするうちに、どんどん他の生協も採用するようになった。ご承知の通り、いまではすべての生協で個配が行われています。パルシステムでいえば、現在、個配が全体の9割を占めています。
――インターネットでの販売も早くから取り組まれたようですね。
鈴木 この分野でも我々がパイオニアだと思います。いわゆるネットスーパーが隆盛する以前の2001年に事業をスタートし、登録会員は昨年3月末で33万5000人に上っています。年間受注高は前期で468億円と、全体の供給高(売上高)の約25%を占めるまでになりました。ちなみに、コープネクストという子会社が運営を担当しています。
――カタログ(注文媒体)にも斬新な工夫が施されているとか…。
鈴木 商品カタログはライフステージに合わせて3媒体を用意しています。就学前の小さなお子さんがいる家庭向けの『yumyum』。育ち盛りのお子さんがいる家庭向けの『my kitchen』、そして食へのこだわりをベースに大人のための情報を盛り込んだ『kinari』です。この3媒体を、それぞれのライフステージの家庭にお届けする…これも他の生協にはない取り組みだと思います。
――斬新な取り組みのオンパレードですね。
鈴木 そもそも、1990年までは認められていなかった県域を越える事業連合を、法制化と同時にいち早く実現したのも我々ですから…。
“常に最先端を行く”というのが前管理本部長時代からのパルシステムのスローガンなのです。
「連結」と「結合」を同時に運営できるシステム
――連結会計など経理の分野でも、その“常に最先端を行く”との理念がいかんなく発揮されているように思えます。
鈴木 我々は、2002年にはすでに連結決算書を、正式な決算書の添付資料として提出していました。もちろん、義務づけはされていませんでしたが、上場企業並みの財務管理を実践したかったのです。その後、2008年には60年ぶりの「生協法改定」があり、会計基準が実際に上場企業並みになったことで経理の複雑化が増し、スプレッドシートを使った手作業では間に合わなくなってきた。そのため、システム化を急がなければならないと…。我々は、連結決算と同時に、「結合連結」決算も必要ですからね。
――「結合連結」とは?
鈴木 少しややこしくなりますが、パルシステム生協連合会は、10会員生協の出資で成り立っています。つまり、各会員生協は親会社的な存在で、会員生協とパルシステムとを1つの組織体とみなしたものを「結合」と呼んでいるのです。さらに、精肉や青果仕入、商品のセット、ネット販売、配送などを手がける子会社9社がありますが、これは単純にパルシステムの下のつながれている「連結」ということになります。
――とても複雑ですね。
鈴木 連結決算のシステム化を検討する際、「連結」と「結合」の両方の概念が必要な決算に、唯一「十分対応できる」と応えてくれたのがTKCさんでした。これは、前期からの連結決算に『eCA-DRIVER』の採用を決定した理由の一つにもなりました。
――ほかに、『eCA-DRIVER』を選択した理由は?
鈴木 3社ほど見積もりをいただいたのですが、他社製品に比べて割安感があったことがひとつ。またパルシステムグループの基幹ソフトである『Super Stream』(SS)との親和性が良いというのも大きなプラス要因でした。
――「連結」と「結合」を、『eCA-DRIVER』上で、どのように運用されているのでしょうか。
鈴木 まず、パル・ミート(精肉)やジーピーエス(青果)、パル・ブレッド(製パン)など、パルシステムの子会社である10社の連結決算を行います。さらに、その結果を「結合連結」の情報として取り込む(〔『戦略経営者』2011年2月号51頁〕図表参照)ことで、「連結」と「結合」の両方を運用することができます。
――つまり、重層的な連結決算を行っているということですね。
鈴木 ええ。このような芸当ができるのも、ここ数年で、連結、結合を含めたパルシステムグループのほぼすべての基幹システムをSSで統一してきたからです。それと、SSのデータを自動的に読み込む機能が『eCA-DRIVER』にはありますので、情報の吸い上げの部分での苦労がありません。しかも、あらかじめ勘定科目の基準をつくって、補助科目も含めて統一していますから、情報を統合する際の細かい部分での齟齬も少ない。この「SSへの統一」と、「『eCA-DRIVER』のSSとの親和性」があってはじめてパルシステムの複雑な連結決算が可能になったのだと思います。
――『eCA-DRIVER』の使い勝手はいかがでしょう。
齋藤 連結決算業務の大きな流れのなかで無理なく操作できるところなど、ユーザーインターフェイスが良いですね。とくに、子会社ごとの情報収集や回収管理が一目瞭然で分かりやすい。また、データ連携できない補足の情報も、子会社側がASPである『eCA-DRIVER』に入力すると全部本部に集まってくるのでとても便利です。
シンクライアント型ASPでセキュリティも万全
――ASPを選択された理由は?
鈴木 パルシステムでは、情報セキュリティの観点から、社員の使うコンピュータに最低限の機能しか持たせない、いわゆる“シンクライアント”を採用しています。そのため『eCA-DRIVER』も、ASPでのシンクライアント型にして下さいとの要望をこちらから出し、TKCさんに対応いただいたわけです。
――『eCA-DRIVER』のウリでもある、「会計専門家によるコンサルティング体制」はいかがでしたか。
齋藤 嵜山保先生と福田武彦先生のお2人にサポートをいただき、いろんな意味で勉強になりました。ただ単に自分でマニュアルを見ながら操作するのと違って、連結会計の基本的な概念にまで掘り下げながら指導していただけたので、非常に良かったと思います。たとえば、今中間期に、パルふれあいサービスという子会社が連結子会社から持分法適用会社になった際、決算上、難しい会計処理で、非常に分かりづらかったですが、嵜山先生にその状況を分かりやすく表にしていただいたりしながら、何とか処理できました。私一人だと難しかったと思いますね。
――連結グループ経営において、今後目指されていることは。
鈴木 すでにパルシステムでは、一括仕入れ、商品のセット、組合員の利用料金の回収…と、一連の業務とお金の流れを本部が管理する仕組みになっています。つまり、キャッシュマネジメントシステム(CMS)が、実質的に構築されつつあるのです。これをより推し進め、将来的には完全に資金面で一体化する形を目指したい。連結決算のシステム化とそのブラッシュアップは、そこへ至るための欠くべからざるプロセスだと考えています。
名称 | パルシステム生活協同組合連合会 |
---|---|
業種 | 消費生活協同組合 |
理事長 | 若森資朗 |
設立 | 1977(昭和52)年 |
所在地 | 東京都文京区小日向4-5-16 |
供給高 | 1828億円 |
TEL | 03-5976-6111 |
正規職員数 | 264名 |
URL | http://www.pal.or.jp/ |
『戦略経営者』2011年2月号より転載
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