ユーザー事例

株式会社イチネンホールディングス

グループの結束力を高め さらなる「攻めの経営」を実践

1963年に燃料販売事業で創業したイチネン。その後、自動車リース・メンテナンス受託業、パーキング事業、ケミカル事業など業容を広げ、なお前進を続けている。一方、連結納税システムを導入し、グループの結束力を高める施策も実践。村中正執行役員、経理課の益田憲生課長、山本裕起氏、コンサルティングを担当する田中明子税理士事務所の逢坂秀雄氏に話を聞いた。

株式会社イチネンホールディングス

M&Aと既存事業の強化で上昇気流をつかむ

──「前へ、もっと、前へ。」というスローガン通り、積極的な事業展開で業績は絶好調ですね。

村中 2013年3月期は売上高573億円(前年対比20%増)をはじめすべての利益指標で過去最高を記録しました。直近の中間期決算でもこの好調を持続し、売上高は30%増、営業利益、経常利益ともに2桁の大幅増となっています。

──好調の理由は?

村中 大きく2つあります。まず、M&Aによる事業領域の拡大とそれに伴うシナジー効果。それから、自動車リース事業やパーキング事業など既存事業のてこ入れです。M&Aでは、2013年度に機械工具販売の前田機工、合成樹脂を扱うジコー、2014年度には空調工具のトップ企業であるタスコジャパンをグループに加え、ビジネスの幅を大きく広げることができました。前田機工は、約6000の契約工場を持つ当社の自動車メンテナンス事業とのシナジーが期待できます。ちなみに、メンテナンス付きの自動車リース事業は当社がパイオニアで、この分野の充実は差別化の強化につながります。また、開発型企業のジコーは遊技機メーカーへの販売が伸び、すでにグループの業績に大きく寄与。既存事業でも、自動車リース部門では営業体制を強化し、契約台数の伸長に取り組み、それが徐々に実を結んできています。

──営業体制の強化とは?

村中 当社の自動車リース事業の強みは、比較的小規模な法人にも柔軟に対応できること。そのため、顧客のニーズを緻密に吸い上げることを徹底しています。自動車市場のトレンドとして「車両のダウンサイジング」というマイナス要因はありますが、それを補うためにも、現場密着型の足を使った営業活動で契約ボリュームを増やす必要があると思っています。

──パーキング事業もそれを上回る勢いで伸長しています。

村中 土地の有効活用を目的にした『One Park』が当社の売りですが、最近では店舗や病院など大型施設に付帯した駐車場の運営にも力を入れています。この分野は高い利益率に魅力があり、引き続き拡大を目指します。2013年11月には、管理台数2万台突破を達成しました。

──長期的なビジョンがあれば教えてください。

村中 創業90周年の2020年に「売上高1000億円、営業利益100億円、各セグメントでグループ全体の営業利益の10%以上」という目標を掲げています。これを実現するためには、全グループを挙げたさらなる「攻めの経営」が必要だと考えています。

──イチネンホールディングスの「グループ経営」は、複雑かつ精緻という印象があります。

村中 それぞれが各分野に専門特化し、その上でインタラクティブに関わり合うことで最大のシナジー効果を生み出そうという戦略を実践してきました。連結子会社イチネンをコアとしながら、各事業セグメントに専門特化した12の連結子会社が重層的に絡み合っています。それだけに、グループの一体感を維持することが、持ち株会社であるイチネンホールディングスの重要な役割となります。

システム導入で人員を増やさず業務品質を維持

──連結納税制度の採用、そして『eConsoliTax』の導入も一体感維持の施策の一環ですか。

益田 そのような一面もありますが、連結納税を採用した直接の理由は、平成22年のグループ法人税制が創設されたことと、最大の障害だった「子法人の繰越欠損金の切り捨て」が「原則持ち込み可能」と改正されたことです。

