ユーザー事例

三井松島産業株式会社 様

税効果計算のシステム化で連結納税への基礎を固める

三井松島産業株式会社

創業100年超を誇る炭鉱経営のプロ、三井松島産業。近年では、「石炭事業」という創業事業のほかに、M&Aなども活用した多角化戦略も進めている。そんな積極経営のリスクヘッジとして採用したのが連結納税制度。同社経理部の永川悟グループリーダー、里原悠哉公認会計士、そしてシステムコンサルタントの占部輝次税理士に話を聞いた。

──『eTaxEffect』(税効果会計システム)を導入された経緯は?

永川悟グループリーダー

永川悟グループリーダー

永川 連結納税制度の導入の可否をめぐって、どれだけの節税効果があるのかを検証することが必要でした。特に連結納税では税効果会計が非常に複雑化するため、従来のやり方では難しいのではないかと……。一度、スプレッドシートで計算してみたのですが、やはり不安が残りました。当社は上場会社ですので、業績発表後の税額計算誤りによる決算修正は許されませんからね。そこで、連結納税導入の検討段階からシステム『eTaxEffect』を導入し、システムに合わせた業務体制を構築することにしました。その結果、税額や税効果への影響だけでなく、決算業務への影響を本番と同じ仕組みで確認することができました。実際に、システムで計算してみると想定した金額と異なっていたことがあり、システムに気づかされることもありました。

──連結納税採用の目的は何だったのでしょう。

永川 当社では近年、M&Aによる事業の多角化や新規立ち上げ事業への取り組みを進める中で、子会社が増えてきています。
 新規立ち上げ事業の場合、初期に赤字が発生する可能性もあります。このような状況の中、主にグループ間の損益通算と繰越欠損金の有効利用による節税メリット、投資へのリスクヘッジを図る目的で連結納税の採用が検討の俎上(そじょう)にのぼったわけです。

──なぜ、TKCのシステムを選択されたのでしょうか。

永川 導入実績が豊富で税制改正への迅速な対応も期待できたこと。そしてなによりも連結納税制度の導入について身近に相談できたことに魅力を感じました。

── システムの利用頻度と範囲を教えて下さい。

永川 年4回の四半期決算と年1回の予算策定で利用しています。予算策定では、連結納税対象子会社に『eTaxEffect』を使用して数字を打ち込んでもらい税額と税効果計算をおこなっています。また、必要に応じて、予算の見直しをおこなう場合は、親会社のみで利用しています。

──導入に際しての苦労は?

永川 連結納税を導入しても、これまで通りの期限内で東証の決算発表が求められます。そのため、決算時における連結納税の税額算出業務をどれだけ効率化し、短縮できるかが当初の課題でした。そこで、プロジェクト立ち上げから1年、連結納税対象子会社(10社)の足並みをそろえることに最も力を注ぎました。その意味ではシステムコンサルタントの占部輝次先生の存在は大きかったと思っています。分からないところはすぐに応えていただけますし、子会社向けの研修講師やシステム入力結果の検証をしていただけたことで、初めての連結納税業務にも安心して取り組むことができました。

占部輝次税理士

占部輝次税理士

──占部先生のご感想は?

占部 担当の永川さんも里原さんも非常に会計・税務に詳しく、また、特殊な経理処理が必要な場合は、『eTaxEffect』にうまくのるように工夫されていましたので、親法人の方は心配ありませんでした。
 一方、子会社の担当者は、会計処理の違いや税務に関するご経験に差がありました。そのため、子会社担当者向けの研修会の際には、はじめに税効果会計や連結納税制度の概要をお伝えさせていただき、その後にシステム操作方法を説明するなど参加いただいた担当者全員に説明内容を理解いただけるよう工夫しながら講義をしました。また、各子会社のシステム入力の結果を当事務所がフィルター役としてチェックして、ミスしている部分を「テスト入力の結果検証報告」としてフィードバックする仕組みで進めました。結果として、非常にスムーズなシステムの導入ができたと思います。

