ユーザー事例

三木プーリ株式会社 様

OBM導入事例

海外の会計データがそのまま日本の勘定科目で読める新機軸

国境も言葉の違いも越えて、
海外子会社の経営状況を“見える化”

海外子会社各社から業績報告が届くたびに、日本の勘定科目に照らして様式に転記する作業に追われていた三木プーリの財務管理部。ところが、あるシステムとの出会いで状況は一変。海外子会社も本社も厄介な作業から解放されたばかりか、財務にとどまらず全社の情報の一元管理まで射程に入ってきたという。その“見える化”の極意を聞いた。

左が西牧久美子財務課長、右が笹健一執行役員

経営陣からの深掘り質問に肝を冷やした経営会議

「以前は経営会議に出席していても、気が気ではなかったですね」

 そう笑うのは、伝動・制御機器の総合メーカー、三木プーリの財務管理部 執行役員の笹健一氏だ。同社は世界各地に海外販社を抱えている。各国で会計方式も会計ソフトも異なるため、毎月各拠点から本社に業績報告書が送られていた。

 財務管理部がこの報告書を日本の勘定科目と照らし合わせながら、国ごとに為替レートも適用して日本の様式に手作業で転記する。経営会議には、数日かけて作成した財務資料を持っていくのだが、海外分は集計データしかないため、細かい質問があると、現地に問い合わせて確認する必要があった。会議のたびに笹氏が肝を冷やしたのも無理はない。

 2010年代に入って海外販社が増え、会計一元管理のニーズが高まった。全社でERP(基幹統合)システムという手もあるが、「海外子会社の会計に問題はなく、子会社ごとに使いやすい会計ソフトを導入してうまく回っていた」(笹氏)ため、この状況を変えてまでERPに舵を切る理由はなかった。しかも「ERPは高コストで、導入が始まったら、たとえ当社に合わないと判明しても止めようがない」懸念もあった。

 だが、従来のやり方も限界だった。会計データの転記作業に追われていたのは本社だけではない。海外子会社でも、業績報告作成のために必要なデータを拾って転記する作業を抱えていた。手作業なので間違いも起こりやすかった。

とりあえず始めてみようと言える導入ハードルの低さ

OBMサービス図

現地語の用語もすべて日本語に変換。
いわば海外子会社の会計情報の“通訳”のような存在だ。

 そんな折、財務とシステムの両面に詳しい西牧久美子氏が財務課に入社する。最初に戸惑ったのがデータが散在している状況だ。「フォルダが多く、どこにどの子会社のデータが入っているのかを覚えるだけで一苦労」と当時を振り返る。笹氏は、以前から気になっていた「海外ビジネスモニター」(略称OBM)という製品は使えないかと西牧氏に相談を持ちかけた。「OBMのセミナーを見て、当部が抱える問題を解決する有力なツールになり得ると確信しました」と西牧氏。

 そのOBMとは、海外子会社の会計ソフトから取り出した仕訳データを読み込ませるだけで、日本の勘定科目に自動変換し、日本語で財務諸表まで作成してくれるシステム。笹氏も「一筋の光が見えた」と確信する。

 だが、経営陣への説明という課題がまだ残っていた。当時計画されていた本社の会計システム入れ替えに合わせてOBMも導入できれば、「海外子会社の会計情報も一元的に管理できるうえ、そのデータで新会計システムや経営管理ツールとも連携可能になる。販売、製造の情報も取り込めば会社全体が見えるようになり、経営の意思決定が迅速化すると経営陣にプレゼンしたんです。幸い、その可能性に賭けてくれた経営陣からGOサインがもらえました」と西牧氏。

 また、笹氏は「こうしたシステムは高価格のイメージがありますが、OBMは2桁くらい違いました。クラウド型なのでメンテナンスも不要。とりあえず始めてみようと言える手軽さでした」と説明する。

 ただ、“産みの苦しみ”はあった。勘定科目の自動変換を実現するため、「日本と海外各社の勘定科目同士を紐付けする作業が一番大変でした。海外の会計方式を仕訳レベルまで理解することから始めました」と西牧氏は振り返る。

 本社への報告方法が変わることで、海外の現場に戸惑いはなかったのだろうか。「むしろ、本社への報告書を作る必要さえなくなりました。使い慣れた会計ソフトから仕訳データをOBMに送るだけですから。しかも(OBM開発元の)TKCさんが各社の会計ソフトごとに操作手順を現地語で用意してくれたので、海外から質問も来ません」(笹氏)。

あれほど苦労していた資料作成の作業がゼロに

 今春、笹氏らは現地に赴いて指導するつもりでいたが、コロナ禍で出張は断念。それでもすんなりと定着したことから、導入ハードルの低さがうかがえる。今回対象とする海外子会社は9社あり、段階的に切り替えを進めていて、現在7割ほどが終了。最終段階を残すのみとなった。すでに笹氏らは十分な導入効果を感じているという。

 海外からは集計データではなく、仕訳データ自体が送られてくるため、気になる部分は日本にいながら仕訳レベルで可視化できる。かつては毎回冷や汗ものだったという経営会議も、「事前の資料作成も不要。OBMでありのままを見せるだけ。深掘りの質問にもその場で仕訳まで確認できる」と笹氏は言う。

 西牧氏も「OBMと新会計システムとの連携も完成間近。会社側からも高く評価されている」と確かな手応えを感じている。しかもOBMからは(汎用の)CSV形式でデータを書き出せるので、連携の可能性は無限大だという。

 当初は海外子会社の会計データも日本と同じ条件で見られたら、という思いからスタートしたOBM導入だったが、今はインスピレーションが広がるばかり。「株主、出資比率、役員構成、従業員など非財務情報も取り込んで、会社全体の姿が一元的につかめるようにしたい」(笹氏)と意気込むなど、早くも“その先”を見据えている。

会社概要
名称 三木プーリ株式会社
設立 1939年10月
所在地 神奈川県
従業員数 820名(連結)
URL https://www.mikipulley.co.jp/JP/

『日経ビジネス』2020年9月7日号より転載

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