ユーザー事例

大阪いずみ市民生活協同組合

一層の事業効率めざし管理連結体制構築に取り組む

長引く消費不況や昨年の「中国製冷凍ギョーザ中毒事件」の影響を受け、生活協同組合の多くが減収減益の厳しい経営を強いられている。そんな中で増収増益を実現しているのが大阪いずみ市民生協。好業績の最大の要因は、「誠実・挑戦」をモットーとした経営姿勢だ。生協としてはまだ少ない連結決算の実施もその一つ。同生協での『eCA-DRIVER』活用について、経理・財務グループの逸見成人マネジャーと戸田政子さんに聞いた。

大阪いずみ市民生活協同組合

「三つの取り組み」で経常剰余率全国二位に躍進

――まず生活協同組合とはどのような組織なのかを教えてください。

逸見 一般の会社は会社法ですが、生協は消費生活協同組合法の規定に基づく法人です。組合員が出資金を拠出し、利用し、さらに運営にも参加します。剰余金(最終利益)も、利用分量や出資額に応じ組合員に割戻すようになっています。そもそもは、1844年にイギリス・マンチェスター近郊のロッチデールという町でつくられた「ロッチデール公正開拓者組合」が生協のはじまりだといわれています。
 いずみ市民生協は35年前に設立され、前期の連結総事業高は612億1700万円です。お陰さまで、全国の生協の中で経常剰余率が全国2位となっています。

――具体的にはどのような事業を手掛けられているのですか。

逸見 生協本体では(1)供給事業(2)共済事業(3)福祉事業の3つの事業を行っています。特に(1)供給事業が主力で、供給(売上)高が約581億円。内容は食料品などの商品販売で、店舗販売と配送販売の2つを展開しています。うち供給高が多いのは配送販売で、これもさらに組合員グループへの配送(班配送)と個人別配送の2つがあり、特に個人別配送が供給高前期比109%と順調に伸びてきています。一方、班配送は減少傾向で前期比95%です。
 店舗販売は、業態が売場500坪程度の食品スーパーで現在11店舗を展開しています。今期売上目標は約96億円とまだまだ構成比は小さいですが、業績は前期比105%とこちらも順調に推移しています。
 加えて、子会社として株式会社コープ大阪サービスセンターと株式会社コンシェルジュの2社があり、それぞれ前者が旅行、保険、物販、サービス、後者が一般貨物自動車運送業や一般労働者派遣事業などを手掛けています。いずれもいずみ市民生協との取引が大半で、親会社の補完事業という位置づけです。例えば、コンシェルジュが、いずみ市民生協から配送や物流センターの構内作業を受託するといった関係です。

――個人消費の低迷で国内小売業が厳しい経営を続けているなかでも業績が順調に推移している要因は?

逸見 現在、第10次中期計画に沿って事業運営していますが、そこに掲げているのが「誠実・挑戦」というテーマです。不況で組合員の生活も厳しく、しかもいわゆる「餃子事件」のような食に対する不安も広がっています。これに対応するため、食の安全や低価格化に愚直に、誠実に取り組み、また業務革新などに積極的に挑戦しています。
 生協は組合員の参加が総ての基本です。組合員にいろんな要望や意見を出してもらい、その実現に一緒に取り組むのが本来の姿ですから、特に組合員の参加を広げる活動に力を入れてきました。

――具体的な取り組みとしては…。

逸見 短期的に何かをということではなく、長期的な取り組みが実を結んでいるというのが実態です。
 実は当生協は1997年から2000年まで組合員の脱退が相次ぎ、大変厳しい運営状態でした。時代の変化、組合員の要望の変化に対応できずに事業が後退し、さらにガバナンスとマネジメントの確立も遅れていました。97年には役員による不祥事という経験もしました。これらが要因となって深刻な赤字体質に陥っていたのです。
 この反省に立ち2000年以降、「くらしに笑顔」をキャッチフレーズに掲げあらためて組合員のための事業構築に努めて取り組んできました。特に信頼回復のため、ガバナンスの強化と強固な経営体制の確立に向けたいくつもの改善策を段階的に行ってきました。現在のグループ経営もその流れの一環で、一例を挙げると4箇所に点在していた物流センターを1箇所に統廃合し、さらに業務をコンシェルジュに委託して人件費の改善を計る、といった施策などです。
 こうした「顧客志向」「組織構造改革」「ガバナンス構築」の3つの取り組みが、結果として好業績に繋がっていると思います。

