税務申告の効率化を実践するスパークプラグのトップ企業
車載スパークプラグや各種センサの世界的企業である日本特殊陶業。1936年設立以来、安定成長を続けてきた同社も、昨今の激変する環境に対応するため、「改革」「進化」を標榜しはじめた。『ASP1000R』導入による申告業務の効率化もそのひとつ。経営管理本部経理部の成田宜隆執行役員と寺下和良課長、河内章宏さんに話を聞いた。
世界の自動車メーカーのほぼすべてと取り引き
──世界シェアトップの製品を数多くつくられているとか。
成田 自動車用のスパーク(点火)プラグと排ガス浄化システム用の酸素センサーは、いずれも世界トップシェアを誇っています。当社は、社名の通り、特殊な陶器、すなわちセラミックの製造技術を武器に発展してきました。今も昔も陶器製が主流のスパークプラグは創業時の1936年から一貫して手がけています。酸素センサーも素子にセラミックが使用されていることもあり1980年代に開発、マーケットに参入しました。ちなみに後者は、排ガス規制の高まりのなかでニーズが拡大しつつあります。今後の二輪車への排ガス規制適用も日本のみならず世界的な流れとなっており、今後も伸長が期待できる有望な分野であると考えています。
現在、当グループの売り上げの8割が、このプラグとセンサーという2商品を中心にした自動車関連部品で占められています。
──成長の理由はやはり技術力の高さですか。
成田 セラミック製造をベースにする「森村グループ」によって共有・蓄積された技術力に加えて、モータリゼーションの波に乗りながら、自動車メーカーと一緒になって技術開発に取り組んだ結果だと思います。それと、当社の特徴は、約30の海外拠点を持ち、世界中の自動車メーカーとまんべんなく取り引きしており、偏りがないことです。さらに、主力製品であるスパークプラグには補修市場での需要があり、一時的な新車販売の落ち込みがあっても根強いビジネスです。この二つの特徴が経営的なリスクヘッジになって、景気の波を切り抜けてきました。リーマンショックを最小限のダメージで切り抜けることができたのも、このビジネスモデルのおかげだと思います。
──歴史を見ても会社としての安定感を感じます。
成田 ただ、その安定性にあぐらをかくことは、激動の時代には弱点にもなり得るとわれわれは考えています。過去の常識が明日には通じなくなるかもしれないわけですからね。そのため、当社では、2010年に10年後の当社の姿を見つめた中期経営計画『日特進化論』を掲げました。
──日特進化論……ですか。
成田 はい。最初の3年間を「深化」、次の3年間を「新化」、そして残りを「進化」の期間と位置づけ、2020年にはすべてのステークホルダーに真価(真の価値)を提供することを目指しています。ちなみに今年度は真ん中の「新化」の最初の年に当たります。
──具体的には?
成田 やはりものづくりの部分では新たな柱になる製品の開発がポイントでしょう。もちろんセラミック技術が中心ですが、当社ではオーガニックやメタルという素材も高い技術レベルで扱うことができます。この三つの素材を活用しながら新規事業開拓を進める必要があります。それから、あわせて企業風土や意識改革も手がけています。
──風土・意識改革とは。
成田 多岐にわたりますが、たとえば、「ダイバーシティ」(性差・人種など"違い"の尊重)の推進もそのひとつ。当社は、泥臭いものづくりの企業ということもあり、基本的に男性社会でずっとやってきたためか、現在、女性管理職はわずか4名です。しかし、「ダイバーシティ講演会」や各種研修会を行いながら徐々に意識改革し、女性管理職が普通に活動できる風土を構築すべく活動しています。また、女性に限らず、高齢者や障害者の雇用など、人「財」の多様性を企業の力にしていくような施策を今後も行っていきます。
グローバルビジネスに対応するシステムを採用
──昨年度からTKCの法人電子申告システム『ASP1000R』を導入されました。理由は。
寺下 当社では2003年から電子納税を行っていますが、スプレッドシートでつくった申告資料をそのままイータックス(国税電子申告納税システム)にベタ打ちするというスタイルでした。しかし、税制は毎年のように変更されるので、手打ちで対応するにはかなりの手間がかかります。しかも、やればやるほどスプレッドシートなどのロジックが複雑化して、プロセスの属人化が進む。「これはなんとかしないといけない」と、業務標準化のためのパッケージソフト導入を検討しはじめたのです。
──なぜTKCのソフトに?
