給報の電子化で工数を9割超削減
2007年、郵政民営化・分社化に伴い、日本郵政グループの人材派遣会社としてスタートした「日本郵政スタッフ株式会社」。2011年からは、グループの間接業務集約先としてシェアードサービス機能を担い、グループ内外のBPO・人材ニーズに応え事業拡大を図っている。
今回は、日本郵政スタッフの概況と給与支払報告書提出業務の電子化について「九州BPOセンター」の小池清彦センター長、オペレーション1部河野浩一課長、松原良一チームリーダーに話を伺った。
日本郵政ブランドの「業務ノウハウ」と「高品質サービス」
小池清彦センター長
小池 当社の事業には、人事・経理・総務等の間接業務の受託(BPO事業)と人材の派遣(人材派遣・紹介事業)等があります。これらの事業を通して「お客様が成長のコア業務に特化できる環境を創造し、『事業拡大のスピード化』『人的リソースの有効活用』に貢献する」──が当社の事業目的です。
人材派遣事業は、設立当初からオフィスワーク系職種の派遣・紹介を中心に成長し、現在では、全国6箇所の本社・支店で合計1000名を超えるスタッフを派遣しています。一方、BPO事業は2011年から開始し、現在急速に成長しています。私たち「九州BPOセンター」は、このBPO事業の中核を担っています。
──BPO事業の「強み」をお聞かせください
小池 最大の強みは、日本郵政グループの複雑かつ大量の間接業務を集約処理する「業務ノウハウ」です。約40万人の給与計算関連業務の集約処理、年間10万件の伝票処理、年間500万件のコールセンター業務、全国約2万4千店舗の郵便局の公共料金集約支払代行業務等、多種多様かつ複雑・大量の業務を受託しています。「できることはなんでもやろう!」の精神で取り組み、業務分析・設計・改善のプロセスで最適化した「高品質サービス」の提供を実現してきました。
その結果、私たちの「業務ノウハウ」と「高品質サービス」をグループ外からも高く評価していただけるようになり、BPO事業は、2013年度に人材派遣事業を売上シェアで逆転するまでに成長しました。
──今後、注力されたい受託業務はどのような分野ですか
小池 まずは、給与計算関連業務です。給与計算や年末調整の集約処理を受託し、一連業務である法定調書や住民税切り替え業務なども受託していきたいですね。また、経理事務では、伝票集約による支払業務の受託、グループの資金管理業務の受託にも挑戦したいと考えています。
当社では、お客様に満足いただけるサービスを提供できるよう「三つの『しん』」(信用、親切、進取)を行動指針としています。当センターにおいてもこの行動指針を心がけ、お客様に貢献できるBPOサービスの提供に取り組んでまいります。
予想を凌ぐ電子化の効果
──給与支払報告書提出業務(以下、給報業務)を電子化された理由と効果をお聞かせください。
河野浩一課長
河野 当センターが受託する日本郵政グループの給報業務の件数は約63万件、提出先団体数はほぼ全市町村ともいえる1730超に上ります。1年を通して給与計算から住民税関連業務を行い、提出先団体の問い合わせに全て対応しています。受託会社の責任として失敗は許されません。
給報業務を電子化する以前は、印刷・仕訳・封入・発送作業等を外注し、当センターで管理するという体制でした。この一連の作業には約600人日(30日×20人)を要し、逼迫した工程計画の中、期限間際に提出という状況で、まさに年始の一大イベントでした。
電子化に踏み切った理由は、義務化の影響もありますが、大きくは作業工数削減とリスク低減です。実際、電子化によるペーパーレス化、「e-TAX法定調書」による作業効率化が効果を発揮し、現在の作業工数は、約40人日(10日×4名)に激減しました。作業工数を9割超も削減でき、外注コストの削減、リスクの低減も同時に実現できました。また、提出期限の4~5日前に業務を完了することができるなど、予想以上の効果に正直驚いています。
──システムの検討・導入はどのように進められましたか
松原良一チームリーダー
松原 給報業務の電子化を決定した2013年8月から検討を始めました。電子化は初の試みのため、TKCの「e-TAX法定調書」と、もう1社別のシステムを並行導入し、実際に使い比べてみることにしました。また、どちらもうまくいかなかった場合に備え、書面提出できるよう外注予算も確保しました。
同年11月からはテスト運用、課題の解消に取り組みました。「e-TAX法定調書」については、どのような事象もTKCと共有し、迅速に対応策を提示してもらったため、ほとんどの課題は解消できていました。2014年1月、「e-TAX法定調書」の活用により計画の2日~3日前に完了することができました。
河野 この結果を踏まえ、実績やアフターケアなどから判断して、今後の利用システムを「e-TAX法定調書」のみとし、外注予算についてもとらないこととしました。
松原 2年目の今年は、ほとんどの課題対策ができていたため、主に改修事項について運用テストを実施し「大量データの一括読込み」「読込み速度の改善」効果を確認しました。この改修で更なる工数削減が図れると確信し、結果もその通りになっています。
──最後に「e-TAX法定調書」を選定した決め手を教えてください
松原 一番はアフターケアの良さです。大量データの処理が必要な大企業の利用も視野に入れ、システム改修される点に安心感を持っています。
河野 それから画面のわかりやすさとメッセージ表示です。初心者でも理解しやすい画面設計で、次にやることがメッセージで表示される。ハートのメッセージは親しみやすいと女性社員に好評です(笑)。加えて、教育に手間がかからず、簡単に運用できることから人件費の削減にもつながります。システム自体も廉価であり、本当にコストパフォーマンスに優れた良いシステムだと実感しています。
今後は、郵政グループ以外から受託している給報業務への活用なども検討したいですね。
名称 | 日本郵政スタッフ株式会社 |
九州BPOセンター 外観 |
---|---|---|
設立 | 2007年7月3日 | |
所在地 | 東京都港区虎ノ門4-3-1城山トラストタワー25F | |
売上高 | 約92億円(2014年度見込み) | |
社員数 | 753名(2014年10月1日現在) | |
URL | http://www.jp-staff.jp/ |
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