──連結納税を採用した方が有利と判断されたわけですね。

益田 まず、連結納税を採用することで損益通算が可能になるということ。当グループの新規事業会社では当面赤字が見込まれていたため、グループの黒字分と相殺されて節税効果が出ると判断しました。また、親法人には繰越欠損金はありませんでしたが、土地の売却損等により欠損金が発生するケースも予想され、その場合にも有利になります。当グループにはメーカーもあるので試験研究費税額控除も今後活用の余地があるでしょう。また、お金の流れに無駄がなくなり、キャッシュフローの改善も見込めます。

──導入に不安はありましたか。

益田 やはり最大の懸念は、連結納税を採用した場合に業務工数が増大し、決算日程に影響する可能性が出てくることでした。これを防ぐためには、業務の標準化のためのパッケージソフトの導入が必要であり、そのコストは、連結納税による節税効果で相殺できると考えました。

──TKCの『eConsoliTax』を選択された理由は?

益田 まず、①シェア1位で導入実績が豊富なこと、また②多くの上場企業に導入され税制改正などに確実に対応できること③税効果会計についても専用のパッケージ(『eTaxEffect』)が存在し、さらには④子会社が増加してもコスト負担が少額で済む⑤ASPサービスなのでサーバーメンテナンスが必要なく、また、TKCのデータセンター(TISC)の安全性が高い⑥導入時・導入後において専属コンサルタントのサポートが受けられるなどのメリットがあり、総合的にみて他社製品より秀でていると判断しました。

──連結納税の体制づくりは?

益田 連結納税に関しては、われわれはまったくの未経験で、人員を増やさず業務品質を維持することに精力を費やしました。そのため、TKCが提供する研修サービスを積極的に活用しながら、実務能力の底上げにつとめました。

山本 田中明子先生や逢坂さんをはじめTKCのシステムコンサルタントの方々には制度のたてつけの解説からシステムの操作にいたるまで、細かくサポートをいただき、非常に助かりました。システム自体も業務フローがメニュー化されているので操作しやすいですね。結果として、決算短信については、四半期決算・期末決算ともに、原則翌月内での開示を維持しています。電子申告への一気通貫の流れができたことも、全体の効率化に寄与しています。

逢坂 経理課の方々のスキルが非常に高く、われわれの方が教えられることもままあるほどです。益田課長のリーダーシップの下、スローガン通り「前へ前へ」という推進力があり、また、雰囲気がとても明るいので一緒に仕事させていただきやすいという印象です。なにより、前向きな気持ちでお手伝いができることがうれしいですね。

──導入において苦労した点は?

益田 当社の場合、前述した通りM&A戦略を積極的に進めているため、連結対象子会社の期中加入などへの対応が難しいのですが、この点もシステムコンサルタントに勉強会の開催を依頼し、決算作業が始まる前にマスター設定を完了させ、M&Aが行われてもスムーズな決算を行うことができています。また、当社ではグループのSSC化(シェアード・サービス・センター=経理、総務など間接業務の集中化)を進めていますが、新たに加入した子会社に関しては、当初は、その会社の顧問税理士に業務を委託して税額・税効果計算を行い、その後、SSC化を進めていきます。これはマンパワーを最小限に抑えた効率的なグループ経理を行うための施策です。

──今後の課題は?

益田 よりシステムに習熟し、連結決算の全体フローを理解する人材を育成することです。今後も、税務調査や新たなM&A、組織再編への対応が必要な局面が予想されるので、人を磨いて経理部門全体を底上げしなければなりません。今後は統合型会計情報システム『FX5』や連結会計システム『eCA-DRIVER』導入も予定しており、TKCさんの力を借りながら、一歩一歩前進していきたいですね。

会社概要
名称 株式会社イチネンホールディングス
所在地 大阪府大阪市淀川区西中島4-10-6
売上高 573億円(2013年3月期連結)
社員数 731名(2013年3月31日現在グループ)
URL http://www.ichinenhd.co.jp

『戦略経営者』2014年5月号より転載

掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、2014年5月現在のものです。
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