寺下 もちろん、TKCさんのほかにも複数のソフトを横並びで検討しましたが、なかでも、『ASP1000R』の「機能の充実」が抜きんでていました。成田が述べた通り、当社はグローバルにビジネスを展開していますので、外国税額控除の計算が必要です。あるいは投下資本の早期回収のための特別償却なども頻繁に行われるので別表の種類が多い。ここにすべて対応しているのがTKCのシステムだけだったというわけです。
それから、もうひとつ、導入に当たって、税務と会計の専門家であるTKC全国会の税理士先生のサポートを受けられるというのも採用の大きな理由でした。当社にとってははじめての申告納税システムの導入ですから、入力方法などさまざまな意味で不安がありましたからね。実際、導入の際には3日間、星加事務所の星加雅伸所長、淺野令子税理士、中根恵美税理士の先生方に懇切丁寧にご指導いただきました。また、その後も疑問点には星加事務所あげて対応していただき、導入はとてもスムーズにいったと思っています。
──便利だと感じた機能は?
河内 先ほども述べましたが、やはり、ロジックが複雑な外国税額控除を自動計算してくれるところですね。外国税額控除は、税制改正で限度額が頻繁に変わりますので、対応するのにかなり大変でした。これが、『ASP1000R』ではシステム上で自動変換されるわけですから、すごく安心感があります。
地方税の申告もワンクリックで完了
──ほかには?
河内 地方税が自動計算されるのも助かりますね。当社では16の事業所が、市と県で合わせて33の自治体に地方税を納めています。地方税というのは森林税だとか超過税率だとか細かいところが毎年のように変わります。これまではこれをいちいち調べ上げて修正していたわけですが、地方税率マスターを搭載している『ASP1000R』ではその必要が一切ありません。それと、以前はエルタックス(地方税ポータルシステム)を導入していなかったので、申告書を印刷して宛名を書いて封入し、各事業所に送るという作業を行っていました。その業務だけでも2、3日かかっていたように思います。しかし、『ASP1000R』のおかげで、いまではワンクリックで瞬間的にエルタックスに流れますから、大変な業務の効率化です。
──手間がかからなくなったと…。
河内 はい。その意味では別表間の整合性をチェックする機能なども、実務者としてはとてもありがたいですね。ある別表の数字を入れたり修正したりすると、別の別表に入るべき数値が連動して表示されるわけですから。これまでも、スプレッドシートの検算機能を使ってある程度の自動化やチェックを行っていましたが、そもそもわれわれが手作業でつくったものですから、その検算のロジック自体が合っているのかどうかという疑問がありました(笑)。
──今後はいかがでしょう。
河内 あとは子会社へのシステム導入でしょうか。実は、今回TKCのソフトを採用した理由には、連結納税への移行という将来展望もひとつありました。当時から「連結納税はTKC」というイメージでしたので、だったら『ASP1000R』を入れておいた方が後々スムーズかなと……。いずれにせよ、『eConsoliTax』(連結納税システム)の導入検討も含め、連結納税は近い将来実現すべき課題だと考えています。
名称 | 日本特殊陶業株式会社 |
---|---|
設立 | 1936年10月 |
所在地 | 愛知県名古屋市瑞穂区高辻町14-18 |
売上高 | 3,028億円(2013年3月期連結) |
TEL | 052-872-5915 |
社員数 | 12,563名(2013年3月期連結) |
URL | http://www.ngkntk.co.jp/ |
『戦略経営者』2013年12月号より転載
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