管理連結で収益向上とグループ経営の確立めざす

――前期から取り組んでいる連結会計もまた、そうした改革の一部なのでしょうか。現在、生協で連結会計を実施しているところはほとんどないと聞いています。

逸見 連結会計はガバナンスと経営管理体制の両方の強化を期待して取り組みました。
 まずガバナンスについては、生協のガバナンスの主権者である組合員に正確な経営状況を開示するのに連結会計が不可欠であること、また、生協法改正にともない会計制度の変更が行われたことも動機となっています。いわゆる制度連結です。現状、当生協は、生協法に規定される連結決算開示の対象規模に達していないのですが、今回、連結財務諸表は参考資料として開示させていただきました。
 もう一方の経営管理体制の構築とは管理連結のことです。収益向上のためには、グループ全体、各社、各事業部、個別事業といったように細分化して課題を抽出し改善していく必要があります。
 ところが、例えば生協単体での業績管理でいえば、店舗運営をコンシェルジュが行っているため、各店の人件費は少ない代わりに業務委託料が一括で計上されているんです。これでは経費の内容が確認できず改善点も見えてきません。しかも、このような子会社への委託業務の範囲は拡大しており、だんだん実態が見えにくくなっています。それを迅速、正確に把握するために管理連結に取り組み始めたのです。

――以前から管理会計を重視してきたそうですね。

逸見 毎月、決算報告書は月末後5日に内部向け速報を出していました。これをさらに4日にするよう取り組んでいます。業績を早く共有できればそれだけ早期に対応でき、損失の防止に役立つからです。

――連結会計への移行で課題となっていることは何でしょうか。

逸見 子会社の会計レベルが低いことです。毎月の処理スピードももっと早める必要があります。

戸田 当生協では連結会計を行うに当たって、岸田(泰治公認会計士)先生の指導を受けながら『eCA-DRIVER』を導入しました。このことで連結会計に移行するための課題がずいぶん整理できたと思います。『eCA-DRIVER』は操作メニューが非常に分かり易い点が魅力ですね。やるべきことが整理されているので、メニューに沿って進めていけばいい。

――実際の導入作業はどのように?

戸田 まず第一フェーズとして科目体系の違いなどを統一しました。そもそも生協(親)と株式会社(子)で会計基準が違うためこの作業は結構苦労しました。
 次に第二フェーズとして、前年度(07年度)の決算データでトライアルを行いました。間違ってはいけないので、一度試運転して事前に作業に慣れておいたのです。
 とにかく初めてだったので子会社情報の収集(レポーティング・パッケージの設計)に気を遣いました。

逸見 当面の目標は、事業所別セグメントの状況(連結)の月次管理ですね。現在まだグループ経営としての管理手法が完全には確立していませんので、早期にこれを実現したいと考えています。

供給事業、福祉事業に注力日本版SOX法への対応も

――今後の抱負を聞かせてください。

逸見 供給事業ではフードディフェンス(食品防衛)に一層取り組んでいきます。これには仕入から提供までの総ての工程を視野に入れた「食品安全プログラム」を運用していますが、これをさらに生産者も含めて取り組んでいこうと考えています。
 一方で班配送と店舗運営のテコ入れを行います。班配送では販売管理費20%未満(現在20数%)を目指しています。店舗運営も管理連結できちんと管理していくつもりです。
 供給事業以外の事業では福祉事業に注力していきます。高齢化社会が進展している中で老人福祉施設の待機人数が増えており、地域からの期待も大きくなっているのを感じています。これに応えられるようにしなければと感じています。

――ますます事業効率向上が求められますね。

逸見 管理体制の強化を継続していくことが大切だと考えています。今後は日本版SOX法への対応も視野に入れています。

会社概要
名称 大阪いずみ市民生活協同組合
業種 消費生活協同組合
理事長 藤井克裕
設立 1974(昭和49)年11月
所在地 大阪府堺市堺区南花田口町2-2-15
TEL 072-232-3111
総事業高 612億1700万円
社員数 521人(正規職員)
URL http://www.izumi.coop/index.html

『戦略経営者』2009年11月号より転載

掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、2009年11月現在のものです。
※掲載企業様への直接のお問い合わせはご遠慮くださいますようお願いいたします。

導入システム

同じシステムを利用している企業事例はこちら

    同業種の企業事例はこちら