複雑極まる固定資産管理をシステムの力で簡便化
産業用の受電設備、分電盤メーカーとして大手に数えられる内外電機。業況の良さに加え、丁寧・迅速な製品づくりを武器にここ数年堅調な業績を続けている。そんな同社も、固定資産管理に手を焼いた過去があった。同社の美馬哲夫常務取締役、長浜久幸経理部部長、久代浩司課長代理、税理士法人未来財務の中野洋税理士、河越一成氏に、その「解決法」について話を聞いた。
──2020年に創業100周年を迎えられるとか。
美馬哲夫常務取締役
美馬 当社は大正9年、現在の社長(丹羽一郎)の祖父である故丹羽長三が「丹羽金属製作所」として創業したのがスタートになります。当初は、金属加工などを業容の中心にしていたようですが、昭和28年に「内外電機製作所」という社名で法人成りをし、その頃には「電力の安定供給」が日本の喫緊の課題になってきたこともあって、受電・配電の分野に進出していました。
──受電・配電とは?
美馬 通常、発電された電気は送電線を6600ボルトで通ってきますが、そのままの電圧では使えません。当社では、それを受電し、適正な電圧に下げながらさまざまな動力に配電していくためのキュービクル式受電設備、分電盤(スイッチボード)、監視盤、制御盤などの装置を製造しています。家庭用は少なく、工場やショッピングモールなど向けの産業用がほとんどです。コンビニ店舗の脇などに見かける縦型のボックス型装置があるでしょう。あのタイプがそうです。
──製品の特徴は?
美馬 基本的には標準化された規格品をベースに、顧客のニーズを聞き、一つひとつ設計をするイージーオーダーを行っています。そこが特徴でしょうか。なかには標準規格品を大量生産するメーカーもありますが、当社は、装置の形や窓の装着など、ある程度の要望を聞き入れる体制を整えているのです。つまり、規格品とオーダーメードの中間ですね。
──昨今の業況はいかがですか。
美馬 いまは一段落しましたが、数年間は太陽光発電が活況でした。当社では、太陽光パネルで発電された200ボルトの電力を、送電線を通すために6600ボルトへ上げる「逆の」作業を行うための装置がよく売れました。現在は、東京オリンピックを控え、建築需要はやはり増えてきています。
──楽しみですね。
主力生産拠点の山梨工場では、多彩な受電・配電設備が日々生産されている
美馬 ただ、当社は、「より豊かな社会を実現する」ことを目的としている会社であり、そのためのインフラ整備の一翼を担っているという自負があります。なので、急成長は目指していませんし、他社のシェアを狙うなどといった発想もありません。顧客をはじめとするステークホルダーと共存共栄しながら、確実に、そして丁寧・迅速に仕事をこなしていくことが当社の役割だと考えています。
──今後の課題は?
美馬 あえていえば、変電設備の効率をより高めていくことでしょうか。当社では量的な拡大を目指すのではなく質的に会社を良くしていくことを方針としており、その意味でも、地道な顧客満足(CS)、従業員満足(ES)に今後も力を入れて、仕入先や協力会社と共存共栄を目ざしていきたいと思っています。
懇切丁寧なサポート体制が最大の効果を引き出す
──『FAManager』(TKC固定資産管理システム:以下FAM)を導入した経緯を教えてください。
長浜久幸経理部部長
長浜 前々期決算の際に、既存のERPソフトのなかの固定資産管理システムを使用して、法人税申告書別表16(定額法、定率法、リース期間定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書)を出力しようとしたらできないんですね。そこで顧問税理士の中野洋先生に相談した上で、TKCの『FAM』導入を決断したわけです。
──どうして、前のソフトでは作成できなかったのでしょう。
久代 導入したソフトには別表16の作成機能が搭載されておらず、かつ税制改正への対応など一部のアップデートがされていなかったため、減価償却費等を正しく計算できませんでした。サポートしているベンダーに問い合わせても、タイムリーな回答がなく、その時は、非常に困惑しました。
中野 法人税申告書作成に当たって、別表16が出ないというのは大変なことです。応急処置はできたとしても、今後を考えたらシステムの変更が必要だろうと……。それで昨年の7月に『FAM』を提案し、月内に導入決定、10月から本稼働させました。
久代浩司課長代理
久代 日頃から経理を見ていただいている中野先生がTKC会員で助かりました。また、導入時や導入後に関しても、中野先生はもちろん、河越(一成)さんなど税理士法人未来財務の方々のサポートのもと、とてもスムーズに固定資産の申告ができる体制が整ったと思っています。とくに導入時の「固定資産登録サービス」と「読込・入力結果検証支援サービス」はありがたかったです。はじめて触るシステムでデータの登録と検証を手取り足取りやっていただけるわけですからね。
──税理士法人未来財務さんのコンサル体制は?
