システム・コンサルタントの協力のもとに税務申告業務の確立と多能工化を進める
法人税申告システム(ASP1000R)導入で電子申告を実現
ASP1000R導入事例
自動車用バックミラー製造国内最大手の株式会社村上開明堂。創業以来140年にわたり、その高い技術力を通して世の中に貢献し続けてきた。
電子申告義務化への対応を果たした同社は、今後属人化しやすい税務申告業務についてどのように考えているのか。同社経理財務部の河村雄介さんと村石智恵美さんのお二人に話を聞いた。
(※システム・コンサルタントの山田貴弘先生(山田貴弘税理士事務所)からのコメントも掲載しています)
「ASP1000R」採用前の状況
2021年4月に法人税申告システム「ASP1000R」を導入されました。それまでの申告書作成や、電子申告の状況はどうだったのでしょうか。
左から村石さん、河村さん
河村 当時、法人税、地方税、消費税の申告書作成は、属人化していました。スプレッドシートで集計した数値をベースに、A社システムで法人税、地方税、消費税の各申告書を作成し、税理士のレビュー後に書面による申告をしていました。
私は、2020年6月に入社して間もなく、電子申告義務化対応のチームに入りました。それまで申告書を作成した経験がなかったため、財務諸表類のデータ変換や電子申告システムの操作性の検討などを担当しました。
ASP1000R採用のポイント
ASP1000R導入の検討をはじめたきっかけは。
河村 電子申告義務化の対応期限が迫っていたことから、どのように実現するか情報収集し、チームで議論を重ねました。
既存のA社システムは電子申告対応版ではなかったため、他のシステムを利用することも含めて検討しました。そうした中で浮上したのがTKCのASP1000R でした。その後、①A社システムの電子申告版の購入②ASP1000Rの採用③国税e-Taxソフトおよび地方税PCdeskを利用――の3択に絞りました。
最終的にASP1000Rを採用した理由を教えてください。
河村 TKCの営業担当者からアプローチがあった際に、ASP1000Rについてとても丁寧にご説明いただきました。
申告書作成機能で特に優れていると感じたのは、「別表間の連動」「税率マスター(特に地方税)」「操作の分かりやすさ」といった点でした。
電子申告機能については、「財務諸表類の電子申告データの作成が容易」「電子申告に至るまでの操作の分かりやすさ」などで、チーム内で高く評価されました。
加えて、「導入コストが手ごろである点」「導入後のフォロー体制が充実している点」なども含めてトータルで評価し、最終的にASP1000Rを採用することに決めました。
ASP1000R導入時の状況
システム導入はスムーズにいきましたか?
河村 実はシステム導入が決まったのは対応期限が間近に迫った2021年3月だったんです。2021年3月期の申告を導入したばかりのシステムを使って電子申告まで実施するという過密なスケジュールでした。税務担当者は、決算、開示作業まで担当していたため、申告書作成経験のない私が、ASP1000Rの入力を担当することになりました。
システムの操作トレーニングも兼ねて前期残高作成のため、最初に2020年3月期の申告書を復元するところまでは何とかなりました。しかし、2021年3月期の申告書の完成にはなかなか至らず、最終的には、税務担当者が従来のやり方で申告書を作成し、顧問税理士の助けを借りて電子申告を実施しました。
なるほど。そのときの反省を踏まえて、次年度に向けてどのような改善策を考えたのですか?
河村 税務担当者とも相談し、申告業務を分担できる仕組みとするためメンバーを増やすとともに、申告書を作成するためのスキルを身に付けられる教育環境を構築することにしました。
村石 私はそのときに、税務申告業務のメンバーに入りました。それまで連結決算の担当でしたが急遽、税務申告業務も担当することになりました。申告書作成の経験は皆無で、最初は連結決算業務にもプラスになればよいという程度の認識でいたのですが、いろいろ話を聞くうちに、新たな業務領域として取り組むしかないと思いました。
システム・コンサルタント事務所との個別コンサルタント契約
教育環境の構築のためにどんなことをされたのでしょうか。
河村 システム導入研修会が終了後、本来なら運用支援サービスを受ける場において、社員教育の進め方についてTKCの皆さんに相談させてもらいました。システム・コンサルタントの山田貴弘先生からは、実際のデータに基づき実施する、個別研修会の継続開催を提案いただきました。山田先生とは2021年10月から2022年3月までの半年間のコンサルタント契約を結んで、個別研修会を継続開催することとなりました。
個別研修会はどのような形で実施したのですか。
河村 基本的には、山田先生に当社にお越しいただき、個別研修会を継続開催していただきました。
山田先生には、まず当社の申告データの基となる、バックヤードデータの確認から実施していただき、その後、①「法人税の考え方」②「別表4や別表5(1)の位置づけ」③「申告前の集計データと申告書データの繋ぎ方」④「CSV取り込みデータの作成方法」⑤「ASP1000Rの復元方法」⑥「復元データの検証」――などを毎月1回ほどのペースでレクチャーしていただきました。
個別研修会の感想をお聞かせください。
村上開明堂ロゴの変遷
村石 山田先生には、基礎的なレジュメを作成してもらった上で、別表4や別表5(1)の注意点を中心に説明していただきました。当社の申告書ではどのように反映されているかなど、大変分かりやすく解説してもらえて大変ありがたかったです。
