海外子会社を会計でまとめる「接合技術」のスペシャリスト
接合機器・材料からFAや電子制御機器、ITソリューションまで幅広くものづくりの分野に携わるナ・デックス。メーカーと商社が融合したその形態には、独特の存在感がある。そんな同社が今取り組んでいるのはグループの一体化だ。特に海外子会社の迅速かつ正確な業績把握のために、TKC海外ビジネスモニター(OBM)導入を決断。進藤大資取締役管理本部長、経理部の城谷啓介部長、鈴木裕さん、そしてコンサルタントの上島大慶公認会計士・税理士に話を聞いた。
──接合装置、特に抵抗溶接制御装置では圧倒的なシェアを持っておられるとか。
進藤大資取締役管理本部長
進藤 創業当時は主に溶接する際に使用する材料である「溶材」を卸売りする商社でした。しかし、取引先からのご要望により、自動車のボディーなど、重ね合わせた金属板に大電流を流すことにより溶融させて溶接する抵抗溶接の制御装置の開発に取り組み、メーカー兼商社へと転身したわけです。
──どこからの要望だったのでしょうか。
進藤 土地柄、やはり自動車メーカー様です。当社の抵抗溶接制御装置は、お客様のご要望に沿うために、開発を重ねてきました。現在は、ほぼすべての日系の自動車メーカー様と、米国BIG3をはじめとする海外自動車メーカー様にもご採用いただいており、結果、抵抗溶接制御装置に関してはシェアナンバーワンとなっています。
──競合もあるとお聞きしますが、なぜシェアが高いのでしょう。
進藤 1つ目の理由は、「適応制御」という当社の高付加価値技術です。これは溶接する対象に応じて、溶接条件を自動的に最適化させる技術のことです。2つ目は機器の性能・耐久性の高さなどの品質面。そして3つ目、これが一番大きいかもしれませんが、「顧客密着」体制の徹底です。溶接は、お客様ごとに条件がまったく違いますので、そこに適切に対応していく。加えて、アフターサービスといったサポート体制を万全にする。海外展開もそのひとつで、日系メーカー様による生産拠点の海外移管に先行ないし同期する形で、現地に拠点を設けるようにしています。
──ここ数年は売上高の伸びが著しく、特に米国での伸びがすごいですね。
グローバルな供給体制を構築
進藤 当社の長期的ビジョンとして、世界のすべての自動車に当社の技術を使っていただけるような未来を実現したいというのがあります。そのためには、グローバルでの体制強化が必須であり、米国の関連会社であったウエルディングテクノロジー社を完全子会社化しました。米国経済の好調さもあり、非常に順調に推移しています。技術的なことを言えば、アルミのスポット溶接に代表される米社のすぐれた部分と当社の技術を融合させるシナジー効果があります。
──事業セグメントは?
進藤 まず、電気・電子部品やITソリューションの単体販売からユニット化・システム化の提案も手がける「エレクトロニクス・コンポーネント事業部」。産業機械の汎用機から生産ラインまでトータルに構築し、アフターフォローも手がける「FAシステム事業部」。そして当社が長年培ってきた抵抗溶接に関わる製品と接合の新工法たるレーザに関わる製品を扱う「ウェルディングソリューション事業部」があります。
──レーザを使って溶接するのですか。
接合の先端技術を追求
進藤 はい。従来、自動車のボディーの素材と言えば鉄でしたが、アルミ化が進んでいます。また、さらなる軽量化のために炭素繊維強化プラスチック(CFRP)も使われている。そんな「新素材」を接合するためにはレーザ溶接が必要なのです。当社では、福井県に研究所を設け、世界最高出力を誇る100キロワットの出力を持つレーザ装置を導入するなど、新たな工法開発に取り組んでいます。
また、レーザについては海外メーカーの製品が中心であり、多くの日系企業も海外製品を使用しています。当社は、お客様へのサポートの充実のためレーザの国産化にも取り組んでおり、今後は国産ならではの「顧客密着」という強みを発揮していきたいと思っています。
──海外展開にも注力されているようですね。
進藤 現在、米国2社、タイ2社、中国、インドネシア、メキシコと、計7社の拠点を持っています。当社製品の納入実績は世界47カ国におよび、「ものづくり」は今後もグローバルに拡大すると予想されますので、必要に応じて新たな拠点開設も検討していきたいと思っています。
海外子会社の見える化がグループの一体化をつくる
──そのような状況のなかでグループをまとめていかなければなりません。難しいのでは?