河越 私ともうひとり担当者の2人体制で丁寧なサポートを心がけています。事務所として、TKCのソフトのコンサルティングは普段からしているので、ちょっとした相談程度ならほぼスタッフ全員が対応できます。
久代 その辺がありがたいところです。従来の会計ソフトやERPソフトでは、コンサルする方が、なかなか対応してくれなかったり、システムには詳しくても税制面での知識が薄かったりと、こちらにかかる負荷が大きかったのですが、『FAM』ではそのあたりがすべて解消された印象です。
──導入後はいかがでしょう。
久代 以前は、登録した資産データが申告書等へ正しく反映しているかどうかなど、常に不安にさいなまれていました。しかし『FAM』では、固定資産の登録から会計・税務まで一気通貫に連携しているので、ほぼ自動的に正しい回答が出てくるので安心です。それと、クラウドシステムであることも大きいですね。税理士法人未来財務さんからもリアルタイムに見ていただき、適切にアドバイスしてもらえますし、疑問点も即座に解消できます。加えて、定期的に年2回のバージョンアップが自動的になされるので、税制改正の内容なども常に最新情報に更新されていますから、以前の不安感はまったく払拭(ふっしょく)されました。
中野洋税理士
中野 とにかく今年(昨期の法人税申告)は楽でした。ダイレクトにデータをやりとりできますからね。別表16なども簡単に作成できるようになりました。
河越 去年まではデータを内外電機さんから受け取り、算出された結果を確認するといった作業を繰り返していました。そのため、別表16作成に丸一日、10時間くらいかかっていたのですが、いまではそれが1時間ほどに短縮されました。すごい効率化です。
長浜 『FAM』を導入したからこそ、問題の所在が分かったのだと思います。いままでは、更新やサポートは、ベンダーさんの方できっちりやっていただけるものと思い込んでいました。でも、実際は違っていたんですね(笑)。TKCさんのおかげで勉強させていただきました。
──それにしても、内外電機さんと税理士法人未来財務さんとの関係性は深いようですね。
中野 ちょうど10年前、内外電機さんが業績的に苦労されていた際に、監査法人の紹介で顧問のお話をいただきました。そこからかかわらせていただくようになり、苦境を一緒に乗り越えてきました。そのような経緯のなかで、今回、『FAM』導入につながったというのは感慨深いものがありますね。その後も順次、他のTKCシステムにも興味を持ってもらえるようになってきました。
河越一成氏
河越 長浜部長、久代課長代理はじめ経理部の方々が、監査なども税法にのっとってきっちりと行われ、非常にまじめに取り組まれており、大変勉強になります。
中野 それと「緩い方」へ向かうのではなく、あえて「厳しい方」へと会計を整備していく意識をお持ちなのには感心します。それが社風なのでしょうね。
──『FAM』導入にともない『e-TAX償却資産』も無償提供されましたがいかがでしたか。
久代 とても助かっています。以前は当社が償却資産を申告する約30カ所の市町村ごとに、資産明細を確認し、さらにプリントアウトして郵送するという、神経を使い手間がかかる作業を延々1日がかりで行っていました。封筒につめて、切手をはり、400円くらいかかる簡易書留で送っていたのです。それが料金もかからず、ワンクリックで電子申告できるようになった。『FAM』との連動で、いまや償却資産の申告をしている実感さえないですね。
名称 | 内外電機株式会社 |
山梨工場 |
---|---|---|
設立 | 1953年4月 | |
所在地 | 大阪府大阪市中央区本町4-6-17 | |
売上高 | 180億円(2016年3月期) | |
社員数 | 640名(2016年3月現在) | |
URL | http://www.naigai-e.co.jp/ |
『戦略経営者』2017年7月号より転載
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