複数の連結財務諸表を作成し利益率の高い書店づくり目指す
今年2月、丸善と図書館流通センターが経営統合して誕生したのがCHIグループだ。書籍・雑誌の「返品率」改善と、電子書籍化の動きに対応することを戦略テーマに掲げている。そこで、同社の事業戦略とTKC連結会計システム『eCA―DRIVER』を活用した財務戦略を、森孝司執行役員経理・財務部長、吉留政博同部副部長、経理担当の林信行氏、中島康利氏に聞いた。

国内最大の書籍コンテンツ販売グループを目指す
――御社は今年2月1日に丸善と図書館流通センターが経営統合してできた持株会社(同日東証一部上場)ですが、社名のCHIは「知」のことだそうですね。
森孝司執行役員経理・財務部長 はい。「知は社会の礎である」を当社の経営理念としており、この価値観のもと、大日本印刷(DNP)の子会社であった丸善と図書館流通センター(TRC)を統合したわけです。理由の一つとして、出版業界が年々縮小していることが挙げられます。ここ5年連続で書籍・雑誌の販売額が前年割れをし、委託販売制度による返品率も約40%台(業界平均)と高止まり状態にあります。返品率を改善するためには、書店(小売)のマーケティング力を向上させることが鍵となりますが、それを、DNPと丸善とTRCが持つ知を結集して、ブレークスルーしようと考えたわけです。同時に、もう一つのポイントは3社が力を合わせて、今後、押し寄せてくる“電子書籍の波”に対応するということです。
――丸善は「洋書の丸善」として有名ですが、現在、全国に何店舗展開しているのですか。
吉留政博経理・財務部副部長 41店舗です。1869年創業で、洋書やタイプライターなど、その時代の先進的なものを輸入し提供してきました。それと並行して、最近では大学の図書館や研究室などに直接書籍を販売する「教育・学術事業」を展開しています。
森 TRCは1979年に設立された会社で、公共図書館に対する書籍と書誌データベース(TRCMARC)の販売を主力事業にしています。具体的には、図書館に予め「週刊新刊全点案内」「TRC基本在庫カタログ」などを送り、それらをみてどの本を購入するかを決めていただくと、「TOOLi」という専用サイトにアクセスして注文します。TRCでは注文をいただいた本を物流倉庫からピッキングして、その図書館の装備仕様に合わせてICタグやバーコードラベルを貼ったり、フィルムコーティングを行って出荷します。
一方、本の仕入は「仕入部」が担当しているのですが、そこに「この本であれば何部くらい売れるか」を見る目利きがいて、仕入部数を決定しています。こうした仕組みを構築したことによって、TRCの返品率は約12%となっています。
――2011年1月期がCHIグループとして最初の(通期の)連結決算ということになりますが、当初予算は達成できそうですか。
森 第2四半期決算において、販管費の削減などにより経常利益は当初の業績予想から上方修正をしていますが、今後デジタル化関連事業に相応の先行投資が必要であるため、期首に立てた目標数字(売上高1300億円、経常利益6億4000万円)は変更せずに据え置いています。
吉留 現在、CHIグループは丸善とTRCの2社からなっていますが、来期からはその構図が変わります。今年8月に丸善の店舗事業(41店舗)を丸善の100%出資子会社「丸善書店」として分社化し、来年2月1日にはCHIグループの直下に置く予定。また、DNPの子会社である「ジュンク堂書店」もCHI傘下に入る予定です。つまり、来年2月1日時点でTRC、丸善、丸善書店、ジュンク堂書店の4社で構成され、TRCの下に子会社(CHIからみると孫会社)が15社、丸善の下に5社がぶらさがります。要は、国内最大の書籍コンテンツ販売グループを目指すということです。
簡単に下部グループの連結財務諸表を作成
――会社設立とほぼ同時に『eCA―DRIVER』を導入されたと聞いていますが……。
森 はい。経営統合する前(昨年夏頃)に「経理分科会」を立ち上げ、そこで経理業務の構築に関していろいろと検討、議論しました。メンバーは両社合わせて10名ほどで、主に連結決算と連結納税について話し合いました。
吉留 とにかく2月1日に会社設立と同時に、東証上場を目指していましたので、6月には第1四半期の数字(連結決算)を開示しなければならないわけです。それを、まずクリアするのが課題でした。