また、2021年3月期の申告書をASP1000Rに復元していく上での注意点なども、ホワイトボードで解説していただきました。山田先生の作られたレジュメを土台に、申告書を一緒に作り上げて行く内容で、理解が深まりました。
決算時に会計士の方に実務面の話を聞くケースはこれまでもよくありましたが、税理士の方とこれだけ近い距離でお話できるのは初めてのことでした。こんなに率直に話をしてよいのかと感じましたね(笑)。
河村 私も正直なところ、山田先生に救われた思いでした。2020年3月期の申告データの復元作業では、意味が分からずに別表4や別表5(1)を作成してしまいました。そんな私でも加算、減算の内容を実務と照らし合わせて解説いただいた山田先生のレクチャーは非常に分かりやすく、ASP1000Rに各別表調整の意味を理解しながら入力できるようになりました。
また、「CSV読み込みのためのデータ作り」や「入力のためのバックデータの作り方」などもご支援いただき、ASP1000Rの入力に合わせた業務手順を構築できました。結果として、入力工数の削減やヒューマンエラーの削減につながったと考えています。
個別コンサルタント契約については、初年度が終了した後も継続されましたね。
河村 翌年度においても個別契約を継続しました。2年度目は、①ASP1000Rの活用による業務の効率化②消費税の考え方③新メンバーへの個別研修会の実施――を中心テーマとしました。税務申告業務は特殊事情も多くて業務が属人化しがちですが、全ての担当が同じ知識を身に付け、全員で業務を分業できるようにすることを目指しました。
その後のASP1000Rの活用状況はいかがでしょうか?
河村 2022年3月期の申告においては、法人税、地方税、消費税ともに電子申告まで完了していますが、山田先生に完全サポートいただいたので、いつの間にか完了したという印象です。
また、電子申告義務化3年目の2023年3月期においても、山田先生の支援もいただき完了しています。本年度2024年3月期は、社内メンバーだけで完結するよう進めたいと考えております。
村石 今年からは、消費税申告書の入力を担当する予定で、現在、事前準備をしているところです。分からなければ、山田先生にご指導いただきながら、本番申告も進めて行く予定です。
「インボイス・マネジャー」の導入について
ASP1000Rに続き、TKCの「インボイス・マネジャー」も採用されました。その理由をお聞かせください。
河村 電子帳簿保存法における電子取引の電子保存義務化に伴い、システムに頼らざるを得ませんでした。インボイス・マネジャーの採用を決めたのは、以下の3点からでした。
①ASP1000R利用の満足度とTKCシステムに対する安心感があった
②インボイス・マネジャーが分かりやすいシステムだった
③営業担当者の対応が親切で説明も分かりやすい
最初は、経理部門で立ち上げてマニュアルを作成し、その後全社へ展開、現状問題なく運用できております。
グループ会社にもインボイス・マネジャーをご紹介いただいているそうですね。
河村 当時、各グループ会社も電子取引の電子保存対応に困っており、当社で利用を開始したインボイス・マネジャーの話をさせていただきました。採用したグループ会社2社には、当社で作成した「Q&A集」なども共有しています。各社とも、問題なく稼働できているようで安心しています。
これからの経理業務のDX化ついて
最後に、今後の経理業務のDX化について教えてください。
河村 電子申告業務に関しても、電子帳簿保存法においても、義務化という枠組みの中で、否応なく対応せざるを得ませんでしたが、今は紙での管理に戻りたくはないと思っています。
今後は、申告関連業務であれば、電子納税まで進めたいですし、電子帳簿保存法関連では、ペーパーレス化をどのように実現できるかを模索していきたいと思っています。TKCさんのシステムの今後のレベルアップについても期待しております。どうぞ、よろしくお願いいたします。
山田貴弘先生(山田貴弘税理士事務所)
山田貴弘先生
ASP1000R導入当初から、システム操作などのご相談を受けておりましたので、個別サポートについては、その延長のような流れで行っております。今回の個別研修の1年前に法人税科目を取得したばかりでしたので、勉強した知識が生かせる場として、また自分自身の経験にもなる場と考え、個別研修を引き受けさせていただきました。
研修テキストは、簿記学校の教材なども生かしながら、河村様と村石様の目線に合わせて、ほぼ手作りで行いました。研修では、当時の税務担当者様にも参加いただき、実際の申告書に展開させるデータが、企業内でどの様に生成され管理されていくかを伺いながら申告書への記載方法やシステムへの入力方法の説明を進めて行きましたので、私自身も大変勉強になりました。河村様、村石様の熱心な受講姿勢にも、大変感謝しております。
今後も村上開明堂様の事業内容への理解を深め、税務業務の標準化と効率化のサポートができるよう取り組んでまいります。
会社概要
株式会社村上開明堂
- 設立
- 1948年3月27日
- 従業員数
- 3,760名(連結)※2024年3月期
- 売上高
- 1,046億円(連結)※2024年3月期
- 所在地
- 静岡県静岡市葵区伝馬町11番地5
- URL
- https://www.murakami-kaimeido.co.jp/
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