ユーザー事例

株式会社聚楽様

「右手に包丁、左手に算盤」で会計業務の革新にチャレンジ

株式会社聚楽

大正13年、小さな洋食店からスタートし、戦前戦中戦後と一貫して庶民の食文化を支えてきた聚楽(じゅらく)。「右手に包丁、左手に算盤」は創業者・加藤清二郎氏の言葉である。同社で会計の高度システム化に挑む経理部の鷲尾清隆取締役、山田茂課長、吉岡晋さん、そしてシステムコンサルタントの上米良一也税理士に話を聞いた。

──聚楽さんといえば、上野の聚楽台をイメージしてしまいます。

鷲尾清隆取締役

鷲尾清隆取締役

鷲尾 実際の創業の地は上野ではなく神田須田町です。大正13年、創業者である加藤清二郎が、須田町食堂という小さな洋食店をはじめたのがスタートになります。

──現在の外食産業の多店舗化を、戦前から実践されていたとか。

鷲尾 須田町食堂は、創業直後から大衆の支持を集め、一時は89店舗にまで拡大しました。ある意味、現在の外食企業の草分け的存在なのかもしれません。「うまい、やすい、はやい」というキャッチフレーズを最初に使用していたのも実は当社です。大正13年というと関東大震災の翌年に当たり、壊滅的な被害を受けた東京をなんとか復興しようという意気込みで加藤清二郎が立ち上げたと聞いています。

──聚楽という名称は?

鷲尾 昭和9年に新宿に「食堂デパート」を開店し、店名を「聚楽」と名付けました。

──「食堂デパート」ですか。

鷲尾 はい。和洋食からお座敷まで、さまざまな食事が楽しめる場所として、大変画期的なお店でした。その後、上野や浅草にも食堂デパートを展開しました。さらに昭和34年には上野の西郷銅像下のビルに当社の象徴ともいえる「聚楽台」を開店しました。残念ながらビルの老朽化により平成20年に閉店しましたが、その際には多くのマスコミから取材を受け、また大勢の方々から惜別のお言葉をいただきました。

──聚楽さんはレストラン事業のほかにホテル事業もやっておられますね。

鷲尾 リゾートホテル事業を本格的に開始したのは昭和30年代後半からです。レジャー時代の幕開けとともに徐々に好評を博し、現在は群馬の水上と万座、福島の飯坂、静岡の伊東と各温泉地に「ホテル聚楽」を展開しています。また東京の御茶ノ水と新潟にビジネスホテルを経営しています。

──一方、外食業界の動向はいかがでしょうか。

鷲尾 食の多様化が進み他企業との競争が激しくなっています。多店舗展開されているところはおおむねセントラルキッチン方式で店舗オペレーションを簡素化してコストダウンを行い、それを価格競争力に反映させるというスタイルが主流となっており、当社でも一部店舗で『牛角』や『土間土間』などのフランチャイジーとして営業していますが、自社ブランドのお店では手作り感を大切にしておいしい料理の提供を心がけています。

──現在の売上高の内訳は?

鷲尾 全体の約55%がホテル事業で、38%がレストラン事業、その他不動産賃貸事業等が7%となっております。現在勢いがある事業はビジネスホテルで、外国人観光客の増加により都心部などでは客室不足となっているようです。2020年の東京オリンピックもあり、成長が期待できる事業だと考えています。

     伊東ホテル聚楽                  浅草聚楽            創業当時の須田町食堂

100以上の部門損益を迅速かつ緻密に管理

──経理を重視する社風だとか。

鷲尾 創業当初から、多店舗化していくなかで、初代の加藤は計数関係の分析資料を自身で作成していたほどでした。昭和初期の段階で著名な計理士の先生を顧問に迎え入れ、加藤は「この会社がどんなに大きくなっても困らないような帳簿組織を作ってくれ」と依頼したという話が残っています。この考え方を受けて、現在も当社の経理部には、自社で極力解決していくという独立性と考える力があると思っています。

──当時、加藤創業者がおっしゃった言葉があるとお聞きしましたが……。

鷲尾 「右手に包丁、左手に算盤」です。会社は技術だけでは成り立たず、計数管理により会社の状況を正しく把握しなければ成長はないということを、この言葉に込められたのだと思います。まだ外食産業という言葉がないころから実践されていたのはすごいことであり、この伝統を大切にしなければと身が引き締まります。

──それがTKC『FX5』の導入にもつながるわけですね。

鷲尾 かねてからTKCさんが開催されているセミナーを受講していました。数年前に会計ソフトの更新を考えていたところ、『FX5』を提案いただきました。

──それまでも他社のシステムを使用されていたのでしょう?