監査・社内報告資料をMR設計ツールで迅速作成

──具体的な導入効果を教えてください。

里原悠哉公認会計士

里原悠哉公認会計士

里原 主に4つあります。まず、TKCさんのシステムは税制改正などへの対応も万全なので、①従来のスプレッドシートのメンテナンスにかかる時間が削減できました。また、単純な計算ミスがなくなり②決算の業務精度が向上しました。そして③システム利用と併せて、システム入力用の連結パッケージ(親会社が子会社や関連会社から入手する、連結財務諸表を作成するための基礎情報)を親会社で作成し各社へ提供することにより、税金・税効果計算の一連の処理をグループで統一することができました。さらに④監査対応においても、システムの出力帳票により求められる情報を迅速に提供することができています。

──特に活用されている機能はありますか。

里原 『eTaxEffect』のオプション機能であるマネジメントレポート(MR)設計ツールは、作成したい帳表をスプレッドシートに自由にデザインすることが可能な上、数値が変わるたびにシステムと連動した関数によって自動更新できる仕組みとなっており、大変便利です。特に監査資料や社内報告資料を作成する際に、一度この機能でフォームを作成しておけば、次からは自動更新により作成でき、手間がかからないので非常に助かっています。また、決算数値の検証、税制改正による影響額のシミュレーション、中期計画の税金費用試算などにおいても、MR設計ツールの機能が作業の効率化につながっています。 

──今年3月期には『eConsoliTax』(TKC連結納税システム)を導入されました。

永川 これで連結納税システムの導入が完了しました。今後の目標は「業務の属人化を排除し、複数人で対応できる体制」をさらに強化していきます。また、TKCシステムの導入によって、グループ会社間の経理担当者とのコミュニケーションが密になるといううれしい副次効果もありましたので、これをより一層推し進め、グループ全体の税務業務のスキルアップと業務の標準化につとめていきます。

企業紹介

安定的な事業ポートフォリオの構築へ

リデル炭鉱(オーストラリア)

リデル炭鉱(オーストラリア)

メガソーラー事業にも取り組む

メガソーラー事業にも取り組む

 三井松島産業は、1913年の創業以来、長年培ってきた炭鉱経営のノウハウと高度な採掘技術を生かし、祖業である石炭生産事業を通じて日本の資源エネルギーの安定供給に取り組んできた。

 1970年代以降、国内炭鉱の構造的な斜陽化が進むとともに、国内での炭鉱経営から撤退(2001年)。そして海外炭鉱の開発へと舵(かじ)を切り、オーストラリアのリデル炭鉱への資本参加を皮切りに、インドネシア、カナダでの新規炭鉱開発など、積極的なグローバル化の推進によって成長してきた。

 近年では、将来のエネルギー資源ビジネスの変化に対応し、収益基盤の安定化・多様化を図るため、飲食用資材、衣料品、施設運営受託、あるいは再生可能エネルギー、介護といった石炭関連以外の分野にも積極的に参入するなど、新規事業の育成・強化に取り組んでいる。

M&A戦略で多角化

子会社化した花菱縫製の渋谷店

子会社化した花菱縫製の渋谷店

 新規事業の育成・強化においては、M&Aを有効活用しているのも同社の特徴だ。たとえば、施設運営受託事業ではエムアンドエムサービス、飲食用資材事業では日本ストローを子会社化。さらに、2015年10月には、オーダースーツ業界において高い実績と知名度を誇る花菱縫製(衣料品事業)も子会社化した。同社は国内に5つの縫製工場を持ち、商品開発から生産・販売まで国内一貫体制による事業を展開。大手百貨店や多くの消費者から高い評価を得ている。現在は東日本を中心に店舗を展開しているが、西日本への進出を図るなどしながら、新たな事業の柱のひとつとして育成していく予定である。

 また、三井松島産業では、石炭生産事業において現在進行中の新規プロジェクトであるインドネシアのGDM炭鉱開発ならびに出資先である豪州スクエア社の探査事業を通じて自社権益炭の拡大を図るとともに、引き続き新規事業の育成・強化にも注力。安定的な事業ポートフォリオの構築を目指していくという。

会社概要
名称 三井松島産業株式会社 三井松島産業株式会社
設立 1913年1月25日
所在地 福岡県福岡市中央区大手門1-1-12
売上高 586億円(連結2016年3月期)
社員数 約1,100名(連結)
URL http://www.mitsui-matsushima.co.jp/

『戦略経営者』2016年7月号より転載

掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、2016年7月現在のものです。
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