ユーザー事例

IDEC株式会社 様

会計でグループの結束を強めグローバル経営を展開

IDEC株式会社

あらゆる製造分野で不可欠な制御機器製品だが、なかでも操作スイッチの分野で圧倒的なシェアを誇るのがIDECだ。日本の成長を支えてきた歴史のある企業だが、堅実な経営と高い技術力は健在で、ここ数年は再び上昇気流をつかみつつある。西山嘉彦執行役員、経営管理部・経理グループの新屋昌右推進リーダー、松川隆之氏に話を聞いた。

制御機器の規格を標準化し常に業界をリード

──非常に多様な産業用制御機器を生産されておられます。

西山嘉彦執行役員

西山嘉彦執行役員

西山 なかでも最主力製品は押ボタンスイッチで、国内シェアは40%程度です。押ボタンスイッチと言われても分かりにくいでしょうが、たとえば、工場ラインの制御パネルや半導体製造装置のオペレーションパネルに使用される操作スイッチなどですね。もっと身近なところではエレベーターや、駅の券売機のスイッチにも当社製品が使われています。

──IDEC製品の人気の理由は?

西山 製品が信頼されているからです。産業用のスイッチは、ゲーム機や自動販売機用などに比べると高い信頼性と耐久性が求められます。工場内の劣悪な環境でも壊れずに機能を保たないと、ラインの稼動停止や事故につながりかねません。また、ベルトコンベアの非常停止スイッチなどは、緊急時に止まらないと大変なことになってしまう。万が一のときに荒っぽい操作をして操作部が壊れても確実にコンベアを停止する機構と機能が必要です。同じように、エレベーターや券売機も乱暴に扱う方もおられるので信頼性の高い当社の製品が使用されているのです。

──IDECならではの特徴的な技術はありますか。

西山 ロボットに作業を教え込む際、ティーチングペンダント(携帯型操作機器)で操作をしますが、そこに当社のイネーブルスイッチというものが使われています。特徴はポジションがオンとオフの2段階ではなく、オフ・オン・オフの3ポジションになっていること。これによって、緊急事態に操作者がボタンを離したときはもちろん、強く押し込んでさらに離してもロボットは停止します。つまり、異常時には安全側にしか機能しないという仕組みです。このイネーブルスイッチでは当社は約90%のシェアを持っています。

IDEC株式会社

(上)制御用操作スイッチ
(下)メガソーラー施設(兵庫県福崎町)

──創業以来、業界をリードされてこられました。

西山 1945年が当社の創業ですが、産業用スイッチを手がけはじめたのは1950年代です。当時の日本にはスイッチの工業規格はありませんでしたが、われわれが開発した製品がJIS規格として標準化され、その後も国際規格に対応していきながら制御機器のスイッチ市場を創りリードしてきました。ちなみに「(一般社団法人)日本電気制御機器工業会」は当社が発起人の1社として1964年に立ち上げました。

──近年は新分野にも積極的に進出されています。

西山 主力の制御機器は、国内や欧米では市場が縮小する方向にありますが、中国を含めたアジアには大きな可能性があり、タイにも工場を建設するなど海外拠点の強化を行っています。また、制御機器以外に成長が期待できる事業も育ってきました。たとえば太陽光発電関連では、家庭用パワーコンディショナーやメガソーラー事業を展開しています。また、農業分野の自動化も期待の分野です。2009年には植物工場ラボをつくり検証を進めており、来年度には事業化できるよう準備しています。さらに、バーコードリーダーなどの自動認識機器も自社開発製品を生産し、医療などオートメーション化の遅れている分野に投入しています。

──中期計画の売り上げ目標400億円は1年前倒しで今年度には達成できそうですね。

西山 その予定です。ただ、売り上げ増加分には既存事業と比べると収益性で見劣りする太陽光発電関連など新規事業の割合が高く、売上高営業利益率目標15%は簡単な数字ではありません。しかし、来年の中期計画最終年にはこれをクリアしたいですね。

情報共有化と属人性排除で作業工数とミスが激減

──TKCの連結会計システム『eCA-DRIVER』導入の経緯は?

