TKCシステムを活用しグループ通算制度への移行を実現
e-TAXグループ通算/eTaxEffect導入事例
2022年2月に創刊150周年を迎えた『毎日新聞』は、現存する日刊紙で最も歴史のある新聞です。その発行元である毎日新聞社では、創刊150年の機会に、2030年にメディアとして目指す姿、果たすべき役割を「2030年ビジョン」として次のようにまとめました。
「個を見つめ、世の中に伝え、社会をつなぐ コミュニケーター・カンパニーへ」――。「コミュニケーター・カンパニー」には、情報を伝えることを通じて人と人をつなぎ、社会のあり方や人々のくらしを前向きに変えていける会社になる、という思いが込められています。
毎日新聞は、情報を伝えるだけでなく、読者の皆さまや社会の課題を解決できるソリューションも提供できるメディアを目指されています。
毎日新聞グループホールディングス様には、TKC全国会会員(税理士・公認会計士)がシステム・コンサルティングを担当している、TKCの税効果会計システム「eTaxEffect」やグループ通算申告システム「e-TAXグループ通算」を活用いただいております。
毎日新聞グループホールディングス様は、令和5年7月に連結納税制度からグループ通算制度へ移行して初となる確定申告を終えました。そこで、グループ通算制度対応に係る業務量やグループ各社との役割の変化など、制度対応のポイントについて、同社グループ経理部の皆さんにお話を伺いました。
グループ通算制度へ移行した経緯をお聞かせください。
当社は、連結納税制度をグループ43社で採用していました。令和2年度の税制改正において連結納税制度が見直され、新たにグループ通算制度が創設されたことに伴い、令和4年4月1日開始事業年度からグループ通算制度に移行することにしました。
グループ通算制度は、従来の連結納税制度にあった損益通算のメリットは残しつつも、グループ内の各法人が個別に法人税額の計算や申告をする制度です。グループ通算制度への移行にあたっては、まずはそうした制度の違いを確認しました。当社グループでは、各社でさまざまな事業を営んでおり、連結納税制度から引き続き損益通算のメリットを享受したいという思いもあり、グループ通算制度を採用することにしました。
グループ各社の役割分担などを教えてください。
当社グループでは、決算時の税金・税効果計算においては「eTaxEffect」を利用し、法人税・地方税の申告書作成については「e-TAXグループ通算」を利用しています。
システムを利用する上で、親法人の役割は3つあります。1つは、持株会社と毎日新聞社の2社における「データ入力」「計算」「決算・申告作業」です。もう1つは、「子法人から集めたデータの取りまとめ」および「各社のデータチェック」です。最後は、「システム入力や税制に関する案内、各社からの問い合わせ対応」です。また、当社の場合、親法人は主に東京と大阪の2拠点に分かれており、子法人からのデータ収集については大阪の拠点が子法人の2割程度の窓口を担っています。
子法人は、eTaxEffectとe-TAXグループ通算にデータを入力して親法人に提出し、親法人がグループ全体での計算処理を終えた後、自社の決算・申告書の提出作業を行います。子法人の作業は、子法人の担当者または顧問税理士が行っています。
グループ通算制度の実務を、グループ全体で行うにあたって特に注意していることは……。
気を付けていることは大きく2点あります。
まず、決算作業ではスピードを意識しています。作業効率化のため、eTaxEffectの運用においては、入力シートを用意してデータ入力およびデータのチェックをしています。そして、eTaxEffectで決算時の税額・税効果計算して算出される各社の税額や未収入金・未払金については、ある程度数字を固めたら極力、動かさないようにしています。
次に、申告作業においては、正確性を重視しています。これまで連結納税制度から決算時の税金・税効果計算や法人税・地方税の申告書作成をグループで実施していますが、子法人が入力データを誤った場合、データを修正→再計算→各社に再度連絡→チェックといった手戻りが非常に手間だと感じたことがありました。そのため、親法人では、決算書との整合性など突合すべき点のチェックリストを作り、複数の担当者による確認作業の効率化を図ることで手戻りをなるべく減らすようにしています。
手戻りを減らすために、どの程度各社のデータをチェックされていますか。
チェック方法は主に2つあります。①各社の入力データのチェックと②検算シートを用いた計算結果のチェックです。
各社の入力データのチェックでは、各社の決算書類とデータを突合しています。加算・減算項目、納税充当金や繰越損益金、個別別表もチェックするほか、決算時にeTaxEffectで計算した未払金・未収入金をチェックすることもしています。
検算シートを用いたチェックでは、自社で作成した検算シートとe-TAXグループ通算で出力される計算結果を一覧で確認できる帳票を突合して金額差がないかを確認しています。
グループ通算制度へ移行するにあたっては、どのような準備作業がありましたか?
まず、親法人で制度の内容を理解した上で、子法人に対して「制度が変わること」や「制度上今後の業務に影響があること」などを資料にまとめて案内しました。
例えば、これまで電子申告では別表だけ送付していましたが、法人税は電子申告が義務化になるため申請が必要になることや、申告時には決算書等の添付書類を電子申告する必要があることなどを伝えました。
その上で、先ほどお話した検算シートのメンテンナンスを行いました。計算式が大きく変わる部分があり、制度に対応した項目を見直すのに苦労しました。
実際にグループ通算制度を適用した決算・申告の実務を終えた感想をお聞かせください。
グループでの作業、特に遠隔地にある子法人と一緒に作業することの大変さを改めて痛感しました。そもそも、税理士の関与度合などにより子法人担当者間でも理解度の差がある中、大きな制度改正による連絡事項の多さから、子法人担当者の認識から漏れてしまうこともありました。例えば、「期限ぎりぎりまで、電子申告のため決算書等の添付が必要になることを忘れていた」「申告期限の延長期間を誤って認識していた」「予定納税の計算基礎が変わったことを知らなかった」など、いろいろありました。
今後の取り組みについてはいかがでしょう?
今後は、eTaxEffectで利用している入力シートに加えて、e-TAXグループ通算の入力シートを新たに用意しようかと検討しています。また、初年度の反省を活かして研修会を開催することも検討しています。初年度はある程度バタバタしましたが、TKCシステムをうまく使いこなしながら実務と研修会を繰り返すことで、今後は業務が滞りなく進んでいくと思います。
会社概要
株式会社毎日新聞グループホールディングス
- 設立
- 2011年4月
- 所在地
- 東京都千代田区一ツ橋一丁目1番1号
- URL
- https://www.mainichi.co.jp/company/ghd.html
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