海外子会社の連結化進めるオフィス家具のトップランナー
常に日本の産業界の新たなオフィス環境の創出をリードしてきたイトーキ。近年は環境問題やICT化をテーマにしながら斬新な取り組みに挑戦。そんな同社のもう一つの重要な課題は海外展開だ。いま、海外子会社を含めたグループ経営の強化に向けて、体制づくりに取り組んでいる。同社企画本部業務管理統括部・山本高行統括部長、国際戦略部・久保祐子課長、経理部経理課・内田智之チームリーダーの3人に話を聞いた。
人と環境に優しい製品開発を志向
──最近の市況は?
左から内田智之チームリーダー、
山本高行統括部長、久保祐子課長
山本 当社のメインユーザーである法人の業績が全体に良くなってきており、設備投資も上向いています。その分、当社の業績も前年度を上回り、2つの柱であるオフィス機器関連事業、設備機器関連事業ともに好調に推移しています。
──設備機器とは?
山本 工場や物流設備、パーテーションなどのオフィス建材、あるいは堅固なセキュリティーが求められる特殊扉などです。また、別会社では実験台など研究施設のさまざまな周辺設備も扱っています。
──オフィス環境も進化し、差別化が難しい時代だと思いますが。
山本 現在は、机や椅子をひとつずつ売るというよりは、オフィス環境をプランニングし、運営、管理までトータルに提案することが求められる時代です。個々の営業マンが各社の課題をヒアリングしながら、ソリューションを提案していく。なかでも当社が従来から重要なコンセプトとして掲げているのが「環境」です。十数年前から「ユーデコスタイル」(ユニバーサルデザイン+エコデザイン)を掲げ、人と環境に優しい製品開発を研究してきました。
また、オーガニック素材を使用することで、ローカーボン・低VOC(揮発性有機化合物)を実践しています。さらに、「エコニファ」(「エコ」+「コニファ=針葉樹」)というブランドでは、国産材の需要拡大、林業の再生と森林活性化、地球経済の活性化を促す製品作りも進めています。この取り組みでは、東日本大震災で津波被害を受けた樹木を、再生加工した復興合板で、テーブルやスツールなどの家具として製造・販売し、平成24年度リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰の内閣総理大臣賞を受賞しました。
──ICT化も課題ですね。
イトーキ東京イノベーションセンターSYNQA
山本 はい。とくにICT化にともなうセキュリティーは大切なポイントです。例えば、会議室などのテーブルにセットすることで、利用者だけが簡単に安心して使える無線LAN環境を提供できる「LANシート」は非常に好評です。あるいは、機密レベルのプライオリティーに応じたゾーンセキュリティーの構築をはじめ、入退室や監視、収納などをトータルに一元管理できるシステムも当社の売りです。ここ(イトーキ東京イノベーションセンターSYNQA)では、これら最先端技術を集約し、新しい価値観を創造する製品群が展示されています。
海外子会社とクラウド上で同じ情報を共有する
──将来においては積極的な海外展開を公言されています。
山本 海外進出は30年以上前にシンガポールに販社をつくったのが最初です。その後、米国、中国3社(うち1社は連結対象)、タイと現地法人を設立しましたが、当初はいずれも日系企業に家具を提供する目的での進出でした。しかし、ここ10年ほど前からは、現地工場で生産し、現地マーケットへの供給を目指す方向に転換しつつあります。
──なぜですか。
伊藤喜家具有限公司(中国・蘇州)
久保 やはり、中国の巨大マーケットの魅力が第一でしょう。家具は輸送コストがかさむので現地生産が必須です。それから、国ごとにニーズや規格が違うので現地でマーケットに合致するものをつくる必要があります。
山本 そんな中、連結対象である中国の生産子会社の売り上げが伸び、加えて、国内子会社の連結化がおおむね完了し、あとは海外子会社となりました。そのため、海外子会社の連結化を実現するツールを探していました。
──そこでTKCの『海外ビジネスモニター(OBM)』を採用されたわけですね。
内田 TKCさんから紹介されたのがまさにぴったりのタイミングでした。他社の会計パッケージも考えたのですが、それは中国語の著名なソフトにこそ対応していましたが、タイとシンガポールには使用できなかった。一方、OBMはいずれにも対応できます。それと、なんといってもポイントは、現地法人から送られてきた会計データを『マネジメントレポート(MR)設計ツール』機能を活用して独自の帳表に設計し、月々の業績が確認できることです。グラフ化など見える化の機能も充実していて、とても使いやすいと感じました。
久保 現地法人の社長が営業出身だったりすると、どうしても報告数字の誤りが出てきたり、データの集計が遅れたりします。OBMを導入すれば、クラウド上で同じ情報を共有できる上に、仕訳データまでドリルダウン(データ集計レベルの掘り下げ)が可能なので詳細をチェックできるという期待がありました。つまり、内部牽制(けんせい)体制の構築ですね。
──海外現地法人と本社との会計の整合性については?