新屋昌右推進リーダー

新屋昌右推進リーダー

新屋 それまで使っていた連結会計用システムが保守契約切れになり、加えて、このシステムのままでは採用予定だったIFRS(国際財務報告基準)や海外子会社の増加などにも適切に対応できないと判断し、変更を決めました。さっそく、連結会計のパッケージソフトをリストアップ。5社ほどにプレゼンをしていただきましたが、コストパフォーマンスの良さを含め『eCA-DRIVER』がもっとも当社にしっくりくるソフトだと判断しました。

──しっくりくるとは?

新屋 シンプルなインターフェースで分かりやすいし、一般的な連結会計のフローに当社のルールを当てはめていくという製品思想が気に入りました。また、教育的見地からもこのソフトがベストだと考えました。当時、担当者を若手に切り替えつつある時期で、当然、連結会計に熟知している者は少なく、彼らに連結会計の全般的知識を勉強させながら、分かりやすいフローに沿ってきっちりと丁寧につくり込んでいくプロセスが必要だったのです。

──機能的にはいかがでしたか。

新屋 すべてにおいて使いやすいと感じました。従来は、子会社の財務諸表をスプレッドシートのパッケージで回収していたのですが、『eCA-DRIVER』はASPなので、子会社からクラウド上にアクセスして注記情報を含めてデータ入力・連携をしてもらっています。そのプロセスでは整合性チェックなども行われますから、ミスも格段に減りました。

──作業工数が激減したとか。

新屋 はい。残業時間もかなり減りました。従来システムではオペレートできる人間が一人だけだったので、その人がデータを切り出してみんなに配る形でした。一方の『eCA-DRIVER』はクラウドなので、子会社を含めて複数の担当者が情報を取り出したり、打ち込んだりできる。属人性を排除し組織で動けるようになったというのが大きいですね。いまでは損益計算書だけですが、『eCA-DRIVER』を利用した連結の月次決算体制も整えることができました。

──そのほかには?

新屋 マネジメントレポート(MR)設計ツールはとても便利だと思います。この機能を使って、必要な数字を自在に取り出し、独自の帳表をつくりながら、それを経営分析のための資料にしています。MR設計ツールでつくったデータは当社の全体像ともいえるもので、経営陣のみならず監査法人にもIDを与えて、閲覧してもらっています。

──松川さんは、担当して半年だそうですが。

松川隆之氏

松川隆之氏

松川 『eCA-DRIVER』では連結決算全体の動きを見ながら作業できるので、非常に分かりやすいと思いました。私は前の職場でも連結決算を担当していたのですが、一部分の作業をまかされるだけで、全体が見えていませんでした。当然、知識の広がりがなく、突発的なトラブルへの対処も迅速には行えなかった。いまでは全体が分かるようになり、視界が広がったような感じですね。

新屋 そこが、若手への教育効果としてもっとも期待していたところです。プロセスをひととおり見わたして決算全体を理解できれば、イレギュラーにも対応できるようになります。

──システムコンサルタントの存在はいかがでしたか。

新屋 それもTKCを選択した理由の一つです。前述した通り、今回のシステム変更の目的の一つは若手の教育です。大谷信介先生や岸田泰治先生という税と会計の専門家でありシステムを熟知した方々に、導入時からコンサルティングいただけたのは心強かったし、われわれの学びにもなりました。とくに、大谷先生にはこれがご縁で、当社の子会社2社で顧問税理士に就任いただきました。

──今後はいかがでしょうか。

新屋 われわれの仕事は「正確かつ迅速に」がベースになりますが、経営に役立つデータを社内に提供していくことも大きな役割です。いま、若手が「正確かつ迅速に」を修得しつつありますが、次のステップとしては、出てきたデータで「何が表現できるのか」を考えてもらいたいですね。それから、当グループには海外現地法人(20社中16社)が多く、まとめ上げるのにはそれなりの苦労もあります。そのため近い将来、TKCさんのOBM(海外ビジネスモニター)導入も視野に入れつつ、海外子会社の情報をリアルタイムに確認出来る体制をつくれればと思っています。

会社概要
名称 IDEC株式会社 IDEC株式会社
創業 1945年11月
所在地 大阪府大阪市淀川区西宮原2-6-64
売上高 363億円(連結2014年3月期)
社員数 2287名(連結2014年3月現在)
URL http://www.idec.com

『戦略経営者』2014年10月号より転載

掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、2014年10月現在のものです。
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