グループ力でV字回復遂げた"特装車"業界の雄
特装車の総合メーカー、極東開発工業の業績は、2010年の底打ち以降、一転して急角度のV字回復を見せている。生産拠点の再編で利益体質にも磨きがかかりつつある同社のグループ経営への取り組みについて、中井一喜代表取締役専務、近藤治弘執行役員・財務部長、皆木慎吾財務部担当部長、市村哲也課長、眞野公司係長に話を聞いた。
復興需要と生産の効率化で成長軌道に乗る
――主力の「特装車」とは?
中井専務 貨物自動車やトラックのシャーシの上に通常の荷台ではなく、 多種多用途な装備を架装した車のことです。たとえば、ダンプトラックやコンクリートポンプ車、ミキサートラック、タンクローリー、トレーラー、散水車、ごみ収集車などですね。当社ではこの「架装物」を製造しており、シャーシは自動車メーカーのものを使用します。
――2010年以来、すごいV字回復ですが、要因は?
中井 リーマンショックの影響と公共事業の削減によって、2010年に4万台にまで落ち込んだ普通トラック需要(普トラ需要)が、震災の復興需要等でこのところ約6万台にまで回復してきているのがもっとも大きな要因。特装車は普通トラックの25~30%程度を常に占めているため「普トラ需要」の変遷が当社の業績を大きく左右するのです。2010年には経常利益で約26億円の赤字に落ち込みましたが、昨年度は約32億円の黒字と急回復しています。
――しかし、復興需要にはいずれは終わりがきます。
中井 はい。せいぜいあと3~5年くらいでしょう。当社は赤字を出した年に中期3カ年計画を打ち出しましたが、利益体質の構築がメーンテーマで、たとえば、ダンプは横浜工場、中小型タンクローリーは名古屋工場に集約するなど、生産拠点の効率化を進めました。狙いは「普トラ需要が4万台でも利益が出せる体制作り」です。いまは復興需要で一時的に名古屋工場でもダンプ生産を再開していますが、特需に乗せられて本格的に設備を拡大してしまうとその反動が来た時の償却負担が大変なので、今後はなるべく労働力の流動化で対応していくつもりです。
――中期3カ年計画では海外市場の開拓もうたっておられますが。
中井 「売り上げの30%を海外市場でまかなう」という目標にはほど遠く、いまだ道半ばです。当社では中国・昆山に工場(独資)を持っていますが、現地市場で年間15~20億円の販売実績があります。また、今年から合弁のインド工場が稼働。さらに、来年の夏にはインドネシアにも大型ダンプの新工場を稼働させる予定です。
――競合も多いと思いますが、極東開発工業の強みは?
中井 やはり技術力、とくに油圧関係には他社に負けない技術があると自負しています。車種でいえば、コンクリートを配管を通じて高いところなどに圧送するコンクリートポンプ車は業界のパイオニアでもあり65%のシェアを持っています。東京都庁でも当社のコンクリートポンプ車が使われました。また、粉粒体運搬車も強く、現在シェアは40%くらいでしょうか。いずれも付加価値の高い製品であり、今後重点的に伸ばしていくべき分野だと思っています。
――コスト面はいかがでしょう。
中井 このところ売値の下落が止まらず厳しい状況です。それによる収益悪化を補うためにも、メーカーの永遠のテーマである原価低減により積極的に取り組み、コスト競争力をつけることが経営の重要課題です。前述の中期3カ年計画で生産の効率化に取り組んでいますが、まだまだ不十分。今後は中国で生産したユニットをインドでシャーシに架装したりといった、グローバルレベルでの有機的な生産・販売の最適化を考えていく必要があるでしょう。そのためにも「連結経営」を強化していく必要があります。
規格化されたシステム導入でノウハウの属人性を排除
――連結経営といえば、TKCの『eCA-DRIVER』を1年前に導入されています。狙いは?
