グループ一丸となって魅せる番組づくりに励む
近畿地方在住の視聴者にとってはおなじみの関西テレビ。放送開始は1958(昭和33)年11月と、現在のキー局であるフジテレビよりも数カ月ほど早い。そんな関西テレビが現在、グループ一丸となって力を注いでいるのはコンテンツ制作力のさらなる向上である。市橋良一常務取締役と、財務経理部の鎌田貴博氏に話を聞いた。
番組制作力を武器に事業の多様化を図る
――フジテレビ系列の在阪準キー局にあたるのが、関西テレビさんだそうですね。
市橋 チャンネル番号はフジテレビと同じ「8」。夕方のニュースなどのローカル番組のほか、東京などでも放送される全国ネット番組の制作も行っています。15年前に火曜22時に移行したドラマ枠では、『チームバチスタ』や『僕の生きる道』シリーズなどで好評をいただいていましたし、月曜22時の『SMAP×SMAP』や水曜23時の『グータンヌーボ』などのバラエティー番組も関西テレビの制作です。
実は、夜のゴールデンタイム枠にレギュラーでドラマを作っているのは在阪民放4局のなかでうちだけ。ドラマだけは作り続けようという考えがあります。
――それはどうしてですか。
市橋 一度やめると、マンパワーが落ちるからです。作り手を育てていきたいという意味合いがあるのです。うちは制作スタッフの育成に力を入れていて、ドキュメンタリー番組も継続的に制作しています。
その成果と言えるのかは分かりませんが、お陰さまで視聴率は関西地区のなかでトップクラス。それがCM広告の営業面にも好影響を与えており、スポットセールスの売り上げはそこそこよい数字を残しています。放送局のCM枠のセールス方式にはタイムセールスとスポットセールスがあって、番組を指定してCM枠を買っていただくのがタイムセールス。一方、番組間のCM枠も含め、タイムセールス以外のCM枠を買っていただくのがスポットセールスで、視聴率との連動が大きいセールス方式といえます。
――最近の経営環境を踏まえて取り組んでいることは何でしょうか。
市橋 インターネットやDVDなど、メディアの多様化はテレビ局にとって新たなライバルの出現でした。実際、インターネットに広告宣伝費が奪われてきているという状況があります。これはテレビ業界全体に共通する話ですが、放送以外でどのようなビジネスモデルを作れるかが大きな課題となっています。関西テレビは、以前からDVD販売や各種事業イベントの開催などには積極的ですが、近年はインターネットの動画配信にも取り組んでいます。番組を見逃した視聴者向けにネット配信(有料)する「見逃し配信」のサービスも開始しました。イベントに関しては昨年、大阪城・西の丸庭園で『平成中村座』を開催し、たくさんの歌舞伎ファンを集めました。
――映画作りも精力的に行っていると聞いています。
市橋 ええ。今年4月から上映の『阪急電車~片道15分の奇跡~』では、地域色が濃い映画の内容にもかかわらず約90万人を動員(現時点)。これまでに何度も映画制作を手がけてきましたが、監督を務めるのが関西テレビの社員というのはこれが初めての試みでした。こうした優良なコンテンツを作れるだけの力が社内にあることが私たちの強みです。
システム選定の決め手は「サポート体制」の充実
――関西テレビさんを親会社とする連結子法人の数は?