左から上島大慶公認会計士・税理士、鈴木裕氏、
進藤大資取締役、城谷啓介部長
城谷 従来、海外子会社、特にアジアでは、それぞれの会社がそれぞれの財務諸表を作成して送ってくるという状態でした。報告は遅れがちで、期限通りになかなか提出されない。また、提出されたデータを確認し、不明な箇所についてはメールで質問し回答をもらうといったことが繰り返され、タイムリーなグループ業績の把握に課題を抱えていました。
鈴木 言語も中国語やタイ語などが混在しているので、意味を推測しながら集約するのですが、各社のシステムも科目体系もバラバラで多くの時間と労力を費やしていました。各国の税法はそれぞれ違うので、その国に合わせた体系にならざるを得ないわけです。
──それではダメだとOBMの導入を決断されたわけですね。
城谷 そうです。そういった問題を解消して集中管理したいというニーズが社内に常にありました。しかし、ERPを導入するとなるとそれこそ何億円の世界になってしまう。現地の業務量を変えず、なるべくコストをかけずに簡単にやりたい。それで、仕訳データ、試算表をそのまま送ってくれさえすれば一括管理できるOBMに引かれたのです。
──実際、使われてみていかがでしたか。
鈴木 同じ書式で各子会社の業績を並べて見ることができるので、とても便利になったと思います。エクセルに切り出して自在に帳表がつくれる「マネジメントレポート(MR)設計ツール」の存在も大きい。それから、現地データが英語や中国語だったりしますが、それをOBM内の統一勘定科目とひも付けていますので、日本語にすぐに変換できる。これは分かり易いです。また、OBMには翻訳機能もついていますから、大変助かります。
──ご苦労された点は?
鈴木 中国の会計ソフトでは、例えば利益剰余金などで特殊な仕訳が生成されるなど、統一勘定科目とのひも付けに苦労しました。ただそこは、上島大慶(公認会計士・税理士)先生をはじめ、TKCのコンサルティング体制の手厚いサポートに助けられました。
──上島先生のご感想は?
上島 中国の会計に特有な部分を日本の会計とどう整合させていくかが課題でした。科目のひも付けには城谷部長と鈴木さんも立ち会い、とにかく「これで行きましょう」と決断していただきました。それをもとにこちらで検証していったわけですが、これまで私が導入を経験した他社よりもはるかにスムーズにいきました(笑)。加えて、鈴木さんはエクセルのスキルが高く、操作方法をお伝えするとすぐにできてしまう。例えば、MR設計ツールにもすぐに慣れていただき、活用いただきました。
──最初は中国で、その後、タイの2社に導入されたとか。
上島 タイはまた会計の体系が違いますからね。中国の体系に合わせた設計の上にさらにタイへ合わせなければならない。これも結構大変でした。科目体系の設計を組み直す作業を、城谷部長、鈴木さんと一緒に行い、うまく3社が整合するように設計し直しました。しかしそれも、お二人の協力のもと、とてもスムーズにいったと思います。
──効率化という面での効果は?
鈴木 まだ導入したばかりで実績としてはありませんが、月次の財務報告が遅れがちだったものを早められそうです。会計システム内のデータが固まり次第送付してもらえば、あとはこちらで仕訳レベルまで検証できるわけですから。もちろん、不正防止などのガバナンス面の役割も期待できます。先方に「見ていますよ」とはっきり示せるわけですからね。
城谷 それから大きいのはクラウドだということ。経理部門だけでなく、経営者も営業本部もどこからでも入っていけるので非常にスピーディーな数字の共有化が可能になります。
──会社としてのOBM導入の意味は?
進藤 グループの一体化は当社にとって重要なテーマです。財務戦略はその核の一つとなるもので、そのためには「見える化」が絶対条件。経営分析にしてもデータが見えなければできませんから。その意味で、OBMは当社全体の経営戦略にとっても有効なツールの一つだという認識です。
名称 | 株式会社ナ・デックス |
|
---|---|---|
設立 | 1950年10月3日 | |
所在地 | 愛知県名古屋市中区古渡町9-27 | |
売上高 | 314億円(連結2015年4月期) | |
社員数 | 565名(連結2015年4月30日現在) | |
URL | http://www.nadex.co.jp/ |
『戦略経営者』2016年4月号より転載
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