森 このとき候補に挙がったのは4社のシステムでした。そのなかでTKCさんの『eCA―DRIVER』を選択したわけですが、その第1の理由はいま吉留が言った課題に対して、TKCさんだけが「対応できる」と答えてくれたからです。2つ目はASPサービスで提供してくれる点です。コストとセキュリティの両面を考えれば、ASPのほうがメリットが大きいですからね。
吉留 3番目は連結納税との関係からです。こちらについてもTKCさんの『連結納税システム(eConsoliTax)』を導入しようと考えていたので、『eCA―DRIVER』が一番いいと思いました。
森 連結納税の結果を、連結決算に反映させなければならないということがあるので、リンクしていたほうがいいわけです。
――具体的には、どのように『eCA―DRIVER』を活用しているのでしょうか。
林信行経理・財務部経理担当 一言でいえば複数の連結財務諸表を作成しているということです。TRC、TRCの子会社、丸善、丸善の子会社とも、それぞれ市販の財務ソフトを使っていて、それでまず個別財務諸表を作成し、そのデータを『eCA―DRIVER』に入力すればCHIグループの連結財務諸表が出来上がります。次にTRCグループ(TRCとTRCの子会社)、丸善グループ(丸善と丸善の子会社)ごとの連結財務諸表を作成しています。
山岸崇裕公認会計士・税理士 『eCA―DRIVER』の場合、いったんCHIグループの連結財務諸表を作成しておけば、その下のグループの連結財務諸表がほぼ自動的に作成されます。ここが『eCA―DRIVER』ならではの魅力的なところです。つまり、予め例えば丸善さんなら、どことどこが連結子会社なのか、その「範囲」を指定しておけば、簡単に下部グループの連結財務諸表などを作成することができるということです。
――ということは、CHIグループ、丸善グループ、TRCグループの3つの連結財務諸表を作成しているということですか。
中島康利経理・財務部経理担当 そうです。この方式が最もスピーディーかつ正確に連結決算を行うことができます。実際、当社の第1四半期決算は4月末ですが、その2週間後の5月中旬までに、各子会社が『eCA―DRIVER』にデータを入力したことで、6月に連結財務諸表を作成・開示することができました。
システムの導入から運用まで完全サポート
――他には、どういうところが『eCA―DRIVER』の魅力と感じていますか。
林 TKC会員の山岸崇裕先生が全面的にサポートしてくれているところです。いま中島が話したように、第1四半期の連結決算をスケジュール通りにできたのは、毎日のように山岸先生にわからない点を丁寧に教えていただいたからです。バックアップ体制が充実していると、安心して使えますね。
佐久間善弘公認会計士 私はTRCの顧問会計士を長年担当していますが、それまでTRCでは表計算ソフトを使って連結決算を行っていました。これだと10数社の子会社データを集めて連結財務諸表、セグメント情報、連結キャッシュ・フロー計算書を作成するのは非常に大変です。ところが、『eCA―DRIVER』なら、「基本情報」さえ入力すれば簡単にできるので凄いなと思いました。
――最後に今後の事業展開をお聞かせください。
森 ポイントはCHIグループ各社が今以上にマーケティング力を身につけて収益力を高めること、2つ目は電子書籍への対応です。実は、TRCのなかの一事業部としてオンライン書店「ビーケーワン」があり、これを電子書籍のビジネスモデルに活用しようと考えています。一方、親会社のDNPは印刷技術をベースに出版社とのつながりが深く、これまで蓄積した関連技術を有しています。要するにDNPとCHIグループ各社の知を結集して、紙の書籍から電子書籍まで、ワン・ストップでサービスが提供できるような「企業集団」を目指していくということです。
名称 | 丸善CHIグループホールディングス株式会社 (旧:CHIグループ株式会社) |
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業種 | 書籍及び雑誌等の販売 |
代表者 | 小城武彦 |
所在地 | 東京都新宿区市谷左内町31ー2 |
TEL | 03-5225-8787 |
売上高 | 1300億円(2011年1月期見込み) |
社員数 | 30名(連結1175名) |
URL | http://www.maruzen-chi.co.jp/ |
『戦略経営者』2010年11月号より転載
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