市村課長 導入以前の決算作業はスプレッドシートで行っていたのですが、担当者のスキルに頼りすぎていて属人的でした。その担当者が異動した時に、はたして次の人がスムーズに引き継げるのかという危惧が常にあり、そんなリスクを排除するためにパッケージソフトの導入を決定しました。ちなみに、当社がパッケージソフトを導入するのはほぼ初めてのことです。それまではほとんどが自社開発でした。
――他社の選択肢は?
皆木部長 TKCさんを含めて3社のソフトを検討しましたが、他の2社はこちらで詳細を作り込んでいくタイプなのでやはり属人性が排除できないと感じました。一方、『eCA-DRIVER』は比較的規格化されており、知識のあまりない人でも使いやすい。プロセスのブラックボックス化の危惧は若干ありましたが、属人性の排除と、複数の人が同時に作業して決算プロセス全体を縮めるという考え方にマッチしているのは後者だと判断したわけです。
――ASPでのサービスをご利用ですが、理由は?
皆木 自社サーバーだとコスト面でも管理面でも負担が大きいからです。全社的な業務の効率化、コスト削減の流れのなかで、各部署の人員も絞られてきており、なるべく外部に任せていく姿勢も必要になってくる。法改正や細かなシステム上の管理などへの対応も、ASPの方がおそらくスムーズにできると考えました。
――連結決算業務のプロセスは?
眞野係長 四半期決算月が明けて10営業日目に単体と連結対象子会社(9社)の決算を締め、そこから3営業日以内に配布していたレポーティングパッケージを子会社から回収します。あとは、ボタンを押せば個別勘定から連結勘定への組み替え、債権債務、取引高の相殺や連結仕訳の計上を『eCA-DRIVER』が、自動で行ってくれるというわけです。
――データ連携における苦労は?
市村 国内子会社に1社、市販の個別会計システムを使用しているところがありましたが『eCA-DRIVER』には読み込みファイルのレイアウト変換機能があるので、スムーズに連携することができました。
――以前と比べてどのようなメリットを感じておられますか。
市村 従来は、レポーティングパッケージを吸い上げてから子会社間の数字のいろんな調整を行っていたのですが、『eCA-DRIVER』を導入することで、事前の子会社間のやりとりが可能になりました。つまり、内部取引や債権債務などの数字を担当者どうしで確認し終えてから報告があるため、その分、作業が効率的になったと思います。
眞野 スプレッドシートを使っていた時代は各社で様式が違ってましたからね。いまは当然のことながら統一できているので、担当者どうしで教え合ったりすることも可能になった。また、子会社のなかには新人の担当者もいるのですが、『eCA-DRIVER』のインターフェースの分かりやすさに助けられて業務の正確さが増したようです。
――そのほか、機能面での感想は?
眞野 『マネジメントレポート(MR)設計ツール』は頻繁に使っています。たとえば、グループ会社のPL/BSや精算表、製造原価明細書などを横並びにした経営資料を以前から作成していたのですが、いまはMR設計ツールを使ってより簡単・正確に作成できるようになりました。
――専門家によるサポート体制も『eCA-DRIVER』のうりの一つです。コンサルタントとしての大谷信介(税理士・公認会計士)先生の存在はいかがでしょう。
皆木 完璧でしょう(笑)。たとえば、当社固有の経理処理をシステム上でどう扱えばいいかなど、分からないことがあればメールや電話ですぐに回答いただけるので、導入に際しても実務担当者は非常にやりやすかったと思いますよ。
――今後の方向性は。
中井 これまで当社は、ものづくり優先で、人材育成への取り組みが足りなかった。今後は社員のローテーションを積極的に行い会社の中枢を担う人材を育てていきたい。大谷先生やTKCさんにも、財務の専門家として力をお貸しいただければと思っています。
名称 | 極東開発工業株式会社 |
---|---|
設立 | 1955年6月 |
所在地 | 兵庫県西宮市甲子園口6-1-45 |
売上高 | 678億円(連結) |
社員数 | 2195名(連結) |
URL | http://www.kyokuto.com/ |
『戦略経営者』2012年11月号より転載
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