市橋 全部で8社です。メディアプルポ(制作プロダクション)、関西テレビハッズ(テレビ通販)、関西テレビソフトウェア(システム開発)、レモンスタジオ(東京スタジオの運営管理)など、放送業と関連性のある6つの子会社に加え、スポーツクラブ運営にたずさわる関西テレビライフとウエルネスライフという2つの子会社があります。
――関西テレビグループ全体として、どんな方向性をお持ちでしょうか。
市橋 今年新たに策定した中期経営計画(3カ年)のなかで、「グループ一体経営の強化」というのを一つの重点目標として掲げています。グループ各社の経営ミッションの明確化や、グループ内の人材育成と交流などを柱としています。これまでは割とグループ内の各社がそれぞれ別個な動きをしているところがありました。それを今後は改善していきたいと思っています。
――グループ全体を一つの納税単位とみなす「連結納税制度」を採用したのはいつ頃ですか。
鎌田 昨年4月から連結納税適用会社となりました。
実はリーマンショック後、子会社が黒字で親会社が欠損を抱えるという状況になっていました。連結納税を採用すれば「損益通算」によりグループ全体の税コストの削減がなされることは承知していたものの、事務作業の手間の問題や、いわゆる中小特例の優遇措置が受けられなくなるという理由からなかなか踏み切れずにいたのです。ところが平成22年度の税制改正でグループ法人税制が導入されたため、中小特例を受けられなくなった。それなら早ければ早いほどいいという判断のもと、すぐに連結納税適用会社になるための申請をしました。
――連結納税システムの導入にあたりTKCの『eConsoliTax』を選んだのは、何が決め手になったのでしょうか。
鎌田 一言でいえば「サポート体制の充実」です。連結納税に関する実務を解説する書籍の数はそう多くないし、税務署に問い合わせても要領を得ない答えが返ってくるケースが少なくありませんでした。そんな中でTKCの皆さんは非常に詳しくて、そこからサポートを受けられるのは大きいと判断しました。
――システムを実際に稼働させるまではいろいろ大変でしたか。
鎌田 通常、『eConsoliTax』の平均的なシステム導入期間は半年から1年といいますが、それを実質2カ月というタイトなスケジュールで行う必要がありました。システムを導入したのが昨年7月。それを9月の中間決算に間に合わせようとしたわけですから、大変といえば大変でしたね。でも、TKCの担当者や久乗税理士の手厚いサポートもあって無事に導入を果たせました。
それと、私たちにとって幸いだったのは、間接業務における「シェアードサービス」を5年前から導入していたことです。要はERPシステムをもとに、グループ各社の経理業務を1カ所に集約(シェア)させ、仕事の効率化を図るというものです。連結納税というと、「グループ各社の税務状況を把握するのが大変」とか「子会社の税務担当者のスキルにばらつきがあり足並みをそろえにくい」という話をよく聞きますが、そうした悩みからは解放されていました。
――システムを用いて連結納税申告書を作成するまでの業務フローを教えてください。
鎌田 税額計算に必要な申告調整項目などに関する情報を各子会社から報告してもらい、そのうえで私も在籍するシェアードサービスセンター(SSC)で『eConsoliTax』を通じてグループ全体の税額を一体計算します。その数字をもとに、申告書を出力するというのが大まかな流れです。
専門家のコンサルティングでハードルを次々クリア
――今年3月期の決算・申告業務を行う上で、とくに苦労した点はありますか。
鎌田 各子会社の税務申告書の書き方にそれぞれクセがあるため、そのクセを平準化していく作業ですね。たとえば、ある子会社では1行で表現しているところを、別の会社では2行にしていたりする。どちらかが間違っているというわけではないのですが、それらの基準をグループ内で統一し、2行であるものを1行にするといったことが必要でした。
もちろん、子会社それぞれの個別の事情に対応しなければならないところもあります。けれど、あまり細かいところまで対応してしまうと、グループ内の「標準化」というところが崩れてしまう。親会社としてそのあたりを注意しました。
――システム導入のメリットはどんなところに感じていますか。
鎌田 やはり連結納税の申告書の数は膨大でして、それが手書きではなく、必要最小限のデータを入力すればできあがるというのは有り難いです。連結納税制度を採用する税務上のコストを試算するために一度、自作のスプレッドシートを使って前年の数字をもとに計算してみたことがありましたが、そのときの大変さを知っているだけに、システムの有り難みは身に染みています。
他にも、全体計算項目の内容などがひと目で確認できる「申告検討表」の機能は便利ですね。システム導入によって作業負担が軽減されている分、今後は経理業務も戦略的な意思決定の部分にもっと注力していかなければならないと思っています。
――最後に関西テレビグループの今後の抱負をお聞かせください。
市橋 今年7月でアナログ放送が終了し、完全デジタル化されました。デジタル時代の中で、いかにコンテンツ制作力の充実を図っていけるかがまずは大事だと思っています。そこから多様なビジネスを派生させていくためにも、グループ一丸となってこれまで以上に魅力的なコンテンツ作りに励んでいきたいものです。
名称 | 関西テレビ放送株式会社 |
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業種 | テレビ放送業 |
代表者 | 福井澄郎 |
所在地 | 大阪市北区扇町2-1-7 |
TEL | 06-6314-8888 |
売上高 | 639億円(連結) |
社員数 | 790名(連結) |
URL | http://www.ktv.jp/ |
『戦略経営者』2011年9月号より転載
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