内田 海外と国内の勘定科目の対応関係をマスター化していれば、あとは何とかなります。逆にいえばこのマスター化の部分がポイントで、現在も、毎月対応関係を精査している状況です。
山本 従来、国際戦略部は海外現地法人の業務報告には手間暇かけてきました。OBMの導入によって、そういった業務の効率化ができるという利点がひとつ。それから、月次でデータの取り込みができるので、予実管理が可能になりました。これは大きいと思います。いままでは予実データの確認は半年に1回くらいでしたからね。今後は迅速な経営判断が可能になるでしょう。
久保 要するに、これまでは、非常に原始的な部分で困っていたんです。例えば、会議資料の前年度の数字が違っているとかね。実際に、重要な数字の記載ミス等も過去にありました。これはお互いに違う情報を見ているから起こることで、OBMの導入によって、同じ情報を見ながら意見交換ができれば、そんな失態もなくなるでしょう。
単純・重複作業を削減し決算業務の迅速化へ
オフィスをトータルにプランニングする
内田 個人的には、従来、まがりなりにもやってきたことを、手間をかけずに速くきちんとつくることができるツールがOBMだと思っています。これまではつくった時点で力尽きていました(笑)。それを、つくり終えてもまだ余裕を残し、残った工数で議論をしてPDCAを回すところまで持って行きたい。つまり、枠はすでにあったのですが、その枠を狙い通りに運用したい。そのためにOBMを活用させていただく。まずはそれが目標です。
──現在の稼働状況は?
内田 中国、シンガポールでの導入はほぼ完了していて、タイもまもなく準備が整い、予定では4月に本稼働ということになります。
──成果の見通しは?
久保 国際戦略部では、勘定科目の組み替えや業務報告書への転記など単純作業が自動化され工数が削減されるでしょう。
内田 経理部では、国際戦略部宛の月次業績報告業務が統合され、重複していた作業が削減されます。また、本社と現地法人の情報のやりとりも1往復分減少することで、決算業務が迅速化されることが期待されます。
山本 内部統制の強化という面も大きいのではないでしょうか。決算プロセスが明確になる、属人的な作業が標準化され、さらに、繰り返すようですが、親会社が仕訳レベルでデータを把握できることでミスや不正が発見しやすくなる。また、MR設計ツールを活用した現地法人のセグメント別損益管理などの財務指標がグループ経営の早期の経営判断につながることも期待できます。それと、なんといっても、廉価で手軽に海外現地法人の管理ができるというのがOBMのメリットだと思っています。ERPを入れようものなら、莫大なコストがかかってしまいますからね。
名称 | 株式会社イトーキ |
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創業 | 1890年12月 | |
所在地 | 大阪市城東区今福東1-4-12 | |
売上高 | 1,065億円(連結2015年12月期) | |
社員数 | 3,333名(2015年12月末) | |
URL | http://www.itoki.jp/ |
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