鷲尾 それがちょうど保守切れを迎え、切り替える必要がありました。そこで数社の会計ソフトを検討しましたが、『FX5』が当社のニーズに最も合致しておりましたので導入を決めました。

──良かったところは?

山田茂課長

山田茂課長

鷲尾 当社がパッケージソフトを使い始めたのは比較的新しく、7年前。それまでは社内のプログラマーが自前で制作していました。しかし、その社員も高齢で退職し、属人化を防ぐためにも標準化されたシステムが必要でした。それで、外部のシステムを導入したのですが、このソフトが、マクロに変換してアウトプットするスタイルで、やや使い勝手が悪かった。マクロを使わずに作表にまで持っていきたいと考えていたところにTKCさんの『FX5』のプレゼンを受けたのです。これがすばらしかったですね。

──どのように?

鷲尾 当社の具体的な勘定科目のマスターを使用して帳表づくりからエクセルに落とすところまでを、一気通貫で見せてくれたのです。それが非常に分かりやすかった。自社に導入すればどうなるかが一目瞭然でした。「これは使える」と直感しましたね。

──実際、いかがでしたか。

山田 準備に半年を費やしました。技術的に一歩一歩進んでいくスケジューリングも良かった。おかげで導入は非常にスムーズでした。

吉岡晋さん

吉岡晋さん

吉岡 『FX5』にデータが流れると、それが「マネジメントレポート(MR)設計ツール」という機能によって、自分たちが望む帳表へと一瞬にして変換できる。これはすごいことです。当社は、大きくは本社、レストラン、ホテルの各部門に分けられますが、業態や業種別に階層管理しており、全体の部門数は100を超えます。しかし、それも問題ありません。初期設定さえ行えば、あとは、自動的に、毎月の細かい損益を翌月の7日には見ることができます。

山田 メンテナンスも極めて簡単で、これまでのようなマクロが分かる技術者も必要ありません。われわれだけでできます。また、他のシステムとの仕訳連携という意味でも柔軟性がありますね。自分たちのフォーマットを使用してできています。いまは「手打ち」は一切していません。

鷲尾 従来は、仕訳連携の前に、一度マクロをかませていたんです。つまり、取り込み用に置き換える必要があったんですね。それがいまはエクセルで作成できるので、特別なスキルが要らなくなったということです。

──帳表は、経営資料としても利用されているのでしょうか。

吉岡 役員会議への提出資料もほとんど「MR設計ツール」で完結されます。自由に設計できるので、切り出して編集する必要はほとんどありません。

上米良一也税理士

上米良一也税理士

──上米良先生は『FX5』導入の際にシステムコンサルタントとして関わられましたが、印象は?

上米良 システムの運用フローを明確化するために、何度か経理部を訪問して税務チェックをさせていただきましたが、とてもまじめで優秀な方々という印象です。勘定科目や課税区分など、システムが違えば考え方が変わってくるので、その部分のアドバイスを行いました。

鷲尾 それまでは当社の消費税区分の設定は、17項目に細分化していましたが、上米良先生にアドバイスをいただきながら8項目にまとめることができたので、とてもシンプルになりました。

上米良 ともかく申告書に正確な消費税額が記載されなければならないので、マスターの設定には気をつけて指導させていただきました。消費税の部分をまず固めることが私の主な役割でした。

──『FX5』での決算の印象は?

鷲尾 昨年度は、期の途中からの導入だったので、正直心配もあったのですが、上米良先生やTKCの方々のサポートが手厚く、とてもスムーズでした。インターフェースもシンプルで、修正作業が発生した際に、あまりにも早く対応できるので驚いたほどです。また、年2回のバージョンアップがあり、最新の機能を常に保っていただける。今後もエンドレスに使えるシステムとして期待しています。

会社概要
名称 株式会社聚楽 株式会社聚楽

伊東ホテル聚楽

創業 1924年3月
所在地 東京都文京区湯島1-2-4
社員数 570名
URL http://juraku.com/

『戦略経営者』2018年2月号より転載

掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、2018年2月現在のものです。
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